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フジキン なんでも挑戦、海の底から宇宙の果てまでお任せ

2018年10月5日

 株式会社フジキンは配管材料および機械金属製品の卸販売として1930年に創業し、後にバルブの製造販売を始めた。国内のバルブ技術が発展途上にあった戦後間もない時代に「ガスの流量をもっと精密に調節できないか」という要望を受けたことがきっかけで、世界で初めて、また、フジキンとしても初めての特許取得製品となる「ニードルバルブ」を開発した。創業から88年を迎え、今では、世界有数のバルブメーカーとして知られる。海洋潜水調査艦「しんかい6500」やスペースシャトル「エンデバー」で毛利衛さんが実施した“コイの宇宙酔い実験”、さらには日本人初の女性飛行士、向井千秋さんがスペースシャトル「コロンビア」で実施した“国際微小重力実験IML-2”などで数多くのフジキン製超精密バルブが使われた。海の底から宇宙の果てまで、あらゆる“ながれ”を制御する技術で躍進する㈱フジキンの新本社(東京都千代田区)を訪問し、事業の取り組みやチョウザメ養殖事業、人財宝®(人材)育成について話を聞いた。

 

 

チャレンジする気風

うりづくり(営業)部門 国内営業第五本部 関東中央ブロック 八丁堀中央営業所 所長代理 秋山賀津彦氏

 同社の事業概要と取り組みについて、うりづくり(営業)部門 国内営業第五本部 関東中央ブロック 八丁堀中央営業所 所長代理の秋山賀津彦氏から伺った。

 今年で88周年ということで、総勢88名に当たる創業88周年クイズキャンペーンなど“88”になぞらえたイベントを展開する。「年商も前期末で国内売上高約888億円です」と、秋山氏。見事な徹底ぶりだ。

 人員数は世界で約4,600名。国内に4つ、韓国、ベトナム、アイルランド、アメリカそれぞれに工場があり、共同研究に力をいれていることからバルブメーカーとしては珍しく国内に研究開発拠点を構える。

 売上の約7割を半導体製造装置用の超精密バルブ機器が占める。超微量のガスを正確に制御するバルブは、清浄度世界一を誇るクラス1のウルトラスーパークリーンルームで生産する。世界のシェア約4割をフジキン製品が占める。このほか、宇宙創造開発用超低温超精密バルブ機器、新エネルギー二次電池用バルブ機器、石油化学プラント用特殊バルブ機器、バイオ(医薬・食品)用無菌プロセスバルブ機器、原子力発電所用計装バルブ機器、海洋開発用ながれ(流体)制御システム機器に展開する。

 フジキンは原子力発電所へもバルブを提供している。計装用バルブ機器のほか、超低温分野では核融合、電力貯蔵、核磁気断層装置などの超伝導システムの液化ガスのコントロールなどにも超精密ながれ(流体)制御システムが採用されている。高度な技術と専門性が求められるため、電力会社や大学の研究室、専門家と共同開発をする。計装機器の下には必ずバルブをつけるという決まりがある。圧力・流量を測る機器の下には制御バルブがあり、国内54基の原子炉にフジキン製が使われている。

 「フジキンはニッチな世界で戦うバルブメーカーです。年間、何10万台という汎用性のあるバルブはほとんど創っていません」と秋山氏。「お客様のご要望にお応えし、まずはチャレンジする。そういう気風が社員のDNAとして根付いています」と話す。

 純国産品として世界で初めて宇宙ロケット用のバルブを創ったのもフジキン。これについては話題を呼んだTBS系テレビドラマ「下町ロケット」が詳しい。ロケット燃料の制御や宇宙空間における生命維持装置などの特殊用途向けに種子島宇宙センターなどに6,000台以上をご提供してきた。

 宇宙ロケット分野で技術のトップを走る同社だが、初めて開発依頼を受けた時は、桁違いのチャレンジに「本当に創れるのか」という迷いがあったという。それを当時の技術顧問だった故・西堀榮三郎先生に一喝され、3年かけて完成させたという。

TBSドラマ 下町ロケットにフジキン社員もエキストラとして参加

 フジキンの品質保証は、PDCA(Plan Do Check Action)で知られるデミングサークルを自社流に構築。実際にエドワーズ・デミング博士がフジキンの工場視察に訪れた歴史もある。

