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IAEAの原子力長期予測:「持続的な開発に向け原子力設備の拡大必要」

2019年9月12日

 国際原子力機関(IAEA)は9月10日、世界の原子力発電設備容量の長期的見通しを分析した年次報告書「2050年までのエネルギー、電力、原子力発電予測」の最新版を公表した。2018年に世界全体の総発電量の約10%、低炭素電源による発電量の3分の1を発電した原子力が、将来にわたって世界の発電量に貢献できるかについては、閉鎖される設備を新たな設備で相殺できるかという点にかかっていると指摘。プラスとマイナス面の入り交じった見解を提示している。

 39版目となる2019年版は、2030年までの新たな予測として、世界の原子力発電設備が低ケースで約8%低下する一方、高ケースでは25%上昇するとした。また、2050年までの予測では低ケースで6%の低下、これに対して高ケースでは80%の上昇を予測。昨年版との比較では、2050年に世界の原子力発電設備容量は低ケースで1,500万kW分増大するが、高ケースでは3,300万kW分減少するとしており、このような変化は主に、福島第一原子力発電所事故等への対応を反映しているとした。
 今回の最新版によると、一部の地域で既存炉の将来予測や長期的な拡大計画が公表されたことから、昨年版と比較して予測上の不確定要素は少なくなった。経年化や競争力の低下等で閉鎖される原子炉の容量を補うため、相当量の新規設備が必要になる可能性を指摘した。
 また、いくつかの地域では短期的に、低価格な天然ガスや助成を受けた再生可能エネルギーなどが、今後も原子力の成長見通しに影響を及ぼすとした。しかしそれでも、発展途上国などの地域では原子力への関心が依然として高く、パリ協定その他のイニシアチブにより原子力開発への支援が促進される可能性があるとしている。
 IAEAのM.チュダコフ原子力エネルギー局担当次長は、「今後数年間でさらに一層の電力を必要とする国があるため、世界の電力需要量は急激に増大する」と明言。「原子力発電開発で大幅な拡大が見込めなければ、世界中で持続的な開発や温暖化の影響緩和に必要なエネルギーを十分確保することは難しくなる」との認識を表明した。

2018年の実績
 同報告書によると、2018年末時点に世界全体で稼働可能な原子炉は450基あり、ネットの設備容量は記録的レベルの3億9,970万kWだった。また、55基、5,700万kW分が建設中で、2018年中は新たに9基、1,035.8万kW分が送電網に接続された。これに加えて、5基、633.9万kWの原子炉が昨年1年間に新規着工したが、閉鎖された原子炉は7基、542.4万kWにのぼっている。
 原子炉による2018年の総発電量は、2.4%増加して2兆5,630億kWhとなった。これにより、世界全体の総発電量に占める原子力の割合は約10%になったとしている。

2030年以降の予測
 同報告書はまた、世界の原子力発電設備容量は2030年までに高ケースで4億9,600万kWに、2050年までには7億1,500万kWに増加すると予測。現行レベルからの増加率は、2030年で25%、2050年では80%に達するとした。
 一方、低ケースの設備容量は2040年の3億5,300万kWまで徐々に減少していき、2050年には少し回復して3億7,100万kWとなる。これに対して世界の総発電設備容量は、2018年時点の71億8,800万kWから、2030年に97億8,200万kW、2050年には136億3,300万kWまで拡大。このため、原子力発電の設備容量シェアは、今世紀半ばまでに世界全体の約3%(低ケース)、あるいは約5%(高ケース)になると予測している。

閉鎖される原子炉と新規の原子炉
 同報告書はさらに、現在世界で運転中の原子炉の半数以上で運転開始後30年以上経過していることから、今後数年間でこれらが閉鎖されることになると指摘。2030年までに低ケースで1億1,700万kW分の原子炉が閉鎖される一方、新規に追加される原子力設備は8,500万kWだとした。またそれ以降、2050年までに新たに1億7,300万kW分の設備が閉鎖されるのに対し、追加で1億7,900万kW分が運転開始するとしている。
 高ケースの場合は、閉鎖予定だった原子炉の多くで運転期間が延長されると想定。そのため、2030年までに実際に閉鎖される設備容量はわずか4,900万kW、その後2050年までに追加で1億3,700万kW分が閉鎖されるとした。同ケースでは、新規の原子炉も2030年までに1億4,800万kWが加わるほか、2050年までにさらに3億5,600万kWが追加されるとしている。

原子力による発電シェア
 このような予測から同報告書は、現在から2050年までの間に世界の原子力発電所による総発電量は継続的に増加していくとした。高ケースで2030年までに、2018年の2兆5,630億kWhから50%増えるとしたほか、その後の20年間でさらに50%増加。2050年までに、原子力発電量は現行レベルの2.2倍に達するとしている。
 低ケースでは、2040年までに原子力の設備容量は低下していくが、発電量については2030年までに約11%、2050年まででは約16%増加する。ただし、このケースの原子力発電シェアは2030年に8.5%、2050年時点では6.1%に低下することになる。
 これに対して高ケースの場合は、2030年に11.5%となるほか、2050年では11.7%に増大すると予測している。

 (参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月11日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)