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「J-PARC」の産業利用で報告会、ミュオンによる非破壊分析も

2019年7月19日

 大強度陽子加速器施設「J-PARC」(茨城県東海村)の物質・生命科学実験施設(MLF)における産業利用成果を紹介する報告会が7月18、19日に都内で開催された。
 世界最高強度の中性子ビームを利用し幅広い研究開発を実施するMLFは、同じく東海村にある研究炉「JRR-3」とともに、産業界による利用を通じたイノベーション創出が期待されており、共用運転開始から10年を経て、「中性子産業利用推進協議会」(会長=今井敬・日本経済団体連合会名誉会長)などによる取組が強化されつつある。
 報告会開会に際し挨拶に立ったJ-PARCセンター長の齊藤直人氏は、「何よりも産業界との連携が重要」と強調し、国内外の大学・研究機関との協力で実施される学術研究と両輪となって産業利用を推進していく考えを述べた。
 18日には、既に多くの成果を出し商品化にもつながっている中性子利用に加え、宇宙線として知られるミュオンを用いた研究の成果も発表された。中性子実験施設と同じくMLF内に設置されている「ミュオン科学実験施設」(MUSE:MUon Science Establishment)には、ミュオンビームを供給する4本のラインが敷設されている。
 ミュオンよる研究で実績を持つ高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所教授の三宅康博氏は、ミュオンの特性として「高い透過能」を強調し、火山の噴火予知、福島第一原子力発電所の炉内調査、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰る試料の分析、古銭の金属組成の分析、透過型ミュオン顕微鏡の開発など、幅広い応用の可能性を展望した。

会場参加者との質疑応答を行う梅垣氏、研究成果は多くの人たちの協力で得られたことを強調

 また、豊田中央研究所の梅垣いづみ氏は、負の電荷をもつ「負ミュオン」を用いたリチウム電池の非破壊分析に関する研究成果を披露。「リチウムの動きが電池の性能に影響を及ぼす」との課題をとらえ研究に取り組んだとしており、検証実験も実施し得られた成果を示した上で、「『負ミュオン』を利用できる最適な施設」と、「J-PARC」の有用性を強調した。
 さらに、大阪大学大学院情報科学研究科教授の橋本昌宜氏は、宇宙線が電子機器に衝突して誤作動を引き起こす「ソフトエラー」に関わる研究成果を発表した。近年半導体デバイスの微細化・低消費電力化に伴う放射線耐性低下により、透過性の高いミュオンに起因する「ソフトエラー」が深刻化しつつある。
 19日には、成果報告の他、パネル展示や技術相談会も行われた。