シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」

【49】原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況と総括基準

 今回は、原子力損害賠償紛争解決センターの平成24年における活動状況と、紛争解決センターが策定した総括基準についてQ&A方式でお話します。

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(原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況)
原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解仲介は現在どのように進んでいますか?
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  • 原子力損害賠償紛争審査会は、東日本大震災に伴う東京電力福島原発による原子力損害の賠償に関わる和解の仲介の手続きを円滑かつ効率的に行うために2011年8月に「原子力損害賠償紛争解決センター」(紛争解決センター)を設置しています。
  • 紛争解決センターが取扱った2012年の月間申立件数の平均は379件で、平均的な審理期間は約8ヶ月でした。2013年5月10日現在、申立件数6361件に対し、3563件の事件が終了、その他に仮払和解が延べ101件、一部和解が延べ449件成立しています。
    紛争解決センターでは、発足以来、審理促進に向けて組織体制の強化、審理の迅速化のための工夫、更には総括基準・和解事例の公表等を行ってきましたが、さらなる人員拡充と審理簡素化の徹底や東京電力に対する適切な対応の要請、集団申立事件に対する代表案件選定による迅速処理化、弁護士等代理人の理解と協力等を進めています。

【A1.の解説】

 原子力損害賠償紛争審査会は2011年8月に、和解仲介手続きを円滑かつ効率的に行うために「原子力損害賠償紛争解決センター」(紛争解決センター)を設置しました。紛争解決センターが行う和解仲介手続きは原則的に非公開ですが、福島原発事故の法的紛争の解決は国民的関心事であることなどから、2012年1月30日に、初期段階(2011年9月~12月)のセンターの活動状況が報告書として明らかにされました。それに続き、2012年における活動状況報告書が2013年2月に公開されており、その概要は以下の通りです。

1.紛争解決センターの状況

○事務所体制、人員体制
・ 紛争解決センターは東京に2つの事務所と福島県内に4つの支所を開設して執務を行っている。
・ 2012年に大幅増員を行い、2012年12月31日時点で仲介委員205名、調査官91名、和解仲介室職員112名の合計408名体制となっており、2013年も調査官及び和解仲介室職員の増員を続けている。
○申立ての動向
・ 2011年の月間申立件数の平均は130件であるのに対して、2012年の月間申立件数の平均は379件となり大幅に増加した。これは、東京電力への直接請求に対する回答が2011年末頃から増え、これに同意できない被害者が順次申立手続に至ったことが原因として挙げられる。
・ 2012年3月から7月は月間400件を超える申立があったが2012年9月以降はピーク時より20~30%程度減少して推移している。
○取扱いの状況
・ 2012年までに申し立てられた事件の平均的な審理期間は約8ヶ月であった。
・ 2013年に申し立てられた事件については審理期間が4~5ヶ月程度に短縮することを運用上の課題としている。
・ 2011年の終了事件数6件に比して2012年の終了事件数は大幅に増加し、1856件の事件が終了した。その他に仮払和解が延べ80件、一部和解が延べ246件成立している。
※2013年5月10日現在、申立件数6361件に対し、3563件の事件が終了、その他に仮払和解が延べ101件、一部和解が延べ449件成立しています。

2.紛争解決センターの審理促進に向けた活動

 紛争解決センターでは、当初、おおむね3ヶ月を目標審理期間として設定していたが、上記のように目標を達成できているとは言いがたい状況であり、審理促進に向けて人員の拡充、審理簡素化に向けた工夫、総括基準・和解事例の公表を行っている。
○人員体制の拡充
・ 2011年12月現在の体制は仲介委員約130名、調査官約30名の体制であり月間400件以上の新受事件を速やかに調査着手し迅速に審理を終えるのは不可能であったため、仲介委員および調査官の増員が実行された。
○審理簡素化のための工夫
・ 訴訟のような厳格な手続きを実施しない。
・ 申立書と同時に決算書等の資料の提出を求める(営業損害等の請求の場合)。
・ 申立書を読んだ段階から速やかに和解案や審理計画を想定し、常に審理の終局を見据えて調査・審理を行う。
・ 書面審理のみによる和解提案を活用し、口頭審理期日を開催する場合であっても目的を明確にして少数回だけ開催する。
・ 口頭審理期日は原則として東京事務所で行い、電話会議やテレビ会議システムを活用する。
・ 書証の乏しい事案の事実認定は、被害の実態に即して、申立人の陳述から事実を積極的に認定し、経験則を多用し、常識的な事実認定に努める。
・ 損害額の算定に当たっては合理的な概算で足りるものとして簡易迅速に行う。
・ 釈明要求や資料提出要求は厳選して採用する。
・ 和解案提示理由書は真に必要な場合を除いては作成せず、作成する場合にも簡素なものにとどめる。
・ 和解契約書の内容の一部を標準化・定型化し、標準化・定型化されたものはそれと異なる条項を用いないようにする。また、将来の請求権や現在の慰謝料請求権などが清算条項により消滅しないような条項を作成する。
○総括基準・和解事例の公表
・ 中間指針の細目に当たる紛争解決の基準や、中間指針から漏れた事項についての紛争解決の基準を定める総括基準を14本策定・公表した。
・ 2012年4月27日以降、和解理由書12本、和解契約書183本を公表した。