 西堀榮三郎先生からはものづくり、エドワーズ・デミング博士からは品質保証のご指導を受けてきたことも、何にでもチャレンジするというフジキンの土壌を後押ししたことがうかがえる。

 

 

 

ながれを制御する技術でチョウザメ養殖に成功

ことづくり(業務・管理)部門 こと&かち(価値=ご利益(りやく))づくり統括本部 小谷健太氏

 何故、フジキンはキャビアを産む魚チョウザメを養殖しているのか−−。同社のことづくり(業務・管理)部門 こと&かち(価値=ご利益(りやく))づくり統括本部の小谷健太氏に聞いた。

 1992年、フジキンは民間企業として国内で初めてチョウザメの人工ふ化に成功、1998年には世界で初めて水槽での完全養殖を実現した。フジキン産のチョウザメは“キャビア・フィッシュ(超ちょうざめ)”と名付けられた。

 ことのきっかけは、つくば万博跡地に筑波フジキン研究工場(現:万博記念つくば先端事業所)の建設である。工場を建てる際、近隣への振動を吸収するため水槽を設置する。この水槽を有効活用するためにチョウザメを養殖するという新たな挑戦をすることになった。なぜチョウザメかというのは、西堀榮三郎先生の助言によるもので、「ロシアでは絶滅が危惧されていたこと」と「チョウザメの養殖を民間でやっている会社がない」という状況に鑑み、フジキンの“ながれ”を制御する技術を活かす発想へとつながった。

 2008年には、筑波フジキン研究工場養殖プラントの約2倍の3000平方メートルの広さを持つ里美養魚場(茨城県常陸太田市)を取得した。稚魚を含む“キャビア・フィッシュ”1万匹以上を効率よく飼育する設備を整え、お客様に安定的にご提供できる体制づくりを進めている。

 チョウザメ養殖施設には上水を源水とする完全閉鎖循環ろ過方式を採用している。飼育水槽の水を生物ろ過槽で浄化し、飼育水槽に戻すという、水リサイクル型の設備だ。こうしてフジキンのながれ(流体)制御技術で高密度な飼育を実現した。耳寄り情報として「例年、11月から3月の間はフレッシュキャビアが食べられます。世界中で生のチョウザメの卵を食べられるのは日本かロシアの漁師だけ」と教えてくれた。

 現在、同社は「アクアポニックス」という魚の養殖と植物の水耕栽培を掛け合わせる技術にも挑戦している。チョウザメの水槽の上でイチゴなどを栽培する研究だ。チョウザメの排泄物をバクテリアが分解し、生成される窒素など肥料のもとになる物質で水耕栽培する。そのプロセスで綺麗になった水がまた水槽に戻れば、全国の農家にチョウザメの養殖を展開できる日がくるかもしれない。

 

 

 

学生時代に取得した資格も対象、魅惑の制度

ES・人事総務部 人財宝開発課 特任課長 安田光男氏

 同社にはユニークな資格制度がある。就活生には魅惑的な制度ではなかろうか。ES・人事総務部 人財宝開発課 特任課長の安田光男氏に話を聞いた。

 どんな仕事に就いていても毎月手当が出る資格と、仕事に関係ある場合に限って毎月手当が出る資格がある。いずれも同社に在籍する期間、定められた基本給とは別の収入源となる。積極的な自己啓発につながるため、社員も会社もWIN-WINの制度となっている。

 さらに、社会人ドクター制度というフジキンカープグループ在籍中に博士号を取得できる制度がある。大阪ハイテック研究創造開発センターには研究者が約20名在籍しており、最先端技術の研究をする大学との共同開発をテーマに、社会人ドクターを目指すことが推奨されている。

 同社の売上の約7割を占める半導体製造装置用バルブ機器も、こうした制度から生まれていることから「大学との共同研究は新事業の要です」と安田氏は強調する。

 バルブメーカーといえば機械系の学生が多いと思われがちだが、事業分野が多岐にわたるため、回路設計、ネットワーク管理、化学、材料など様々な分野から採用している。原子力関係も毎年複数名の採用があると明かした。「多くの学生さんに魅力が伝わるよう、採用活動を頑張りたい」と締めくくった。

 

 

 

日本全国の原子力発電所で使用されているフジキンのバルブ類の例