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日本原子力産業協会 新年会員交流会における今井会長挨拶

2015年1月16日

日時:2015年1月7日(水)14:30~
場所:東京プリンスホテル2F「鳳凰の間」

 皆さん明けましておめでとうございます。昨年末の衆議院選挙でアベノミクスが承認されて、与党は3分の2を超える議席を獲得しまして、その結果、第3次安倍改造内閣がスタートしました。今後の4年間を見ますと今年の総裁選もさることながら、来年の参議院の選挙も安倍さんの5年前の参議院選挙のリベンジの選挙でありますから、少なくとも51名よりは10名以上、上積み出来ると思っているので、そうなると今後4年間の安倍内閣は長期安定政権となると思います。諸問題をその間に是非解決して頂きたいと心から願っております。

 今一番大事なのは安倍総理がおっしゃっているように経済でございます。デフレからの脱却をしなければいけないわけであります。
景気の好循環をうまく回すためには、資金供給を拡大してインフレマインド醸成に期待するだけでは上手く行かないと思います。やはり、物価の値上げよりも実質所得が上回らないと消費は増えない。消費税が3%上がり、円安で輸入諸物価が上がっている中で、昨年、政労使が話し合って2%前後賃上げが行われましたが、今年も安倍総理はその辺をしっかり認識されており、組閣した2日後に政労使の会議を開いて賃上げをきちっとやって欲しい、と発言されておられます。統計の数字ではなく、実質所得が、生鮮食料品やエネルギーを含めた生活必需品の値上がりを本当に上回らないと景気の好循環は回らない。経済界の方もマクロ的な視点から今年は対処頂きたいのですが、大体そのような雰囲気になっているので安心しております。これが第一の問題であります。

 福島の問題につきましては、避難されている方々が県内外に12万人おられ、未だに故郷に戻れずにおられるので、これへの早急な対処が必要だと思っております。
その原因となりました福島第一原子力発電所につきましては、昨年末に4号炉における燃料棒の取り出しが終わりました。また懸念されていた汚染水につきましても、対策が順調に進んでいるように思います。従って良い方向に向かっていると思いますが、1、2、3号炉のデブリ取り出し作業は、世界的にも例のない作業でございますので、長期間に亘ると想定されます。福島の方々の1日も早い帰郷を実現すべく、この1,2,3号炉の問題は、国際的な叡智を結集して取り組まなければいけない問題だと認識しております。

 去年の暮れに東京電力の數土会長が、コスト削減を10年で6兆円実施し、今年は電力料金の値上げを凍結する、と宣言されました。これは立派なことですが、柏崎刈羽の稼働が前提条件となっております。非常に難しい問題だと思いますが、原子力規制委員会の早急な審査を望むと共に、結論が出た後、地元自治体におかれましては、国家的見地からフォローして頂きたいと心から願っております。
 
 その原子炉の再稼働に関しましては、川内原発1,2号機が新基準審査合格の第一号となりまして、その後ただちに鹿児島県知事、薩摩川内市長、両議会とも決断を頂きました。所定の手続きを終え、早く再稼働されることを望みます。
原子力規制委員会は、三条委員会として民主党内閣の時に、つまり2012年9月に発足致しました。約1年かけて新規制基準を策定し、2013年中に16基の原子力発電所が再稼働を申請しましたが、それから1年経過してようやく川内が去年の9月に合格となった訳でございます。現在申請中の原子炉は全部で21基ございますが、審査に時間がかかり過ぎており、1年に1基ずつとすると、全て再稼働するのに21年かかってしまいます。これはあまりにも酷い状況だと思います。今年の9月に、規制委員会が設立されて3年目となります。3年経過したら見直すという条項が入っておりますので、是非この機会に、原子力規制委員会の見直しをやって頂きたい。勿論、見直しを実施する際に、安全第一という根幹を変えてはなりません。しかし、米国のNRCの方に聞きましたら、審査にあたっては、効率性も非常に重視すると言っておられましたので、見直しに際しては、効率性の観点も取り入れるよう、9月までに党ならびに政府の方でご努力願いたいと思っております。
 
また昨年の暮れに関電の高浜の3,4号炉について、一応の内定がありまして、現在パブリックコメントにかかっております。これで第2号となりますが、高浜も、福井県知事選挙や、30㎞の避難圏に他の2県が跨がるなど、大変複雑な問題がございます。しかし野田内閣の時ですら、大飯の再稼働の時には政府が前面に出て、再稼働を支援したわけですから、今回も是非、政府が関西電力と一体となり、高浜の早期稼働を図るべく、ご努力願いたいと思います。そして、この川内・高浜の経験を活かし、玄海、伊方、大飯、柏崎刈羽と、再稼働が続くことを切望しております。
 このように再稼働のことをしつこく申し上げるのは、日本の競争力を再構築する観点と地球環境の問題から、どうしても必要だと考えるからです。

