シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」

【24】インドネシアの原子力開発事情と原賠制度

 今回は、豊富なエネルギー資源と世界第4位の人口を持つインドネシアの原子力開発事情と原賠制度についてQ&A方式でお話します。

q1
(インドネシアの原子力開発事情)
エネルギー資源の輸出国として知られるインドネシアの原子力開発はどのような状況ですか?
a1
  • インドネシアは豊富なエネルギー資源を持つ国として知られていますが、今後の資源枯渇やエネルギー需要増を考慮すると、資源量は必ずしも十分であるとは言えません。
  • インドネシアは早い段階から原子力全般に渡る研究開発に力を注いできており、その歴史や規模はASEAN随一です。
  • インドネシアはこれまでに何度か原子力発電所導入の計画を立ててきましたが、最終的には中止や無期延期となり、未だ導入には至っていません。
  • 近年の計画では2016年頃にムリア半島で初号機を運転開始、2025年に合計4基4GWを導入するとされていますが、事業としての取り組みは遅れています。
  • インドネシアの原子力発電計画に対する我が国を始め、韓国、フランス、ロシア、米国等の働き掛けは活発な状況にあります。

【A1.の解説】

 インドネシアは石油、天然ガス、石炭などのエネルギー資源を輸出しており、豊富な資源を持つ国として知られていますが、石油の生産量は年々減少し、2004年以降は石油の輸入量が輸出量を上回っています。また、世界第4位となる2億3千万人の人口を抱えており、今後も電力需要が大幅に増加することが見込まれていることから、インドネシアの資源量は十分なものとは言えません。

 インドネシアの初代大統領スカルノ、第2代大統領スハルトは、先進国への仲間入りの条件の一つとして原子力利用が必要と考え、早くから原子力研究開発に力を入れてきたため、その歴史や規模はASEAN随一となっています。
 インドネシアの原子力研究開発は1954年に実施した太平洋上の原水爆実験の影響調査に始まり、58年には原子力諮問委員会と原子力研究所(後に原子力庁BATANに改組)を設置、64年には原子力法と原子力規制法を制定し、65年には初の研究炉であるTRIGA-Mark II炉(250kW)を完成させました。その他にも30MWのプール型多目的研究炉(RSG-GAS炉)や100kWの教育訓練用研究炉などを持っており、放射線の農業・医療利用、原子力エネルギー利用、放射性廃棄物の管理技術開発、処理事業など、原子力全般に関する研究開発を行っています。

 インドネシアは1971年にBATANがIAEAの援助の下で原子力発電導入調査を行ったのをはじめ、これまでに何度か原子力発電所導入の計画を立ててきましたが、86年のチェルノブイリ事故を契機に中止となったり、また97年には政治的不安定により無期限の延期となったため、現在まで導入には至っていません。しかしながら、法整備の面では1997年4月に新たに成立した原子力エネルギー法では、原子力施設で原子力損害が生じた場合の原子力施設の運転者に対する損害賠償責任、BATANから新たな原子力規制機関を独立させる、原子力発電所の建設に関わる諮問機関を設置する等が規定されました。

 その後にIAEAの協力を得て行ったインドネシア政府の研究により、「環境保護と急増する電力需要に対処するためには2015年頃には原子力発電導入が必要」との評価結果等を踏まえ、2002年頃から原子力発電導入の動きが再浮上しており、エネルギー関連法令において原子力発電の位置づけを明確にするなど、エネルギー政策として原子力導入計画を進めてきました。
 BATANによる導入計画では、建設予定地はジャワ島中部北岸のムリア半島とし、2016年頃に初号機を運転開始、2025年に合計4基4GWの原子力発電を導入することとなっていますが、導入決定に対する大統領の躊躇もあり、事業としての取り組みは遅れています。

 インドネシアの原子力発電計画に対する売り込みには、我が国を始めとして官民一体となった韓国、フランスやロシア、米国、カナダなどの積極的な働き掛けが見られます。我が国のインドネシアへの関わりは1980年代半ばから始まり、2007年には経済産業省とインドネシア・エネルギー鉱物資源省との間で原子力発電導入における協力覚書(MOC)が締結され、2009年には経産省による「原子力導入基盤整備事業」が開始されています。

q2
(インドネシアの原賠制度)
研究炉のあるインドネシアの原賠制度はどのようになっていますか?
a2
  • インドネシアでは1964年に原子力エネルギー法、原子力規制法が制定され、その後1997年に現行原子力エネルギー法が制定されたのをはじめとして、関係法令が整備されました。
  • インドネシアの原賠制度は原子力エネルギー法(1997年第10号法令)に規定されており、原賠制度の基本的原則を備えていますが、国の措置や援助に関する規定はありません。
  • インドネシアは1997年に改正ウィーン条約と補完基金条約(CSC)に署名しています。

【A2.の解説】

 インドネシアではTRIGA-Mark II研究炉が臨界を迎えた1964年に原子力エネルギー法と原子力規制法が制定されました。その後、原子力発電の導入に向けて1997年に原子力エネルギー法が改定されたのをはじめ、核物質輸送安全法、放射性廃棄物管理法、原子炉許認可法などが整備され、2006年には原子炉規制法も改定されました。原子力規制庁(BAPETEN)は2012年までに原子力発電に関連する法規の整備完了が要求されています。

 インドネシアの原賠制度は1997年に改正された原子力エネルギー法(1997年第10号法令)の「第VII章 原子力損害に対する賠償責任(第28条~第40条)」に規定されており、無過失責任、責任集中、損害賠償措置、責任限度額(現在9,000億ルピアから4兆ルピア=約371億円に引上げ)など、原賠制度の基本的原則を備えていますが、損害額が賠償措置額を超えた場合や、運転者の免責事項に該当する場合の、国の措置や援助に関する規定はありません。

 なお、インドネシアはIAEAにおける1997年の改正ウィーン条約や補完基金条約(CSC)の採択に合わせて両条約に署名していますが、批准には至っていません。その他の国際枠組みとしては、原子力安全条約、使用済み燃料安全管理・放射性廃棄物安全管理合同条約(署名のみ)、原子力事故早期通報条約、原子力事故または放射線緊急事態における援助条約、核不拡散条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)(署名のみ)、核物質防護条約改定条約に加盟しており、IAEA保障措置協定、追加議定書も締結しています。

*平成23年2月24日現在のレートによる。

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