ATOMEXPO-2017参加および原子炉科学技術研究所(RIAR)視察報告(2017.6.19~21)
6月19日(月)~21日(水)、ロシアROSATOM 社主催によりモスクワで開催された第9回ATOMEXPO2017に当協会の服部特任フェローが参加しました。また、ATOMEXPO2017参加に併せて、ディミトロフグラードの原子炉科学技術研究所(RIAR)を視察しました。
1.ATOMEXPO2017参加
ATOMEXPOは2009年以来毎年開催され、今回は第9回目に当たり、海外64カ国から6500人を超える参加者や、33カ国から政府代表の参加がありました。また海外から多くの機関のブース展示がありました。
今回のATOMEXPOのテーマは大きく別けて4本の柱(①原子力の現状と将来見通し、②原子力の競争力確保のための革新的技術(デジタル技術)の適用、③地球環境問題と原子力の役割、④原子力人材の育成)からなり、様々なセッションを組み合わせてこれらのテーマについて議論が行なわれました。
初日に開催されたプレナリーセッションでは、キリエンコ大統領府第一副長官(前ROSATOM総裁)から歓迎の挨拶があり、A.リハチョフROSATOM総裁、A.リーシングWNA事務局長、W.マグウッドOECD/NEA事務局長等の原子力界のリーダー10名からスピーチが行なわれました。パネリストからは、エネルギーセキュリティーの確保と地球温暖化対策の観点から原子力の必要性を主張する意見が多く聞かれた一方で、再生可能エネルギーの技術革新、価格低下(補助金考慮)による競争力向上と原子力に対する国民意見の厳しさから、原子力の将来について厳しい声もありました。
プレナリーセッション以外の個別セッションは4つの会場を使って並行セッションで進められました。「原子力産業界の持続的発展のためのライフサイクルに於ける革新的技術解決策」、「原子力は将来のエネルギーか、はたまた過去の遺物か?」、「原子力技術の次なるステップ:デジタル化」等がテーマとして扱われ活発な議論が行われました。とりわけ注目されたセッションは、他産業では大々的に適用展開されているデジタル技術の原子力への適用による安全性の向上、効率的運用、サービスへの向上、などによる競争力の向上を目指すものでした。
会議と平行して行なわれた原子力関連企業による展示会では、中国、フランス、韓国、フィンランドほか16カ国から約50の企業がブースを出展していました。展示内容は一段とペーパーレスが進んでおり、最新の情報技術を使った対話型のものが多く、実物大模型やカットモデル等を展示するほか、バーチャル・リアリティで臨場感を持たせる等、参加者の関心を引く工夫が見られました。
2.RIAR視察
モスクワの南東約1000kmのディミトロフグラード市にある原子炉科学技術研究所(RIAR:Research Institute of Atomic Reactors)を視察しました。
RIARの設立は1956年、以下に示す6基の様々な型式の研究炉が広い敷地内に点在しています。入域時の人物確認のセキュリティチェックは極めて厳重でした。
・MIR.M1:チャンネル型、ベリリウム減速、高中性子束。VVER等種々の燃料の開発
(定常運転、過渡状態、LOCA、RIA、ランプ試験)を実施、異なる冷却材(加圧水、沸騰水、水蒸気、混合ガス)ループを有する。
・SM-3:圧力容器型水冷却炉 出力100Mwt 世界最高レベルの高中性子束。
燃料は高濃縮ウラン(90%)超ウラン元素(Am-241、Cm-243、Bk-249、Cf-252等)その他放射線源(Se-75、Co-60、Sr-89、Sn-113等)の製造
・VK-50:ロシアで唯一のパイロットBWR 出力200Mwt/50Mwe 1965~50年以上の運転実績、物理試験、熱水力試験、等を実施
・BOR‐60:ナトリウム冷却高速炉 出力60Mwt/12Mwe 1969年~ ナトリウム冷却の高速炉技術の開発、様々な材料の照射試験、新型燃料
(MOX、窒化燃料、酸化ウラン)の開発試験等を実施。原子炉で発生した熱は発電用と地域熱併給に利用。
・RBT‐6およびRBT-10/2:プール型原子炉 SM3の使用済み燃料を炉心に装荷、材料の照射試験、RI(I-131、Mo-99)の製造、シリコン・インゴットのドーピング
RIARの研究者/職員数は約3000名、上記原子炉とホットセルを使って、原子炉の特性試験研究、金属材料の照射および照射後試験(PIE)、ウラン、MOX(振動充填)窒化燃料等様々な燃料の開発、ラジオアイソトープ(RI)製造等を行っています。

ATOMEXPO 会場入り口

ATOMEXPO オープニング・セレモニー

ATOMEXPO プレナリーセッション

ATOMEXPO 展示会場の様子
お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)