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学術会議が原子力発電所の津波対策で報告書、新知見への的確な対応など指摘

2019年5月22日

 日本学術会議の「原子力安全に関する分科会」(委員長=矢川元基・原子力安全研究協会会長)は5月21日、原子力発電所の津波対策に関する報告書を取りまとめ発表した。科学者コミュニティの立場からこれまで行ってきた福島第一原子力発電所事故に関する調査・検討に加え、事故発生以前の津波対策の経緯についても分析した上で、自然現象に伴う事故対応に反映すべき教訓を述べたもの。
 同分科会は2014年に発表した「福島第一原子力発電所事故の教訓」の中で、「設計条件を超えた巨大津波による過酷事故の発生を防止できず、人と環境に甚大な被害を引き起こした」とし、「複雑巨大な人工物システムとしての原子力の安全を向上するために必要な『全体を俯瞰する不断の努力』を怠ったこと」が事故の根源的原因だとしている。
 今回の報告書では、東日本大震災で影響を受けた福島第一、福島第二、女川、東海第二の各原子力発電所の設置時およびそれ以降の津波評価・対策の経緯とともに、福島第一については巨大津波発生に関わる知見がどの程度得られていたかを整理した。例えば、東京電力が地震調査研究推進本部による見解に基づき2008年に行った津波評価で、福島第一敷地南部で「敷地の高さを超える15.7m(4号機原子炉建屋周辺で2.6m浸水)」との試算結果が得られたのを受け、土木学会に技術的検討を依頼した経緯について述べている。2012年を目途に結論を出すとしていた土木学会の対応状況などから、今回の報告書では、同学会に対し「早期に着手すべきであった」と、東京電力には「深層防護の考え方に従い、速やかに実施可能な対応をすべきであった」と、新たな知見に迅速かつ的確に対応する必要性を強調した。
 また、原子力発電所の洪水リスクについては、フランス・ルブレイエ発電所で発生した河川氾濫によるいっ水(1999年)、インド・マドラス発電所で発生したスマトラ沖地震に伴う大津波による海水ポンプ室浸水(2004年)など、諸外国の事例にも触れており、海外の知見に学ぶ重要性を示唆した。
 これまでの津波対策について考察した上で、報告書は、事業者、規制当局、学術団体、研究機関への教訓・課題として、(1)新知見について評価し対応策を図る取組、(2)深層防護の考え方に基づく安全性向上、(3)行動規範に基づく社会への説明責任と積極的な対話――をあげている。