3.課題解決に向けた取組

○人員拡充と審理簡素化の徹底
・ 未済件数を減少させるためには人員の更なる拡充と審理簡素化の徹底を図ることが求められる。
○東京電力に対する適切な対応の要請
・ 紛争解決センターに申し立てをしたという理由で東京電力に直接請求での賠償を拒否されるなどの不当な対応等の苦情があった場合には、東京電力に指摘をして適切な対応を促している。
・ 和解手続は当事者の対立構造を前提にする訴訟モデルではなく、共通の目標である紛争の迅速かつ公平・適正な解決に向けて工夫しあう協調的紛争解決モデルを志向している。
・ 損害算定分野における東京電力の考え方には、貸借対照表や損益計算書から導き出される数値が優先するという傾向が見られるが、紛争解決センターはこのような考え方に賛成できない。被害の実態を踏まえ、賠償法理に基づいて適正な損害算定を行っていく。
○集団申立事件の迅速処理化
・ いくつかの代表案件を選定し、代表案件で適用された考え方を適用することを前提に当事者間の直接交渉に委ねるなどの工夫をして迅速な審理を目指していく。(チャンピオン方式)
○弁護士等代理人の理解と協力の要請
・ 紛争解決センターは弁護士等法律専門家が代理人となる案件においては事実、証拠、法的根拠等の適切な整理を求めるとともに紛争解決センターの現状と審理方針への理解が得られるよう引き続き協力を求めていく。
・ 申立人や申立代理人の準備不足や主張又は証拠資料の提出の遅れにより審理が遅延する事件も絶えないことから、申立人や被申立人には協力をお願いする。

原子力損害賠償紛争解決センター活動状況報告書はこちら

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(紛争解決センターが策定した総括基準)
原子力損害賠償紛争解決センターは、これまでも総括基準を公表してきましたが、2012年9月以降に追加した2つの総括基準はどのような内容ですか?
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  • 風評被害による減収分(逸失利益)について、平均利益率32%を利用して損害額の算定をすることを東京電力が許容しているときには、紛争解決センターにおいては平均利益率32%を用いて損害額の算定がなされます。
  • 東京電力から答弁書が提出された段階で、各損害項目について、当事者間に争いがないと認められる金額については、速やかに、一部和解案の提示が行われます。

【A2.の解説】

紛争解決センターでは、申し立てられた案件の多くに共通する論点があることから、一貫性のある和解案を作成して申立人間の公平を確保するため、中間指針を踏まえ個別の和解仲介事件に適用するべき「総括基準」を策定しています。
 この総括基準の公表により、他に同様な損害を被っている人にも賠償の可能性や範囲を知ってもらうことのほか、同一基準に基づく和解案提示の促進や、被害者と東京電力との円滑な相対交渉を促進することで、多数の賠償手続の処理に寄与することが期待されています。

 今回ご案内する以前の総括基準としては、初回の2012年2月14日~2012年8月24日までの間に、以下の12項目が公表されています。
 ①避難者の第2期の慰謝料
 ②精神的損害の増額事由等
 ③自主的避難を実行した者がいる場合の細目
 ④避難等対象区域内の財物損害の賠償時期
 ⑤訪日外国人を相手にする事業の風評被害等
 ⑥弁護士費用
 ⑦営業損害算定の際の本件事故がなければ得られたであろう収入額の認定方法
 ⑧営業損害・就労不能損害算定の際の中間収入の非控除
 ⑨加害者による審理の不当遅延と遅延損害金
 ⑩直接請求における東京電力からの回答金額の取扱い
 ⑪旧緊急時避難準備区域の滞在者慰謝料等
 ⑫観光業の風評被害
(なお、これらの総括基準の概要については、当協会のウェブサイトをご参照願います。)

 2012年9月以降に新たに公表された2つの総括基準の概要は以下の通りです。

<総括基準>

⑬減収分(逸失利益)の算定と利益率について(2012年11月8日公表)
 中間指針第7(いわゆる風評被害について)の1(一般的基準)又は第7の4(製造業、サービス業等の風評被害)に基づく風評被害による減収分(逸失利益)について、中小企業実態基本調査に基づく平均利益率32%を利用して損害額の算定をすることを東京電力が許容しているときには、紛争解決センターにおいては平均利益率32%を用いて損害額の算定をするものとする。
(理由)
 紛争解決センターの和解仲介手続において、被害者と東京電力との間の和解交渉(直接請求)において東京電力が許容している損害算定方法に平均利益率32%を使うことを全面的に認めることにより、賠償問題の解決システムの円滑な運用を迅速に進められる。(実際の利益率がこれを上回ることの挙証がなされる場合はこの限りではない。)

⑭早期一部仮払いの実施について(2012年12月21日公表)
 紛争解決センターによる申立て書に対する東京電力からの答弁書が提出された段階で、必ずしも各損害項目のすべてについて合意がなくとも、各項目別に見て当事者間に争いがないと認められる金額については、速やかに、一部和解案の提示を行うものとする。
(理由)
 損害賠償の早期支払の実現は、被害者の早期救済に資するので、和解仲介手続きの序盤の答弁書提出時点において、争いのないことが判明した金額については、速やかに、一部和解案の提示を行う。

総括基準本文はこちら

○ 原産協会メールマガジン2009年3月号~2012年10月号に掲載されたQ&A方式による原子力損害賠償制度の解説、「シリーズ『あなたに知ってもらいたい原賠制度』」を冊子にまとめました。

最新版の冊子「あなたに知ってもらいたい原賠制度2012年版(A4版324頁、2012年12月発行)」をご希望の方は、有料[当協会会員1,000円、非会員2,000円(消費税・送料込み)]にて頒布しておりますので、(1)必要部数、(2)送付先、(3)請求書宛名、(4)ご連絡先をEメールでgenbai@jaif.or.jpへ、もしくはFAXで03-6812-7110へお送りください。

『あなたに知ってもらいたい原賠制度2013年度版』

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