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エネ研が原子力発電所長期停止の経済影響を試算

2018年11月27日

 日本エネルギー経済研究所(エネ研)がまとめた試算によると、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故から長期停止している原子力発電所の代わりに火力発電などで発電した結果、2017年度までに累計9.8兆円もの追加発電費用がかかっている。
 さらにエネ研では、今後、既設の原子力発電所35基が最大10年間にわたって停止した場合の経済的な影響を試算した。これらの停止により、燃料費だけでも4.7兆円(化石燃料価格の不確実性を考えた場合に2.9~6.2兆円の変動幅を想定)、これに炭素価格(火力発電によるCO2排出増加に伴う環境影響に関連したコスト増加)の分を加えると11兆円(同9.3~12.6兆円)もの追加発電費用が見込まれるという。
 この試算は、各地の原子力発電所が当初予測されていた以上に長期にわたり停止していることから、原子炉が停止した期間分を現行法に定めた運転期間(原則40年)に加算するというあくまでも仮想的なケースを想定して行ったもの。エネ研では原子力発電所が長期に運転停止した場合の経済的な影響を考えれば、科学的な議論を踏まえた適切な政策決定が必要と指摘する。
 福島第一原子力発電所の事故後、既設炉が順次停止する状況になり、再稼働するには新規制基準による原子力規制委員会の審査に合格することが必要となった。現実には2018年11月時点で再稼働に至ったプラントは9基にとどまっている。審査期間は電気事業者の想定を超える長期に至っており、今後の審査進捗の見通しも不透明さがつきまとっている。
 なお、今年7月にまとまった第5次エネルギー基本計画において、引き続き原子力発電はベースロード電源との役割に位置づけられたが、今後を考えると現行の法律の定めによる運転期間に近づくプラントが相次ぐことから、現在の審査の長期化などを考慮した場合、原子力発電に期待される役割が維持できない恐れを指摘する声が産業界からあがっている。

 

解説 「原子力発電所の運転期間について」
 従来、日本の原子力発電所は約1年ごとの定期検査、10年ごとの定期安全レビュー、運転開始30年目および以降10年ごとの高経年化技術評価によって個別プラントの状況に即した点検や必要な補修等の工事が行われ、合格したプラントが運転を継続する考え方をとっていた。実質的な安全確保をしながら運転していくもので、いわゆる寿命延長の考え方をとっていなかったが、福島第一原子力発電所の事故後、国会の審議を経て運転期間(原則40年。審査に合格すれば最大20年の延長が認められる)が法律に定められた。ただ、その際に、実質的な安全確保にあたって専門家の技術的な議論の積み上げが十分であったかと言えば、疑問の余地なしとはいえない。運転期間を定めるにあたり参考にされた米国の状況をみても、最近では2件の80年運転に向けた審査申請が米原子力規制委員会(NRC)に受理されるなど、80年の運転期間が可能とする動きがある。

 

 

運転延長に係る各国の申請・制度 ※中国、ロシア、ウクライナを除く原子炉基数上位6カ国

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出典:日本エネルギー経済研究所「我が国の原子力発電所運転期間延長手続きとその課題-関係法令・運用に関する分析と国際比較」から抜粋

お問い合わせ先:政策・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)