日本の国際競争力の再構築という点から申し上げますと、原発の全面停止によって、電力事業者は海外からの化石燃料調達に依存せざるを得なくなり、年間3兆7千億円の外貨が流出している訳でございます。事業者は電力価格に転嫁しなければなりませんので、結果として、産業向けが30%、家庭向けが20%上昇致しました。これは産業にとって大変大きな負担となっております。
それからもう一つは、事故の後、東京電力はやむを得ず計画停電をされました。その後、夏が来る、冬が来る、そのたびに電力不足が懸念されました。従って産業界は、電力の安定供給に不安を持ちまして、この3年間次々に海外移転を進めました。この海外移転は不可逆的なものであり、早く対策を打たなければならないと申し上げてきたわけですが、現在円安となって、本来なら輸出が増えるはずなのに海外移転が進んだために殆ど増えておりません。今まで貿易黒字は毎年約10兆円ありましたが、昨年は、11月迄の統計から推定いたしますと、およそ13兆円の貿易赤字です。つまり23兆円が日本のGDPの外需から消えている訳で、大変な問題だと思っております。
一方、最近の円安によって輸出関連企業は大きな収入を得ております。国内から輸出する企業は勿論、海外に進出した企業も外貨で利益を受けます。為替レートが80円の時と今の120円の時と比べると50%円安になっているわけですから、海外からドルを持って来れば、たなぼたといえば失礼ですが、50%の分が過剰利益となって出てきている。この利益を配当として払うだけでなく、設備投資や、雇用拡大、賃金アップ等に使わなければならないのではないかと思うのですが、現にそのような企業が出始めております。コスト的に考えますと、日本での賃金及び償却費は、円ベースでは全然変わっておりませんけれども、ドル換算いたしますと、大体3分の1下がっております。今や中国と競争しても負けない体制になっている所もあるはずですので、これから国内回帰が進むと考えており、そのためには原子力の再稼働が何としても必要だと思います。

 次は環境の問題でございます。一昨年の12月にCOP19が開催されまして、当時の石原環境大臣は、2005年から2020年までの15年間で日本はCO2の排出量を3.8%減らすと発言されました。しかし京都議定書は1990年をベースとしておりますので、1990年と比較すると排出量が大きく増加しており、各国から失望を買いました。それは原子力の方向性が定まっていないため、原子力ゼロを前提として計算しているからです。
本年12月にはパリでCOP21が開催されます。これは大変重要な会議でございまして、京都議定書に参加しなかった米国や中国も含めた世界中の国々が集まって、京都議定書に代わる、2020年から先の地球温暖化問題、気候変動問題の対策の大綱を決めることになっております。各国ともすでに事務局に削減の数字を出しているわけでございますが、日本は出せません。何故かというとエネルギーのベストミックスにおける原子力の位置づけが定量的に定まらない中で、CO2がどれだけ減らせるか計算できないからであります。そうなると日本は、蚊帳の外に置かれてしまうわけです。この辺は経産大臣もよく認識しておられて、数値を年央までに出すと言われておりますが、党と政府がこの対策を十分にやって頂きたいと思います。
以上が原子力をどうしても再稼働させなければならない2つの理由でございます。

ただ国民の中には原子力の再稼働に不安を持っている方が大勢いらっしゃいますので、まず信頼回復に努めなければなりません。一番大切なのは、安全文化をしっかりと自分の社内に刷り込むことで、初めて信頼回復ができるということです。具体的には、ハードの面では多重防護であり、これは済んでいると思います。ソフトの面では、事故が起こった場合にどうするか、あるいは事故が外部に及んだ場合に避難をどうするか、そのような所まで不断に検討・準備し、これを分かりやすい言葉で、外に向かって説明してご理解いただく、ということです。これが一番信頼回復の元になると思うので、事業者の方には是非実施して頂きたいと思います。
その他原子力には様々な問題がございます。例えば高経年炉の廃炉、リプレース・新増設の問題、また使用済燃料の再処理やプルサーマルといった核燃料サイクルの問題、更には高レベル廃棄物の最終処分場の問題など、これらは全て政府が率先して実施しなければならない問題です。政府の方々には、これらを早急に進めていただくよう、心から希望する次第です。

 私ども日本原子力産業協会と致しましては、まず第一に、ただいま申し上げたような、原子力のおかれている状態を国内外に発信してまいります。
それから廃炉するにせよ、再稼働するにせよ、あるいは機器を輸出するにせよ、優秀な人材を数多く養成しなければなりませんので、人材育成に関して、引き続き最も重要な問題として、努力してまいりたいと思います。
その他、我が国の反対者には女性が多いという事で、昨年は女性との対話を開始致しましたが、今年も重点的に取り組んでいきたいと思います。
そして、これまで継続している福島の現地のニーズを吸い上げて対応・支援する活動を引き続き実施してまいりたいと思います。よろしくご支援のほどお願いいたします。
今年は原子力ゼロからの脱却の年でございます。会員の皆様、会場にお出での皆様のご支援を頂戴いたしまして、私どもは原子力の復活に最大限の努力をすることをお誓い申し上げて、新年の挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。

以 上

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