世界原子力大学・夏季研修(WNU-SI)報告会

2018年10月23日

「国際チームマネージメントの学び」 「世界に跨るヒューマン・ネットワークを獲得」「若手による海外への発信」

2018年世界原子力大学・夏季研修(WNU-SI)の報告会が10月17日(水)、原産協会で開催されました。同研修は韓国の釜山・慶州で6月26日から8月3日までの約6週間行われ、26か国から59名(男性:女性=65%:35%、女性の参加率は過去最高)、平均年齢33歳の若手原子力技術者や行政官、規制関係者などが参加しました。日本からは、原産協会の「向坊隆記念国際人育成事業」の助成を受けた4名のほか、原子力規制庁が1名の若手を独自に派遣し、計5名の参加となりました。

研修ではプロゼスキー世界原子力発電事業者協会(WANO)CEOなど、世界の原子力業界を代表するリーダーや講師による講義・講演のほか、小グループに分かれてのグループワークで、ディスカッション、ケーススタディー、プレゼンテーション、講義のレビューが行われました。第4週目には、原子力関係機関・施設へのテクニカル・ツアーが実施され、韓国電力公社国際原子力大学院(KINGS)、韓国原子力研究院(KAERI)、韓電原子力燃料(KNF)、廃棄物処理施設(KORAD)、新古里原子力発電所建設サイト等を訪問しました。

報告会を開催
10月17日に原産協会で開かれた参加報告会では、助成を受けた4名と、原子力規制庁からの参加者が報告を行いました。

東芝エネルギーシステムズの田中豪氏は、研修を通じて、ファシリテート力、巻き込み力、傾聴力、俯瞰力、吸収力が必要な国際チームマネージメントを学ぶことができ、WNU-SIは日本の原子力の海外アピールの場として有効で積極的に利用されるべきと語りました。また、海外市場ではカーボンフリーのソリューションとして原子力以外に再生可能エネルギーも含めた総合的な提案が求められるとし、研修で得られた経験とネットワークを生かし、多角的な提案ができるよう研鑽を積んでいきたいと抱負を述べました。

関西電力の津田慧氏は、グループワークで、限られた時間の中で何かを実施するようなストレス環境下においても、チームで戦略を共有し、コミュニケーションを確実にとりながら任務を遂行することが重要であることを学んだと述べました。とりわけ、コミュニケーションの姿勢として、実際の業務において、自己理解したうえで相手との認識の差を埋める意識と行動を心掛けていることや、海外の研修生(フェロー)たちの働き方を議論したことをきっかけに、帰国後、社内の業務効率化・社員のモチベーション向上のために業務スタイル改善案を提案していることをその事例とともに紹介しました。

日立GEニュークリア・エナジーの朴辰雨氏は、普段の業務では会うことがない多様なバックグラウンドをもつフェローとのネットワーク形成や、若手が会うことはなかなか叶わない原子力産業界のリーダー層から講義を聴講でき、貴重な経験であったと述べました。原子力を取り巻く最新動向への理解とフェローたちとの意見交換により、業務上や自社の課題解決にむけたモチベーションが向上し、得られたネットワークを最大限に活かしていきたいと述べました。また、韓国や中国の原子力プレイヤーの活躍がグローバル市場で躍進する中、日本の原子力産業界も協力・連携を強めていくことが必要ではないかと語りました。

東京電力ホールディングスの原大輔氏は、WNU-SI参加を通じて印象に残るものとして、韓国水力原子力(KHNP)による原子力発電所を中心とした街作りや海外原子力戦略の本気度を掲げたほか、福島第一原発事故に関して、フェローたちが事故の重要イベント(炉心損傷、ベント、建屋水素爆発)の情報把握にとどまり、福島第一、第二原子力発電所における震災時の事故対応が殆ど知られていないことへの懸念を述べ、関連する英訳版報告書のURLを紹介したと述べました。また、フェローの間でBWRプラントが知られておらず、このままではBWR技術が失われる危機感から自身に出来ることを探すなど、今後は、日本の代表という意識をもち、日本の原子力の情報を世界に正確に発信できるように、自己研鑽に励みたいとの意欲を示しました。

原子力規制庁の菅原氏は、原子力推進のポジションからの講義が多かったことや、KHNPの社員が多数登壇し、韓国の原子力産業の好景気ぶりのアピールが強かった印象があり、日本の原子力産業界からのアピールを期待したいが、テクニカル・ツアーを通じて、日本の技術的アドバンテージと将来性についての懸念を感じたと述べました。

参加者には共通して、異なる文化を持つ土地と人と6週間もの交流で得たものは大きな財産であり、原子力産業を取り巻く状況は厳しさを増す中、研修で得た知識や人脈を業務で活かし、日々の自己研鑽や後継の育成に励みながら日本の原子力の発展に貢献していきたい、という強い使命感がありました。

当協会は今後も本事業を継続して実施し、原子力産業界を牽引する若手の人材育成に尽力していきます。

お問い合わせ先:人材育成部 TEL:03-6256-9315(直通)