第62回IAEA総会への参加(ブース展示およびIAEA   幹部との懇談)(2018.09.17~21)

2018年10月3日

原産協会は、2018年9月17日(月)~21日(金)の期間、オーストリア・ウィーン市のVienna International Centre(VIC)で開催された国際原子力機関(IAEA) の第62回総会にオブザーバー参加するとともに、政府および民間関係機関と連携協力のもとでの日本ブース展示をとりまとめ、わが国の原子力についてアピールを行いました。また同期間中、IAEA幹部との会談を積極的に行い、日本の原子力の状況についての発信に努め、総会や展示の合間には、サイドイベントへの出席や他国の参加者との交流を通じて情報収集を行いました。

日本ブース全体概要

参加機関

・公式参加8機関:内閣府、日本原子力産業協会、東芝エネルギーシステムズ、日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工業、東京電力ホールディングス、量子科学技術研究開発機構、日本原子力研究開発機構

・部分参加4機関:外務省、文部科学省、経済産業省、国際廃炉研究開発機構

基本テーマとねらい

過去3年同様、基本テーマを「Life, Safety and Prosperity」とし、総会参加の各国の外交官や原子力・科学技術関係者、IAEA職員等に対し「日本は人々のくらしと安全を守り繁栄のために原子力の平和利用を進める」ということを訴求するため、原子力発電技術や放射線分野含む研究開発など、多くの機関が提供した多様性に富む日本の原子力をめぐる最新状況をアピールしました。

ブースデザインと展示内容

① ブーススペース・位置
 昨年同様、日本ブースでのオープニングセレモニーの実施とさらなる集客を期待し、ブース会場中心に近く、人通りが多い場所に位置する「幅4m×奥行き3m」のブーススペースを選択しました。

② 展示内容

《2D/3D映像放映》
・「福島第一廃炉の進捗、福島復興の現状」(経済産業省、東京電力ホールディングス)
・「島根原子力発電所3号機3Dツアー」(日立GEニュークリア・エナジー)
・「ATMEA1の先進設計」(三菱重工業/ATMEA)

《模型展示物》
・「溶融燃料落下挙動」(日本原子力研究開発機構)
・「重粒子線がん治療装置 回転ガントリー」(量子科学技術研究開発機構)

《その他》
・各機関からのパンフレット、ノベルティ等

③ 環境への配慮

今年も「Green Exhibition」促進のため、紙資料やノベルティの配布は必要最低限とし、特設ウェブサイト(*)を設け日本ブース資料をダウンロード可能としました。また、特設ウェブサイト周知のためにビジネスカードを作成し、現地で配布しました。

*URL: https://www.jaif.or.jp/IAEA2018/

来訪者

展示ブースへの来訪者数は延べ800名となり、主な来訪者は、松山政司 科学技術政策担当大臣(日本政府代表)、岡芳明 原子力委員長、ほか主要原子力発電国や新規導入国、その他開発途上国の各国代表団、IAEA職員・コンサルタント・専門家等でした。(天野之弥 IAEA 事務局長は、療養中のためIAEA総会を欠席。)

展示オープニングセレモニー(展示初日)

昨年の実施経験と反省点を踏まえ、また当日の午前中に総会への参加者に開催案内チラシを配布した結果、約100名の参加者を集めることができ、大盛況でした。今年も松山科学技術大臣が来賓としてスピーチし、原子力技術が人々の暮らしを豊かにする潜在力は極めて大きいと強調した上で、今回の日本ブースには、原子力に関する多様な内容が展示されていることに触れながら、「我が国は今後も原子力の平和利用推進のためIAEAとの協力を進めていきたい」と述べました。

毎年日本ブースでは福島県産品を提供しており、今回も昨年同様に、当協会の高橋理事長が挨拶に立ち、展示会の成功を祈念して福島県産の日本酒で乾杯を行いました。

IAEA幹部との懇談概要

IAEA総会期間中、高橋理事長はIAEA幹部との懇談を精力的に行いました。一連の懇談の中で、原産側からは最近の動きとして、エネ基改訂、再稼働の状況、福島第一の状況、ATENAの設立、プル利用基本方針改定、世論調査結果などについて簡単に紹介、質疑応答を行いました。今回の懇談では特に、IAEAの日本人職員が少ない(全体における2.8%)ことを話題に意見交換しました。

レンティッホ原子力安全・セキュリティ局担当事務局次長

レンティッホ次長は、福島第一発電所の処理水(低濃度トリチウム水)への対応や今年10月から試験的に導入される新検査制度(ROP)について関心を示したほか、IAEAのポストへの日本人応募数が極めて少ない点を指摘しました。IAEAでは男女職員数のバランスを取る努力をしており、日本人(特に女性)からの放射線防護やコミュニケーションといった分野への応募を期待すると述べました。

チュダコフ原子力エネルギー局担当事務局次長

チュダコフ次長からも、IAEAの日本人正規職員数が少ない要因の一つとして「言語の障壁」や、日本企業から職員は短期派遣が多く、長期のIAEA勤務を希望しても企業側の理解とバックアップといったシステムがない点も指摘されましたが、60歳定年を迎えた有能な人なら65歳定年であるIAEAに勤務してくれるようIAEA側としては促したいとのことや、今後は、毎年日本で開催されているNEM School等の人材育成イベントでIAEA勤務について紹介してもらいたいなど、日本に対する期待が示されました。

また、IAEA原子力エネルギー局では、六ヶ所再処理施設の動向に常に注目していることや、この夏に発足した自主的安全向上の取り組みを担う新組織(ATENA)にも期待しているとの発言がありました。

以上

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