2019年世界原子力大学・夏季研修(WNU-SI)に参加して

2019年10月24日

ハードスキルよりソフトスキルの磨き!

チーム・マネジメントの学び!

原子力に対する明るい勢い!

国内外のネットワークづくり!

2019年世界原子力大学・夏季研修(WNU-SI)の報告会が10月16日(水)、原産協会で開催されました。同研修はルーマニアのブカレスト(3週間)、スイスのバーデン(2週間)で6月23日~7月27日までの5週間行われ、39か国から82名の若手原子力関係者が参加しました。日本からは、原産協会の「向坊隆記念国際人育成事業」の助成を受けた4名のほか、原子力規制庁が1名の若手を独自に派遣し、計5名の参加となりました。
2019年世界原子力大学・夏季研修(WNU-SI)の報告会が10月16日(水)、原産協会で開催されました。同研修はルーマニアのブカレスト(3週間)、スイスのバーデン(2週間)で6月23日~7月27日までの5週間行われ、39か国から82名の若手原子力関係者が参加しました。日本からは、原産協会の「向坊隆記念国際人育成事業」の助成を受けた4名のほか、原子力規制庁が1名の若手を独自に派遣し、計5名の参加となりました。

研修では、世界の原子力業界を代表するリーダーによる講義のほか、ポスターセッション、小グループに分かれてのグループワークで、ケーススタディー、講義のレビューが行われるとともに、講義中にとどまらず休憩中でも活発なQ&Aが繰り広げられました。テクニカルツアーは、ルーマニアでは、チェルナボーダー発電所、燃料製造工場、TRIGA試験施設、ホットラボを視察し、スイスでは、ゲスゲン原子力発電所の他、パウルシュラー研究所、欧州で放射性廃棄物処分をリードするNAGRA(放射性廃棄物管理共同組合)等を視察しました。

報告会を開催
10月16日に原産協会で開かれた参加報告会では、助成を受けた5名が報告を行いました。
各報告者からは、夏季研修の目的、スケジュール、講義内容、テクニカルツアー、各種イベントの紹介があり、その後、全体を通して各自の気づき点、印象深い点、次年度参加者へのアドバイス等がありました。

東芝エネルギーシステムズの市川博也氏は、講義が原子力産業を網羅する多面的な内容から構成されており、ハードスキルよりソフトスキルを多く学ぶ機会であったと述べました。コミュニケーションにおいては、“聞く”を得意とする日本人は発信することを意識することが大切であり、組織においては目的達成のための組織編制、役割分担のフォーメーションが肝心で、事故のパブリックミーティングを模した各ステークホルダーによるロールプレイを通じて体験した事例を紹介しました。また、各国の原子力に対する前向きな姿勢が印象的であったとのことでした。

関西電力の原達矢氏は、再エネと原子力の対立ではなく、共存・共栄の必要があること、元パイロットを講師とする講義では、意思決定時やストレス下におけるリーダーシップの取り方、チーム内コミュニケーションが重要であるという学びは大きなものであったと述べました。研修を通じて、欧米の気候変動に対する危機感の高さ、CO2排出量削減に向けた水素社会の可能性について考え、再エネと原子力が共存・共栄し得る、将来のエネルギーミックスに向けた技術革新に電気事業者として貢献していきたいと抱負を述べました。

 

 

日立GEニュークリア・エナジーの文野通尚氏は、研修全体の約30%を占める講義(原子力業界を代表するリーダーによる講義が10%、カリキュラム講義が21%)を分析し、リーダーシップ、各国の原子力の現状、各国の規制等を含む一般的な講義が多く、1日に最大6件の講義(多すぎる)があったと述べ、研修生主体のミニフォーラムの開催(例:エストニアの2030年以降のSMR新設プロジェクトの紹介)をより充実するべきと提唱しました。全体として、福島第一原子力発電所の事故と韓国のUAEプロジェクトへの言及が多く、CO2削減を重要視し、また、SMRに興味を持つ国や参加者が多かったこと、発言能力やプレゼン能力が高い人材が集まっており、単純に技術的な議論を行う場ではないとの印象を受けたと述べました。

三菱重工業の松永尚子氏からは、主に、夏季研修全体の2割を占めるテクニカルツアーについて紹介がありました。業務上ほとんど機会がない、他国施設を見学できる貴重な経験であったとともに、ワーキンググループを通じて、各自が責任を持って役割を遂行し、相互理解を進めることが重要であると再認識するに至ったと述べました。印象深い点として、過去の夏季研修参加者が様々な立場で今年の研修に登場したことが紹介されました。次回の日本開催にむけて研修の認知度をあげ、幅広い分野の若手人材、女性の参加を積極的に呼びかけることを提唱しました。

 

東京電力ホールディングスの湯淺雄一郎氏からは、研修中に開催される交流イベントについて、例えば、業務に関する情報交換、コミュニケーションスキルの向上を目的としたポスターセッションや、充実した各種ネットワーキングイベント(ソーシャルイベント、地域文化交流)が紹介されました。研修を通じて印象としては、日本と世界ではエネルギー事情が異なるため課題も大きく異なることや、放射性物質漏洩事象のケーススタディーを実施する中で、想定範囲内の事象であれば当事者(発電所職員)は毅然とした態度で、合理的かつ分かりやすい方法で公衆に対して説明を行うことが求められること、また、外国の研修生は、福島事故後の日本の状況について関心は高く、既に多くの情報を見聞しており、様々なチャンネルで最新の状況を伝えることが重要であることを学んだと述べました。

報告者は共通して、異なる立場や考え方を持つ他国からの研修生や講師陣との5週間もの交流で得たものは大きな財産であり、研修を通じて培った知識、経験、人脈を業務で活かし、日々の自己研鑽に励みながら、日本の原子力の発展に貢献していきたい、とする気概に溢れていました。

当協会は今後も本事業を継続して実施し、リーダーシップを発揮して原子力産業界を牽引する若手の人材育成に尽力していきます。

お問い合わせ先:人材育成部 TEL:03-6256-9315(直通)