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平成30年度「原子力人材育成ネットワーク」報告会、「規制人材の確保・育成」「グローバル人材」について意見交換

2019年2月22日

 将来の原子力人材育・確保に向けて産学官の関係機関が相互協力を図る「原子力人材育成ネットワーク」(以下、ネットワーク)の平成30年度報告会が2月15日、都内で開催され、産官学の関係者約60名が参加しました。冒頭、ネットワーク運営委員長を務める当協会の高橋明男理事長が挨拶に立ち、10年後の人材育成のあるべき姿にむけて策定した「原子力人材育成ロードマップ」に沿い、人材育成が着実に推進されることへの期待を述べました。また、人材育成を戦略的に進めるため、現・企画WGを改組して、今年4月に司令塔機能を有する戦略WGを立ち上げることを紹介するとともに、人材育成の戦略立案には国との連携が不可欠であると述べました。

 その後、ネットワークの桜井聡事務局長より、ネットワーク参加機関数が79機関(設立時49)となったとの紹介があり、機関横断的な事業を検討する各分科会(初等中等教育、高等教育、実務段階人材育成、国内人材国際化、海外人材育成)の活動報告が行われました。なお、ネットワークは、国内外の人材育成にむけ、JAPAN-IAEA原子力エネルギーマネジメントスクール(7回目)、IAEA原子力発電基盤訓練コース(3回目)の実施や、世界原子力大学(WNU)・夏季研修(SI)の2020年日本開催等にむけた協力支援も行っていると言及しました。

 当協会の人材育成部の千葉崇生氏からは、原子力人材育成に係る国内外の活動の全体を俯瞰し、整合性のとれた人材確保・育成戦略等を策定する司令塔機能を担う組織の必要性から、2019年4月より、現・企画WGを戦略WGに改組するとともに、戦略の立案には、国の理解と協力・連携が欠かせないため、4府省(内閣府、外務省、経産省、文科省)との連携会議の設立にむけた活動を行っているとの説明がありました。また、その一環として実施したスペイン調査についても紹介がありました。スペインの原子力技術プラットフォームであるCEIDEN(Comisión Estratégica de I+D de Energía Nuclear、英語名The Spanish Nuclear Fission Technology Platform)では、規制当局も参加し産官学一体となった研究開発の国家戦略の立案、国内外機関との調整などを行っています。また、CEIDENでは教育訓練と知識管理に大別される人材育成活動を展開しており、前者では、現場の実務者が自分の知識ギャップを確認し、訓練を通じて必要な職業スキルを身に付けています。後者では、個社間のノウハウ共有を通じて、技術伝承の課題に取り組んでいます。特に、スペインでは、企業毎に役割分担が決まっているため競合があまり発生せず、かつ、人材の流動性があるため、知識・技術が企業間で横展開しやすい実情があります。そのため、個社間のノウハウ共有が可能となっているとの説明がありました。

 今回の報告会では初めて、原子力規制委員会から規制人材の確保・育成について講演がありました。
原子力規制委員会 原子力規制庁 長官官房人事課の杉本文孝氏は、規制人材の確保と育成を同委員会の重要な柱と位置づけ、国内の大学等と連携し、原子力規制に係る人材を効果的・効率的・戦略的に育成するため、国内の大学等が提案する原子力規制に係る教育研究プログラムを選定し、その取組みの補助を行う他、原子力安全研修所(訓練設備)や研修用プラントシミュレーターにおける訓練の実施、職員の国際性向上のために、規制庁独自の短期米国派遣研修を実施している等、各種施策を紹介しました。また、規制庁において高度な専門性が求められる原子力検査等の5分野で新たな資格制度の整備や、資格取得後も能力の維持のための継続教育訓練の受講を義務化しているとのことでした。

 午後の前半には、「グローバル人材とは」と題する特別セッションが実施され、東京工業大学の社会・環境理工学院の特任教授の尾本彰氏と外務省の軍縮不拡散・科学部の道勇昭秀氏よりそれぞれ講演がありました。
 尾本氏は、グローバル化と日本人・日本の原子力と題して、日本の原子力は元々、国際的な環境でスタートしたが、21世紀の原子力のグローバル化(国境を前提とした国際化から国境を越えたグローバル化とネットワーク化)の中で、日本の関与は概ね限定的かつ受動的で、次第に国際社会との乖離が目立ち、日本の人材の国際競争力もその閉鎖性により悪い評価となっていると述べました。これを改善するため、原子力人材育成の将来的な取組みとしては、若い人に限定する事なく中堅・幹部を含めた継続的な教育と顕彰・認知・資格付与の仕組みの構築することや、組織のマネジメント方針の中に知識管理政策を位置づけ、開かれた組織を志向し、社会の中で環境のための原子力の役割に関する認識を高めることを掲げ、日本の得意な点を活かし、将来の世界の原子力のニーズ・成長点に投資・人材投入をしていくべきだと結びました。
道勇氏は、IAEAの加盟国中、分担金拠出額が第2位(約9%)にも係わらず、IAEAにおける邦人職員数が38名で、専門職以上の全職員数1360名の内、約3%と少ない現状を示し、IAEAで日本人職員の活躍を通じた人的貢献や、原子力安全や核セキュリティー、保障措置のような国際基準の策定・議論等に日本人が参加していくことが望ましいとし、正規職員、コストフリー・エキスパート、テンポラリー・アシスタント、インターン等、様々なスキームからより多くの日本人にIAEAで活躍してほしいとし、外務省としても支援をしていきたいと述べました。

 午後の後半には、「国際機関での就業経験~本人にとっての意義と日本にとっての重要性~」と題する特別セッションが実施され、大阪大学大学院工学研究科の石井大翔氏と、量子科学技術研究開発機構のITER連携推進グループの近藤貴氏からそれぞれ講演がありました。
 石井氏は、IAEAで2018年5月~10月末までの半年間、原子力安全部門にある原子力・放射線事故対策センター(IEC)に配属され、インターンシップを行った経験について述べました。業務を通じ、原子力防災という軸で専門研究とIAEA/IECでの実務を一貫して学び、国際的な視点で分野の全体像を俯瞰的に捉え、それぞれのステークホルダーの役割を理解できるようなったこと、専門性をもつことで、国際機関で働く可能性を含めキャリアの選択肢の幅が広がったと述べ、今後、同じ経験をできる人材が継続的に国際機関に派遣される意義を強調しました。
 近藤氏が所属する量子科学技術研究開発機構はITER日本国内機関を務めています。日本はITER計画(世界の7極:日欧米露中韓印が加盟)の当初から計画を主導し、ITER機構の重要なポジションに邦人職員が就いて大きな役割を担っていますが、全専門職員数594名の内、邦人の専門職員数は26名と僅か4.4%にとどまっています。近藤氏は、ITER建設の進展状況を紹介するとともに、ITER計画では特に産業界での実務経験を有する人材が必要で、核融合先進国である日本の貢献には期待が高く、日本における将来の核融合原型炉に向けた技術の継承の観点からも非常に有意義であるため、ITER機構で多くの邦人職員に活躍してほしいと述べました。

(参考:原子力人材育成ネットワーク ホームページ https://jn-hrd-n.jaea.go.jp


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お問い合わせ先:人材育成部 TEL:03-6256-9315(直通)

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