量子放射線利用普及連絡協議会第30回会合を開催しました
量子放射線利用普及連絡協議会(注1)では、2019年11月21日(木)に、東京の虎ノ門琴平タワー大会議室にて第30回会合を行い、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の三宅康博氏より、「身近な素粒子ミュオンを用いた研究~文理融合の試み~」という演題で、宇宙線ミュオンの利用やJ-PARCミュオン施設MUSEでの文理融合研究を含む様々な研究動向についてご講演をいただきました。
今回の講演では、ミュオンのその高い透過能を生かした浅間山の火山内部構造、福島第一原子力発電所の原子炉圧力容器内燃料溶融状況、ピラミッド内部構造などを透視可視化する宇宙線ミュオンによるラジオグラフィの事例を挙げていただくとともに、ミュオンによる半導体ソフトエラー(半導体デバイスのビット情報反転)加速試験研究を含む、J-PARCのミュオン施設および様々な研究内容(高温超電導体の結晶磁性情報、リチウム電池のLiの拡散測定、生きた細胞をまるごと観る顕微鏡)もご紹介いただきました。さらに、文理融合の試みとして、小判、丁銀、銅鐸、杏葉(馬具の装飾品)といった考古学資料・文化財の非破壊検査について、分析結果とともにご紹介いただきました。その際、「分析により文化財に潜在する物質史の情報を読み出すことができるので、分析は物質と科学者とのコミュニケーションツールである」という中井泉先生のお言葉を引用されました。
講演後は、X線と比較した場合のミュオンの特徴やミュオン源産業化の可能性などについて質疑応答があり、勝村座長が「加速器は高価な装置であるが、一般の方に利点が伝わっていない。ミュオンを用いることで、貴重な考古学資料に対して非破壊で奥の深いところまで見ることができる。このような加速器の利点を、一般の方に広く伝える必要がある」と所感を述べたほか、活発な意見交換が行われました。
量子放射線利用普及連絡協議会では、今後も放射線利用に関する最新の話題、知見についてテーマとして取上げ、放射線利用の普及、理解促進に寄与する活動を行ってまいります。
(注1)量子放射線利用普及連絡協議会とは
放射線利用について関係者が問題意識、情報を共有し、協力、協働してそれぞれが戦略的に事業に取組み、より効果的に普及活動を展開させることを目的に2006年に設置されました。構成員は放射線照射企業、各地域組織、教育関係者等です。
お問い合わせ先:人材育成部 TEL:03-6256-9315(直通)