シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」

【36】中間指針第二次追補と総括基準

 今回は、原子力損害賠償紛争審査会による2012年3月16日に公表の中間指針第二次追補と原子力損害賠償紛争解決センターによる2012年3月14日に公表の総括基準についてQ&A方式でお話します。

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(中間指針第二次追補)
政府による避難区域等の見直し等に伴い、原子力損害賠償紛争審査会から出された指針の追補はどのような内容ですか?
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  • 2012年3月30日に政府により実施された警戒区域及び避難指示区域等の見直しに伴い、原子力損害賠償紛争審査会(紛争審査会)は中間指針第二次追補を策定しました。
  • 避難指示等に係る損害については、2012年4月以降の第3期における精神的損害として、避難指示解除準備区域は1人月額10万円、居住制限区域は1人月額10万円とし2年分まとめて240万円、帰還困難区域は1人600万円が目安とされました。また、旧緊急時避難準備区域及び特定避難勧奨地点に係る取扱いが示されています。
  • 帰還困難区域内の不動産に係る財物価値は、事故発生直前の価値を基準として100%減少(全損)したと推認されました。
  • 除染等に係る損害として、除染等に伴う追加費用、減収分及び財物価値の喪失・減少分、地方公共団体や教育機関が行う検査等の費用が、賠償すべき損害と認められました。
  • なお、東京電力によれば、2012年4月20日現在の原子力損害賠償に係る状況は、おおよそ請求件数710,300件、賠償件数578,500件、賠償金額6,323億円となっています。

【A1.の解説】

 政府による避難指示等に係る損害の範囲に関する考え方は、紛争審査会による2011年8月5日の中間指針及び2011年12月6日の中間指針第一次追補で示されましたが、その後、2012年3月30日時点での警戒区域及び避難指示区域等の見直しに対応するため、紛争審査会は2012年3月16日に中間指針第二次追補を決定・公表しました。

 第二次追補には、中間指針及び第一次追補において引き続き検討すべき事項とされた、政府による避難等の指示等に係る損害、自主的避難等に係る損害、除染に係る損害が示されています。

 中間指針第二次追補では、賠償が認められるべき範囲として、次のような指針が示されています。

<政府による避難指示等に係る損害>

1. 避難費用及び精神的損害
(1) 避難指示区域(新たに設定された避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域)
○ 中間指針において示された「第2期」を2012年3月末日まで延長し、4 月以降は「第3期」。(事故発生から6ヶ月間を「第1期」、第1期終了から6ヶ月間を「第2期」としていた。)
○ 第3期において賠償すべき避難費用及び精神的損害の算定方法は、引き続き中間指針で示した通り。ただし宿泊費等が賠償の対象となる期間には限りがある。
○ 第3期における精神的損害の具体的な損害額は、次を目安とする
・ 避難指示解除準備区域に設定された地域・・・1人月額10万円。
・ 居住制限区域に設定された地域・・・1人月額10万円とし、2年分として240万円。
・ 帰還困難区域に設定された地域・・・1人600万円。
○ 中間指針において避難費用及び精神的損害が賠償の対象とはならないとしている「避難指示等の解除等から相当期間経過後」の「相当期間」は今後の状況を踏まえて判断される。
(2) 旧緊急時避難準備区域(福島第一原子力発電所の半径20km?30km圏内の地域の中で、計画的避難区域には該当していない地域:同準備区域は2011年9月30日に解除済)
○ 第3期において賠償すべき避難費用及び精神的損害や、損害額の算定方法は、引き続き中間指針で示した通り。
○ 第3期における精神的損害の具体的な損害額は1人月額10万円を目安。
○ 中間指針において避難費用及び精神的損害が賠償の対象とはならないとしている「避難指示等の解除等から相当期間経過後」の「相当期間」は、2012年8月末までを目安。
(3) 特定避難勧奨地点(事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超えると推定される特定の地点:設定した地点の住居に対して政府は避難等に関する支援を行うとともに、当該地区のモニタリングを継続的に行う)
○ 第3期において賠償すべき避難費用及び精神的損害や、損害額の算定方法は、引き続き中間指針で示した通り。
○ 第3期における精神的損害は1人月額10万円を目安。
○ 中間指針において避難費用及び精神的損害が賠償の対象とはならないとしている「避難指示等の解除等から相当期間経過後」の「相当期間」は、3ヶ月間を当面の目安。

2. 営業損害
○ 営業損害の終期は当面は示さず、個別の事情に応じて合理的に判断する。
○ 営業損害を被った事業者による転業・転職や臨時の営業・就労等が特別の努力と認められる場合には、その努力により得た利益や給与等を損害額から控除しない等の合理的かつ柔軟な対応が必要。

3. 就労不能等に伴う損害
○ 就労不能等に伴う損害の終期は当面は示さず、個別の事情に応じて合理的に判断する。
○ 就労不能等に伴う損害を被った勤労者による転職や臨時の就労等が特別の努力と認められる場合には、その努力により得た利益や給与等を損害額から控除しない等の合理的かつ柔軟な対応が必要。

4. 財物価値の喪失又は減少等
○ 帰還困難区域内の不動産に係る財物価値については、事故発生直前の価値を基準として100%減少(全損)したと推認できる。
○ 居住制限区域内及び避難指示解除準備区域内の不動産に係る財物価値については、避難指示解除までの期間等を考慮し、事故発生直前の価値を基準に一定程度減少したと推認できる。

