シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」

【11】製造業者の賠償リスク

 今回は、メルマガ読者から頂いた声から、製造業者の賠償リスクについてQ&A方式でお話します。

q1
(国内原子力施設に関する製造業者の賠償リスク)
国内の原子力施設に対して製造物(プラントあるいは一部の機器・部品)の供給を行う場合、その製造物が原因で事故が起こると、どのような損害賠償リスクがありますか?
a1
事故が原賠法の原子力損害に該当するか否かで、大きく次の二通りの場合に分かれます。

事故が原子力事故でない場合

  • 製造業者は、設計過程や製造過程の中で何らかの故意又は過失行為があり、それによって第三者に損害を与えてしまった場合、その損害を賠償する原則的な責任を負っています。(民法第709条。)
  • 製造業者にたとえ故意や過失がなくても、引き渡した製造物に欠陥があり、それにより第三者に損害を与えてしまった場合、その損害を賠償する責任を負います。(製造物責任法第3条)
     なお、事故が無くとも、売買契約上の売主の責任として、瑕疵担保責任というものがあります。売買の目的物(製造物)に隠れた瑕疵がある場合です。このような場合、瑕疵のために買主が契約の目的を達することができないときは買主が契約を解除することができ、また損害賠償を請求することができます。契約の目的を達することができないとはいえないようなときは、買主が売主に対して損害賠償のみを請求することができます。(民法第570条、第566条)
  • 事故が原子力事故の場合

  • 国内の原子力損害の場合、損害賠償責任のある原子力事業者以外の者は、損害賠償責任を負いません。(原賠法第4条)
  • 原子力損害が海外に及んだ場合、海外の裁判所では原賠法は適用されず、現地の不法行為法や製造物責任法によって損害賠償責任が決まります。

【A1.の解説】

 原子力施設に関わる製造業者等が国内の原子力プラントや一部の機器・部品等の製造物を納めたとき、その製造物が原因となり引き起こした事故によって、第三者に損害を与えてしまった場合、民法第709条(不法行為による損害賠償)や製造物責任法により当該製造業者等は賠償責任を負うことになります。

 製造物責任法は、製造業者等の製造物責任を一般不法行為責任の成立要件に比べて、製造者等側により厳しくしたもので、製造業者に過失がなくても製造物に欠陥があって、かつ第三者の生命・身体又は財産を侵害すれば、製造業者等が責任を負うことになります。ただし、引渡し時における科学・技術の知見では欠陥が認識できなかった場合や、欠陥が専ら他の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じた場合は免責になります。

 以上は通常の事故に関する製造業者の賠償責任ですが、もし事故によって第三者に与えてしまった損害が原子力損害であれば、原賠法により賠償責任のある原子力事業者以外の者は、損害賠償責任を負いません。

 ただし、海外に原子力損害が及んでしまった場合には、日本の国内法である原賠法は海外の裁判所では適用されず、現地の一般不法行為法や製造物責任法によって損害賠償責任が決まります。

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q2
((海外原子力施設に関する製造業者の賠償リスク)
海外にあるA国の原子力施設に対して製造物の供給を行う場合、その製造物が原因で事故が起こると、どのような損害賠償リスクがありますか?
a2
A1同様に、事故が原賠法の原子力損害に該当するか否かで、大きく次の二通りの場合に分かれます。

事故が原子力事故でない場合

  • 製造業者の故意又は過失によって第三者に損害を与えてしまった場合、A国の不法行為法その他の損害賠償法規にしたがい、その損害を賠償する責任を負います。(A国の一般不法行為法による)
  • もしもA国に製造物責任法があれば、製造業者等は、その製造物責任法の規定にしたがい、その損害を賠償する責任を負います。(A国の製造物責任法による)
    なお、製造物に関する売買がA国の供給先との間の直接契約であれば、A国の法律によって、日本と同様の瑕疵担保責任を負うこともまた考えられます。但し、瑕疵担保責任の具体的な内容はA国の法律の定めるところによることになります。
  • 事故が原子力事故の場合

    • A国内で原子力損害が発生した場合、損害賠償責任のある原子力事業者以外の者は、損害賠償責任を負いません。(A国の原賠法による)
    • A国で発生した原子力事故によりB国に原子力損害が及んだ場合、B国の裁判所ではA国の原賠法は適用されず、B国の不法行為法や製造物責任法によって損害賠償責任が決まります。
      ただし、A国とB国が共に同じ原子力損害賠償に関する国際条約に加盟して いれば、原賠法により損害賠償責任のある原子力事業者以外の者は、損害賠償責任を負いません。(パリ条約、ウィーン条約、原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)などによる)

【A2.の解説】

 海外の原子力施設にプラントや一部の機器・部品等の製造物を納めたときの損害賠償責任についても、基本的には日本国内の原子力施設に製造物を納入した場合と同じです。ただし、日本の一般不法行為法、製造物責任法、原賠法と、海外における同様の法律とは全く同じではないことに留意しなければなりません。

 また、日本は四方を海に囲まれており、偏西風の方向を考えても海外に原子力損害を及ぼすことは想定しにくいですが、陸続きや河川で国境を接している国では原子力損害が容易に他国に広がってしまう恐れがあります。そのような越境損害のリスクを考えるとき、製造物の納入先の国やその周辺国が原子力損害賠償に関する国際条約に加盟しているかどうかは重要な事項といえます。

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