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「原子力人材育成ネットワーク」報告会、ジェンダーバランス改善の取組も

2020年2月13日

報告会で開会挨拶に立つ原産協会・高橋理事長

 「原子力人材育成ネットワーク」(運営委員長=高橋明男・原産協会理事長)の報告会が2月12日に都内で開催され、2019年度の活動状況を紹介するとともに、笹川平和財団会長の田中伸男氏他による特別講演や、原子力分野におけるジェンダーバランス改善の取組に焦点を当てたセッションを通じ、今後の原子力人材確保・育成を巡る課題について産官学の参加者らが意見交換を行った。
 「持続可能なエネルギー安全保障戦略」と題し特別講演を行った田中氏は、国際エネルギー機関(IEA)が毎年まとめる「世界エネルギー見通し」(WEO)に基づき、2040年までの中国とインドの石油需要増や、最近の産油国を巡る地政学的な緊張などについて説明。IEAが11日に発表した世界のエネルギー起源CO2排出量の推移も紹介し、「石油の時代から電気の時代への転換期にある」とした。その上で、原子力発電に関しては、風力や太陽光との比較から建設コスト面の厳しさを指摘しながらも、運転期間をできるだけ延長することで市場競争力が上がることを強調。さらに、炉型の標準化に関し、「安全性や核不拡散性の高い小型モジュール炉(SMR)の開発への早急な着手が必要」とも述べた。
 続いて「女性研究者の養成に関わる取組と全国ネットワーク」と題し特別講演を行った東京農工大学副学長の宮浦千里氏は、同学理工系分野のジェンダーバランス改善について、2009年設置の「女性未来育成機構」によるキャリア支援から、女子トイレなどの学内施設改修に至るまで、地道に取り組んできた結果、工学系の女子学生比率が2割を超え全国トップレベルとなったことを披露。さらに、女性研究者を取り巻く環境整備に向け、140超の大学・研究機関が参画する全国ネットワークを組織し情報交換を進めているという。同氏によると、日本の研究者に女性が占める割合は約15%と、OECD加盟国では最低レベルにあり、その背景として研究者の仕事の魅力が女性に伝わっていないことや、キャリア形成の難しさなどをあげている。
 OECD/NEAでは、12月にパリでジェンダーバランス改善に向けた会合を開催しており、今回の報告会では、原産協会国際部の上田欽一氏が同会合への参加報告を行った。世界の原子力部門における女性従事者の割合は22.4%とのデータをまず示し、各国参加者からの取組紹介や討議を通じ原子力部門への女性進出を妨げる要因として、「ジェンダーへの先入観」、「ワークライフバランスの問題」、「原子力に対する悪いイメージ」があげられたとしており、引き続き、データ収集やコミュニケーションを図っていく必要性を強調。また、「男女の職業選択は既に15歳で分岐している」とも述べ、初等中等教育での取組の重要性も示唆した。
 続いて、原子力損害賠償・廃炉等支援機構国際グループの野原薫子氏は、OECD/NEAとの共催で8月に開催した女子中高生を対象に理工系分野への進路を喚起するイベント「Joshikai in Fukushima」(福島県三春町)について紹介した。
 「原子力人材育成ネットワーク」では、日本全体として整合性を持った効果的・効率的な原子力人材確保・育成に向けて戦略立案が必要との考えから、2019年度に「戦略ワーキンググループ(WG)」を立ち上げており、今後同WGのもと、既存活動のPDCAや関係省庁との人材育成における連携を強化していくこととしている。
 これらの報告を受け、高等教育の立場から東京大学大学院工学系研究科教授の上坂充氏は、「『もんじゅ』跡地に研究炉を建設する構想もあり、学生に設計の絵コンテを描かせては」と提案。中学・高校で使われる理科・社会科の教科書を調査してきた九州大学名誉教授の工藤和彦氏は、「技術者としての倫理観も求められる。『技術者像』のあり方についても考えるべき」などと意見を述べた。