シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」

【2】原子力損害賠償に関するリスクと原賠制度の目的

 今回は、原子力損害賠償に関するリスクや原賠制度の目的についてQ&A方式でお話します。

q1
(もし原賠法がなかったら)
もし原賠法がなければ、原子力事故の賠償はどうなりますか?
a1
  • 多数の関係者(電気事業者等の原子力事業者、プラントメーカー、サプライヤーなど)が訴えられ、裁判が複雑化・長期化する可能性があります。
  • 巨額の賠償責任を負う会社が、その負担に耐え切れず倒産してしまう可能性があります。
  • 賠償責任を果たせず会社が倒産してしまえば、被害者は損害の補填を受けられないことになります。
  • 原子力災害はさまざまな損害をもたらしますが、被害者は、加害者の過失や事故と各損害との因果関係を1つ1つ証明しなければならなくなります。

【A1.の解説】

 「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」がなければ原子力事故の場合も一般的な事故と同じ扱いになります。

 事故などにより第三者に損害を与えてしまった場合、一般的には原子力事業者もしくはプラントメーカー等が民法の不法行為法(場合によっては債務不履行)による賠償責任を負うこととなります。

 一般的に、不法行為責任の発生は4つの要件(違法性(権利侵害)、加害者の故意または過失、損害の発生、違法行為と損害の間の相当因果関係)を充足する必要があります。

 しかし原賠法があれば、発生した損害が原賠法で規定された原子力損害(注)に当たる場合に適用となり、責任の所在や不法行為の発生要件が変わってきます。

(注)原子力損害とは・・核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう(原賠法第二条2項)。

原賠法の概要

  • 無過失責任と責任集中
    原子力事業者は故意又は過失がなくても原子力損害を賠償しなければなりません。また原子力事業者でない者は原子力損害の賠償責任を負いません。
  • 賠償措置の強制
    損害賠償措置の強制により原子力事業者の賠償資力が確保されています。
  • 国家補償
    事業者による措置でまかなえない損害や、事業者の責任範囲外の損害は国が補償します。

より詳細な解説はこちら

 

q2
(原賠制度の目的)
なぜ原子力損害賠償制度が作られたのですか?
a2
  • 万一原子力事故が発生した場合、巨額の賠償負担による倒産リスクを負うのでは民間企業は原子力産業に参入できません。こうしたリスクを避ける仕組みとして生まれました。
  • 原子力事業者だけが責任を負うこと(責任集中)で、原子力事業者と取引を行う企業は参入しやすくなり、また事故の際の責任の所在が明確になります。
  • 原子力事業者はあらかじめ賠償の準備(保険契約等の締結)を強制されているので、事故によって生じる巨額の損害賠償の支払いは保険金等で代替されます。
  • もし原子力事業者が賠償責任を果たせなくても、国の援助により被害者は救済を受けることができます。
  • 日本だけでなく原子力施設を持つ多くの国に、同様の原賠制度があります。原賠制度がない新規原子力導入国は、導入前に原賠制度を整備することが重要です。

【A2.の解説】

 万一原子力事故が発生すれば、周囲の人や財産に大きな損害を与えます。その加害者として、事業者は膨大な賠償金を負担することになり、たった1回の事故で原子力事業者や機器などを納めたメーカー・サプライヤーがバタバタと倒産してしまうかもしれません。また、倒産してしまえば会社から充分な賠償金を得ることは難しいため、被害者も救われません。
これでは原子力産業に関わろうという民間企業は現れないでしょう。

 原賠制度は原子力事業の健全な発達と被害者の保護のために作られました。原子力損害の賠償責任を原子力事業者に集中し、原子力事業者に責任保険等の賠償措置を強制することにより、偶発的な賠償負担でなく経常的支出となり、経営の安定が図られます。原子力事業者は、地震など責任保険の免責事由に該当する場合に備えて、政府と原子力損害賠償補償契約を結ぶことも強制されています。

 さらに、事業者による措置でまかなえない損害は国が補償することで、被害者は確実に損害の救済を受けることができます。また、異常に巨大な天災地変や社会的動乱など、原子力事業者の責任が問われない場合は政府が必要な措置を講じることとなっています。

 日本だけでなく原子力施設を持つ多くの国に同様の原賠制度がありますが、賠償措置額や原子力事業者の責任範囲は国によって様々です。また、原賠制度がない新規原子力導入国は、導入前に原賠制度を整備することが重要です。

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