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JANSI「アニュアル・カンファレンス」開催、安全文化の醸成について議論

2019年3月14日

 原子力安全推進協会(JANSI)は3月13日、都内で、「アニュアル・カンファレンス」を開催した。国内外の原子力関係企業・組織の代表者ら約430名が参集。発生から丸8年が経過した福島第一原子力発電所事故への思いを新たにし、「組織マネジメントの実効性向上と安全文化醸成に係る戦略」と題するパネル討論を通じ、JANSIが担う「原子力安全におけるエクセレンスのたゆまぬ追求」に向けた活動について理解を深め合った。
 開会挨拶で、2018年6月にJANSI会長に就任したウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア氏(=写真上)は、現在進めている「JANSI 10年戦略」策定について述べ、今後、自主規制組織として、特に技術力の向上に努めていくことを強調。その上で、「組織内の安全文化をどのように議論し、診断し、促進・維持するかは、JANSIが持つミッションの正に中核だ」と訴えかけ、カンファレンスでの議論に先鞭を付けた。
 電気事業連合会の勝野哲会長による基調講演「福島第一事故の教訓に基づく産業界の取組」に続き行われたパネル討論(=写真下、座長=高野研一・慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)には、OECD/NEA放射線防護・原子力安全ヒューマンアスペクト部長のヨンヒー・ハー氏、日本航空機操縦士協会会長の井上伸一氏など、海外や原子力発電以外の産業分野からも登壇した。ハー氏は、各国の持つ国情が安全文化にどう影響するかを考察する「HANS」と呼ばれる取組を紹介。その中で行われたロールプレイ・セッションの映像を披露し、「安全文化は各国固有の国情を考えねばならない。これは決して阻害要因ではなく、むしろ強みとして活かしていくもの」と強調した。
 安全文化の醸成に関し、他産業で効果をあげている事例として、井上氏は全日空の操縦士で行われている「アサーション」の取組を紹介した。同氏は、上位者に対しても疑問に思ったことを声に出すよう促す「アサーション」を進めることで、次の意見・提案にもつながり、人は「参加することがプラスになる」という意識を持つようになると述べている。
 原子力事業者の立場からは、東北電力社長の原田宏哉氏が、「新年挨拶や新入社員訓示などの場を通じ、経営トップとして安全文化の概念を常に語り続けている」とした上で、同社の掲げる「地域社会への貢献」の使命からも、社員一人一人が自分の言葉で安全性向上の姿勢を地域に伝えていく重要性を強調した。また、東京電力福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの小野明氏は、トップマネジメントの姿勢として、「手すりを持つ」という発電所内の事故防止のルールを例に、「日常生活でも行うくらいの覚悟がいる」と、「率先性」が必要なことを指摘した。
 さらに、小野氏が廃炉現場の特殊性に触れながら「50社以上もの元請企業がある」と述べたのに対し、JANSIアドバイザリー委員を務める高野氏が「どうしたら個々の企業を取り込んでいけるか」と、組織の壁を越えた安全文化の浸透に関し論点を提示した。原田氏は、「報告は『財産』。悪い内容でも叱るのではなく、『早目に言ってもらえてよかった』というレスポンスを」などと、まず自由に意見を言える雰囲気作りから取り組む必要性を強調した。OECD/NEAでステークホルダー・コミュニケーションに関するワーキンググループをリードしてきたハー氏は、「自分と異なる意見もあり、報告を怖れることにどう対応するか。『失敗からも学ぶ』という文化を育てていくことが重要」と述べている。
 一方、化学産業の立場から安全文化の5段階評価の取組を紹介した保安力向上センター常務理事の若倉正英氏は、日本の現状について「現場力は強みだが、ベテランの引退によりほころびも生じている」などと指摘。技能の伝承に関し、同氏は「ベテランは先輩から『背中を見て学べ』と言われてきたため、論理的に教え伝えることが不得手で、若手も問いかけづらい場合がある。『教える』のではなく一緒に『考える』ことから始めるべき」と、対話を通じた安全文化醸成の必要性を訴えかけた。