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理研、移設可能な小型中性子源システムを公開

2019年11月26日

 理化学研究所は11月26日、コンクリートインフラ構造物の劣化診断や、工場での原料・製品の解析などにも広く利用できるコンパクトサイズの小型加速器中性子源システム「RANS-II」(=写真、理化学研究所提供)を報道関係者に公開した。
 現在、産業利用に供される中性子源としては、大強度陽子加速器施設「J-PARC」や研究炉「JRR-3」などがあるが、理研では、産業界との協力のもと、可搬型の中性子源の開発に取り組んでおり、2013年には小型中性子源システム「RANS」により、鋼材の内部腐食を非破壊で可視化することに成功。その後、2016年にはコンクリート内損傷の透視、2018年にはコンクリート内塩分の非破壊測定の技術開発に至っている。
 このほど開発された「RANS-II」は、従前の「RANS」の小型化に向け、線形加速器で加速される陽子線エネルギーを7MeVから2.49MeVに絞り、加速器は2台連結から「RFQ加速器」と呼ばれるタイプ1台にすることで、長さ・重量を半分に抑制したほか、遮蔽体重量も7分の1程度に大きく減量させた(=図、理化学研究所提供)。
 今後は、可搬型小型中性子源のプロトタイプとして、橋梁などの内部劣化を可視化する屋外非破壊計測システムの実現を目指すとともに、現場で手軽に利用可能な普及型中性子線源システムの据置型モデルとなるよう開発を進めていく。
 同システムの開発に関わった理研光量子工学研究センター中性子ビーム技術開発チームは、記者団への説明で、10月に台湾の漁港で死傷者を出した落橋事故をあげ、コンクリート内部への水分・塩分の浸透や鉄筋の腐食など、老朽化や施工不良が懸念される社会インフラの保全対策に中性子利用が有効なことを強調した。
 日本各地では高度経済成長期以降に整備されたインフラの一斉老朽化が見込まれており、最新の国土交通白書によると、建設後50年以上経過する道路橋(橋長2m以上)の割合は、2017年度末の約25%が、2022年度末に約39%、2032年度末には約63%に、港湾岸壁では2017年度末の約17%が、同じく約32%、約58%にも達するとみられ、計画的な維持管理・更新が急務となっている。