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EU司法裁、ベルギー原子炉の運転期間延長で環境影響評価を要求

2019年7月30日

 欧州連合(EU)司法裁判所は7月29日、ベルギーのドール原子力発電所1、2号機(各45.5万kWのPWR)で運転期間を10年延長するための修正法が2015年に同国議会で制定された際、EU指令で要求されている環境影響評価(EIA)が行われなかったとし、ベルギー政府当局や事業者のエレクトラベル社にその実施を求める裁定を下した。
 ただしEU司法裁は、そのために電力供給が途絶するなど、深刻かつ正当な脅威が予想される場合、同法の効力を暫定的に維持し、2基の運転を継続することは可能であると明言。エレクトラベル社の親会社であるENGIE社は今の所、この裁定に対する見解を表明しておらず、同法の無効化を狙って提訴した2つの環境保護団体の勝利と見るか、運転継続の可能性が生まれた事業者側に有利と見るかの評価は分かれている。

 ベルギーではチェルノブイリ事故後の2003年、緑の党を含む連立政権が脱原子力法を制定。既存の原子炉7基の営業運転期間を40年に制限するなど、2025年までに脱原子力を達成することになっている。しかし、総電力需要量の約5割を賄う原子力の代替電源が確保できず、2009年当時の政権は2015年に閉鎖予定だったドール1、2号機とチアンジュ1号機について、運転期間を10年延長する代わりに拠出金の支払いを求める覚書を事業者と締結した。
 覚書が法制化される前に福島第一原子力発電所事故が発生したため、当時の政権はこの覚書を破棄。出力の大きいチアンジュ1号機(100.9万kWのPWR)のみ、運転期間の延長を承認したが、2014年に発足した政権は電力安定供給の観点から、ドール1、2号機についても運転期間を2025年まで10年間延長する方針を発表した。
 これらの2基は2015年に一旦停止されたものの、連邦政府と事業者は同年11月、原子力税の支払いなど、両炉の運転期間を2025年まで延長するための具体的な合意条件で協定を締結。この年に事業者は、両炉の運転を継続しつつ設備の近代化を図り、最新の安全基準を遵守するための大掛かりな作業を開始し、完了までに総額で約7億ユーロ(約846億円)の投資を見込んでいる。

 EU司法裁は今回の裁定のなかで、このような大規模プロジェクトの実施により、発電所サイトには物理的な影響が及ぶとともに、環境面でもかなりの影響が出るとしており、原子炉が最初に起動する時と同規模の環境影響リスクを考慮しなければならないと明言。これらのことから、同プロジェクトは欧州委員会(EC)が定めた環境影響評価(EIA)指令の対象であり、EIAの実施が義務付けられる点を強調した。
 また、同発電所はベルギーとオランダの国境近くに立地していることから、同指令が設定した越境評価手続きの対象となり、運転期間を延長する前に評価を実施しなければならないと述べた。
一方でEU司法裁は、EIAの実施により電力の供給保証リスクが理論的に起こりえることを当該加盟国が立証し、EIAの不実施を正当化できるほど、そのプロジェクトの緊急性を示した場合にのみ、EIAの実施が免除されるとしている。

 (参照資料:EU司法裁判所の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)