<自主的避難等に係る損害>

 第一次追補における自主的避難等に係る損害について、2012年1月以降に関しては次の通り。

  • 少なくとも子供及び妊婦は、自主的避難を行うような心理が、平均的・一般的な人を基準とし、合理性が認められる場合には、賠償の対象となる。
  • 賠償の対象となる場合において、賠償すべき損害及びその損害額の算定方法は、原則として第一次追補で示した通りとし、具体的な損害額については合理的に算定する。

<除染等に係る損害>

 除染等に係る損害は、中間指針で示したもの(一次立入費用、営業損害、検査費用(物)、財物価値の喪失又は減少等)のほか、次の通り。

  • 必要かつ合理的な範囲の除染等に伴って生じた追加的費用、減収分及び財物価値の喪失・減少分は、賠償すべき損害と認められる。
  • 地方公共団体や教育機関が行う必要かつ合理的な検査等に係る費用は、賠償すべき損害と認められる。

 第二次追補には中間指針や第一次追補と同様に、第二次追補で対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得る、と明記されています。

 なお、東京電力による原子力損害賠償の支払い実績は次の通りです。(東京電力のウェブサイトより転載)

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福島原発事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針
自主的避難等に関する指針(第二次追補)、紛争解決センター

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(紛争解決センターが策定した総括基準)
原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解仲介手続きの実施状況と新たな総括基準はどのようになっていますか?
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  • 2012年4月20日現在、和解仲介手続きを実施している原子力損害賠償紛争解決センター(紛争解決センター)には和解の申立てが1,926件あり、そのうち80件について和解が成立しています。
  • 紛争解決センターは、2012年2月14日に公表した4つの総括基準に加え、2012年3月14日に新たに次の2つの総括基準を公表しました。
  • 訪日外国人を相手にする事業の風評被害等に関しては、事故との因果関係が認められるのは、「放射性物質による汚染の危険性を懸念し、敬遠したくなる心理が、平均的・一般的な外国人を基準として合理性を有している場合」とされました。
  • 弁護士費用に関しては、和解により支払いを受ける額の3%を目安とする額(和解金が1億円以上になる場合は3%未満で仲介委員が適切に定める額)が弁護士費用として賠償すべき損害と認められることとなりました。

【A2.の解説】

 紛争解決センターの事務所は東京・新橋と福島・郡山に設置されており、2012年4月20日現在、紛争解決センターには和解の申立てが1,926件あり、そのうち80件について和解(うち全部和解:61件、一部和解:14件、仮払和解:5件)が成立しています。

 紛争解決センターでは、申し立てられた案件の多くに共通する論点があることから、一貫性のある和解案を作成するため、中間指針を踏まえ個別の和解仲介事件に適用するべき「総括基準」を策定しています。
 この総括基準は、2012年2月14日に、①避難者の第2期の慰謝料、②精神的損害の増額事由等、③自主的避難を実行した者がいる場合の細目、④避難等対象区域内の財物損害の賠償時期、の4項目が策定され、2012年3月14日には新たに⑤訪日外国人を相手にする事業の風評被害等、⑥弁護士費用、の2項目が追加策定、公表されました。
 総括基準の公表により、基準に基づく和解案提示の促進や、被害者と東京電力との円滑な相対交渉の促進に寄与することが期待されています。

 2012年3月14日に新たに公表された2つの総括基準の概要は以下の通りです。

<総括基準>

1.訪日外国人を相手にする事業の風評被害等
(1)観光業の風評被害について、中間指針の対象である「本件事故の前に予約が既に入っていた場合であって、少なくとも平成23年5月末までに通常の解約率を上回る解約が行われたこと」以外の原因により発生した減収等については、敬遠したくなる心理が、平均的一般的な外国人を基準として合理性を有している場合に福島原発事故との因果関係が認められる。
(2)訪日外国人を相手にする事業の風評被害は、商品又はサービスの買い控え、取引停止等について、敬遠したくなる心理が、平均的一般的な外国人を基準として合理性を有している場合に福島原発事故との因果関係が認められる。
(3)上記基準の適用については、放射性物質による汚染の危険性を懸念する訪日外国人は、福島県及びその近隣地域のみを敬遠するのではなく、日本国内の全部を敬遠するのが通常であることに留意する。

2.弁護士費用
 原子力損害を受けた被害者が紛争解決センターへの和解の仲介の申し立てをする際に、代理人弁護士を選任した場合、弁護士費用として賠償すべき損害と認められる範囲は以下の通り。
1) 標準的な場合は、和解により支払いを受ける額の3%を目安とする。
2) 和解金が高額(概ね1億円以上)となる場合は、3%未満で仲介委員が適切に定める額。
3) 例外的な取扱として、被害者の代理人弁護士の活動に通常の事案よりも複雑困難な点があった場合には、増額可能。
4) 例外的な取扱として、被害者の代理人弁護士の活動が、適正、迅速な審理の実現にあまり貢献しなかったと認められる場合には、仲介委員の判断により、弁護士費用相当額の損害を認定しない。

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原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況と総括基準(2012年2月14日公表分)

○ 原産協会メールマガジン2009年3月号~2012年10月号に掲載されたQ&A方式による原子力損害賠償制度の解説、「シリーズ『あなたに知ってもらいたい原賠制度』」を冊子にまとめました。

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『あなたに知ってもらいたい原賠制度2013年度版』

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