フォントサイズ:

原子力学会が高校理科教科書を調査、福島第一原子力発電所事故関連の充実化など提言

2018年9月13日

 日本原子力学会の教育委員会(委員長=上坂充・東京大学大学院工学系研究科教授)はこのほど、高校の理科教科書におけるエネルギー、環境、原子力、放射線に関する記述について調査結果を取りまとめた。今回調査を行ったのは、2016~17年に文部科学省の検定を受け現在使用されている「科学と人間生活」、「物理基礎」、「物理」の3科目の教科書計24点で、本文の他、コラム、脚注、図表・写真の説明文も含め、関連の記述に対しコメントを示した。現行の高校学習指導要領は2013年度の入学生から適用されていることから、調査対象となった教科書は主に改訂版で、本調査では、発災から年数が経過した福島第一原子力発電所事故を巡る現状も踏まえ、提言をまとめている。
 例えば、福島第一原子力発電所事故については、重大事故の例としてコラムなどで取り上げている教科書もあるが、その要因が「地震そのもの」と誤解を招く書きぶりだとしており、「大津波による電源および冷却施設の冠水」と記述するよう要望している。さらに、事故に伴う放射線の人体影響に関して、「将来のがん統計において事故後の被ばくに起因しうる有意な変化がみられるとは予測されない」とするUNSCEARの見解についても記すよう求めた。
 また、原子力発電のしくみを示した図で、中学校の教科書と同じものがあると指摘し、日本原子力文化財団の「原子力・エネルギー図面集」を例示し、重要な機能についてより理解を深めてもらうよう提案している。
 理工系へ進む生徒の履修が想定される「物理」については、こうした図面の詳述とともに、「掃除機で室内の浮遊塵を集めてポロニウムの娘核種の半減期を観察する」実験を紹介した教科書を例に、さらに進んだ実験・観察を鋭意取り上げて欲しいとしている。また、「物理」では、「原子・原子核・放射線関連」と「核反応・核エネルギー・原子力発電関連」とを合わせたページ数が、最も多い教科書で31ページ、最も少ない教科書で14ページと、2倍程度の開きがあった。
 本調査の提言では、この他、「原子力発電の長所と短所を平等に扱うこと」、「放射性廃棄物の処理・処分について正確に記述すること」、「放射線の観察は道具のそろえ方も丁寧に説明すること」などをあげた。