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島根原子力発電所 ― 着々と進む安全対策、そして新規稼働に向けて

2018年11月13日

 中国電力は、2014年1月より、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査中である島根原子力発電所2号機(BWR、出力82.0万kW)に加え、今年8月、同所3号機(ABWR、出力137.3万kW)の審査を申請した。島根県は、中国電力による原子力規制委員会への申請手続きを了解するにあたり、(1)地震・津波の最新知見による評価とそれに基づく安全対策、(2)有効性と影響を考慮したシビアアクシデント対策の実施、(3)自治体と緊密に連携した防災体制の構築などを同社に対し求めたうえで、8月9日に了解し、中国電力による申請が翌日の8月10日に行われた。

 原子力産業新聞では、新規制基準を踏まえた安全対策工事、また、3号機の最新の進捗状況について報告する。

 敷地面積約200haの島根原子力発電所には、2017年4月に廃炉措置計画が認可された1号機を含め、計3基のプラントが存在する。敷地の海側には海抜15mの防波壁が立ち並び、想定高さ11.6mの津波に備える。万が一、津波が防波壁を越えても、防水性を高めた水密扉で建物内への浸入を防ぐ。また、重要設備が被害を受け既設の電源を喪失した事態を想定し、緊急時の冷却設備の駆動に必要な交流電源をガスタービン発電機や発電機車などにより確保するとともに,直流給電車によって冷却設備等の制御が可能なシステムを構築している。このような安全対策工事は、3号機だけでも62項目(内31項目が実施済)にのぼり、完了予定時期は、2号機が2019年度、3号機が2020年4~9月とされている。

 

オペレーティングフロアでは、部品がシートで養生されている

 当初、2011年12月に営業運転を開始する予定だった3号機では、現在、安全対策工事が進んでいるが、設備自体は完成している。未稼働であるため、ヘルメット着用のみで中に入ることができた。

 現状の設備は、常時点検・保全が行われており、タービンは軸のたわみを防ぐために定期的に回転させる、水密扉のパッキンを定期的に交換、一部の機器はビニールシートで養生が施されていた。

 

ABWRの中央制御盤は、随所にわたり改良が施されている

 中央制御盤は従来型に比べ、大型の表示盤を採用することで視認性が高められ、運転員全員がプラント情報を容易に共有することができる。また、従来と同様のハードスイッチに加え、タッチ操作が可能なフラットディスプレイを導入することで、操作盤の集中化が図られており、操作性が向上。より少人数での操作も可能だが,2号機同様の1班7名体制で運転するという。

 

 

 

人材育成の難しさ-「運転員の習熟度高める取り組みを」

 現在、島根原子力発電所1号機は廃止措置中,2号機は停止中、3号機は未稼働であり、国内では、BWRは動いていない状況にある。

 「世代交代の時期が来ており、ベテランが辞め、新しい人材が入ってくる。実際のプラントの運転経験がない運転員たちは、五感での経験というものができない」と、長谷川千晃中国電力島根原子力本部副本部長は厳しい状況について説明する。さらに、長谷川氏によると、原子炉が稼働していない中での人材育成が課題であるとして「再稼働した他電力のPWRプラントや火力発電所へ運転員の派遣を行い、より実際の現場に近い環境で、運転員の習熟度を高められるような取り組みを進めている」と語る。今後も運転員の海外派遣や、BWRを保有する他電力との連携を深めていくことで、技術の維持に努めていくとしている。

 

防災対策は少しずつの積み重ね

 島根原子力発電所は、日本国内で唯一県庁所在地(松江市)に立地する原子力発電所である。発電所の半径30キロ圏内には、島根、鳥取両県の6つの市が入っており、約47万人が居住する。人口密集地に立地する原子力発電所として、緊急時の避難計画や、防災対策に関して注目が集まっている。

 

長谷川千晃 中国電力島根原子力本部副本部長

 「防災対策は一朝一夕にできるものではなく、少しずつ積み重ねていくべきものである」と長谷川氏は話す。島根県では、福島第一原子力発電所の事故を受けて、早い段階から原子力事故への対策が打たれていた。発電所周辺の病院は屋内退避を前提として、窓の目張り、放射性物質を除去するフィルターを完備するなど,放射線防護機能を有している。また、モニタリングポストを発電所周辺から30キロ圏内に設置し、常時区域内の放射線量を監視。データを県のウェブサイトにて公開している。

 中国電力では現在、3000人を超える規模の「非常時の原子力災害要員」を育成しているという。島根原子力発電所に影響を及ぼす大規模な地震や津波が発生した場合、島根原子力発電所近隣事業所の社員たちは同エリアでの電力供給の復旧対応に追われるため、普段は広島、岡山などの山陽地方で従事する社員たちを含め、避難退域時検査など原子力災害の対応に当たるよう研修や訓練を行い柔軟に対応できる体制作りを進めている。

 

 このたび発電所を視察し、着々と進む安全対策への取り組みを間近で見ることができたが、再稼働に向けて、ひとつひとつの課題に対し、慎重に取り組む姿勢が感じられた。現在、中国電力管内全体の発電量の約9割は、火力によって賄われている。島根原子力発電所の再稼働までの期間が長くなるにつれ、老朽火力への依存が高まることになる。原子力規制委員会による適合性審査の進捗が今後、より注目される。