シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」

【16】中国の原子力開発事情と原賠制度について

 今回は、今後とも日本の原子力関係者とさまざまな関係が予定される中国の原子力開発事情と原賠制度についてQ&A方式でお話します。

q1
(中国の原子力開発事情)
中国の原子力開発はどのような状況ですか?
a1
  • 中国における最初の原子力発電プラント秦山1号機は、1985年3月に建設工事着工、1991年10月に臨界、1994年4月に営業運転開始となりました。
  • 中国では現在11基9百万kWの原子力発電プラントが運転中であり、26基3千万kWが建設中、さらに10基9百万kWが計画されています。
  • 政府の「中長期原子力開発計画」では2020年までに4000万kWを運転開始し、2030年までに2億kWを目指すことになっています。
  • 中国では原子炉の主要機器の国産化が進められており、現時点の国産化率は80%となっています。

【A1.の解説】

 中国のエネルギー消費は1978~2007年に4倍に増加しており、現時点で世界第2位(石炭換算で260億トン)となっています。資源別に見ると、石炭が7割、石油が2割、原子力は0.8%であり、環境影響などの観点から、石炭に依存しているエネルギー消費構成を適正化することが急務です。

 中国政府は2005年から2020年を対象とした「中長期原子力開発計画」において、原子力発電設備容量を2020年までに4,000万kWまで拡大するとしており、さらに2030年までに2億kWを目指しています。
 中国の原子力発電の基本方針は、安全性と経済性を重視しつつ、海外の先進的技術を導入すると共に国内技術の向上による原子力発電所の建設能力を確立すること、100万kW級PWR-高速炉-核融合炉の開発路線の進展、国内原子力産業体系の構築とされています。
 2010年1月1日現在、11基(PWR 9基、PHWR 2基)911.8万kWの発電炉が運転中であり、26基2,944.4万kWが建設中、さらに10基902.2万kWが計画されているため、4,000万kWは予定より5年早い2015年に達成できる見込みとなっています。
 また、世界原子力協会(WNA)の今年4月時点の調査によると、今後15年以内に稼動を目指す原子力発電は世界で539基にのぼり、中国は177基と全体の32.8%を占めるとされます。
 中国の核燃料サイクルについては、ウラン資源、ウラン濃縮、核燃料加工、使用済み燃料再処理のリサイクル方針に則り、海外からの技術導入・研究開発および関係施設の計画・建設を進めています。
 中国の自主化・国産化路線により、プラントの主要機器(圧力容器、蒸気発生器、原子炉冷却ポンプ、炉内構造物など)の国産化が急速に進められ、現時点で100万kW級の原子炉の国産化率は80%となっています。

q2
(中国の原賠制度)
中国の原賠制度はどのようになっていますか?
a2
  • 中国の原子力関連法規は未だ十分な状況にあるとは言えず、原子力法については草案が相当以前に作成されたものの制定されるに至っていません。
  • いわゆる原賠法についても、国の法律として制定されていませんが、原賠制度に関する国務院の見解により、制度の方針が示されています。
  • 事業者の責任は有限(限度額までのみ責任を負う)であり、賠償措置額は日本の30分の1程度です。また、政府補償も有限となっています。
  • また、こうした特殊な制度が示すように、中国は現在、原賠制度に関する国際条約には加盟していません。

【A2.の解説】

 中国の原子力関連法規については、国の法律では「放射能汚染防止法」が存在する程度であり、各種の規制・防護・損害賠償・国際協力等に関わる事項は国務院の行政法規、各行政部門の規則、国際条約等に拠っています。
 原賠制度に関する法律案については、1989年7月に全人代常務委員会に提出された中国原子力法(草案)の第10章「原子力損害の賠償責任」に記載されていますが、原子力法自体が未だ制定されていないこともあり、実際上の原賠制度については国務院から1986年及び2007年に公布された文書で示されています。ちなみに、2007年の原子力発電機構宛文書「原子力事故の損害賠償責任問題に関する国務院の回答」によれば、原賠制度の基本的事項である責任集中、責任限度額、損害賠償措置、国家補償、免責事項等を含む、損害賠償責任に関する基本方針が示されており、事業者の最高賠償額を3億元(約40億円*)とし、その財務的な措置として保険への加入を求めています。賠償すべき総額が規定された最高賠償額を超えたときには、国家が8億元(約107億円*)を限度に財務補償を提供します。また、事業者の免責事項として武力衝突、敵対行動、戦争あるいは暴動により直接生じた原子力事故によって引き起こされた損害が挙げられています。
 なお、原子力に関わる国際条約については、中国は「原子力事故の早期通報に関する条約」と「原子力事故または放射線緊急事態の場合における援助に関する条約(原子力事故援助条約)」の締約国ですが、原賠に関しては何れの国際条約(パリ/改正パリ条約、ウィーン/改正ウィーン条約、補完基金条約(CSC))にも加盟していません。
 また、中国においては損害賠償措置の財務的保証の役割を担う中国原子力保険プールが組織されており、我が国をはじめ世界各国の保険プールとの間で原子力保険に関わる再保険取引を行っています。

(*2010年6月15日の為替レートにより換算)

○ 原産協会メールマガジン2009年3月号~2012年10月号に掲載されたQ&A方式による原子力損害賠償制度の解説、「シリーズ『あなたに知ってもらいたい原賠制度』」を冊子にまとめました。

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