首都圏大学生による『被災地とエネルギーを学ぶ旅』の開催
8月19日(水)から21日(金)の3日間、東北エネルギー懇談会(以下、東北エネ懇と記載)と一般社団法人日本原子力産業協会(原産協会)は、“協働”事業の一環として「被災地とエネルギーを学ぶ旅」を宮城県牡鹿郡女川町において開催し、首都圏の大学生および大学院生15名がこの“旅”に参加しました。
今回の“旅”では、普段、触れることの少ないエネルギー問題や環境問題、そして原子力発電所のことについて、少しでも関心を持って頂き、理解を深めていきながら、自分たちの問題として捉え、自分の考えを持ってもらおうとした見学・体験型の企画です。
“旅”の開催地である宮城県牡鹿郡女川町は、2011年3月11日に発生した東日本大震災(津波)によって甚大な被害を受けた太平洋に面した港町です。
参加者15名は、初日、集合場所であるJR仙台駅東口からバスに乗り込み、被害を受けた仙台市および石巻市を経て、女川町へと移動しました。途中、バスの車窓からは、津波から4年以上が経過しているため、町のあちらこちらが復興を遂げているところもあれば、震災当時のまま手付かずに残っているところもあり、案内をして頂いた女川マリンパルの組合長さんからも、当時の貴重な体験談などを伺うことができました。女川町の視察では、昼食を兼ねた「あがいんステーション」での“ほたての加工体験”や、かまぼこ工場「高政」の見学、“きぼうのかね商店街”を訪問しました。夕方からは、宿泊場所であるトレーラーハウス「エルファロ」において、現地女川の住民の方々から震災当時のお話しを伺い、各グループに分かれて意見交換・グループ発表を行いました。夜は住民の方々と一緒に食事をしながら交流会を開催し、いろいろなことについてお話をすることができました。
この“旅”におけるメインの企画は、震災当時に地域住民の避難所になった東北電力㈱女川原子力発電所の見学です。“旅”2日目の見学では、海抜29メートルにも達する防潮堤のかさ上げ工事、高台に設置された大容量電源装置など、今後の災害に備えた安全性向上の取り組みについて、発電所の方々から丁寧な説明を頂きました。この原子力発電所の見学を通じて、“旅”の参加者からは、『実際に現場へ行くことで、自分の目で確かめ、その雰囲気を感じることの重要性を強く実感しました。また、現場で働く方々からは、災害に備え、より安全・安心にエネルギーを供給したいという熱意が伝わってきました』、との感想が述べられていました。
発電所見学の後にはPRセンターにおいて、『君はどんなエネルギーを選ぶか』というテーマで各グループに分かれて意見交換し、発表を行いました。電気をつくるさまざまな方法についてメリットやデメリットを挙げながら、議論したことを各グループから発表し合うことで情報を共有しました。
3日目は、“旅”のもう1つのメイン企画である“女川町に住む子供たちとのふれあい交流”を行いました。女川町のカフェRIO(特定非営利活動法人「働く場づくりコナモーレW」)に地元の子供たちが集まり、エネルギーのベストミックスについて考える絵本「ミック」(東北エネ懇ホームページ:http://www.t-enecon.com/issue/book001/)の紙芝居、レモンを利用した電池による音の発生の実験、化学反応を利用したスーパーボール・スライムづくりなど、“旅”に参加の学生が先生役となり、地元の子供たち20数名と一緒になって野外でのエネルギー教室を楽しみました。一生懸命に勉強した後は、皆で一緒にバーベキューを食べました。
今回の“旅”の参加者には、参加してもらう前後においてアンケートに協力してもらいました。以下に、主な回答を記載します。
◎事前アンケート(主な回答)
①参加理由:先生や友人に勧められたから。女川に興味があった。などの回答が多かった
②女川町の状況について:全く知らなかった。少し知っていた。などの回答が多かった
③震災後、不安・心配なこと:放射線による身体への影響。食べ物の放射能汚染。地震・津波。原子力事故の再発。他
④エネルギー・原子力問題への関心度: どちらかといえば関心がある。とても関心がある。どちらともいえない。の順番で回答が多かった
⑤エネルギー・原子力に関する情報入手先:インターネット。テレビ・ラジオ。新聞。本(専門書)。大学のゼミ・授業。などの回答があった
◎事後アンケート(主な回答)
①参加しての感想:とてもよかった。よかった。 がほとんど
②女川に対しての理解について:とても深まった。深まった。 がほとんど
③印象に残ったこと:女川町の方との懇談。女川原子力発電所の見学。子供たちとのふれあい企画。女川町内の様子。グループディスカッション。など
④参加の後、エネルギー・原子力問題への関心度は変わったか?:これまでよりも関心を持つようになった。 がほとんど
⑤運営上の改善点:スケジュールが詰まりすぎなので、もう少し時間に余裕を持ちたい。
子供たちとのふれあい企画では、準備・予行や役割分担など、事前に打ち合わせの時間が必要だった。
⑥感想等:“旅”に参加できてよかった。被災者の方々にいろいろとお話しを伺えた。原子力発電所に行って、原子力についての考えが変わった。グループディスカッションでは自らが学ぶことができた。年代が近い学生同士で、次世代のエネルギーについて話ができてよかった。
今回の「被災地とエネルギーを学ぶ旅」に参加した学生からは、全般的にエネルギーや原子力問題について、『これまでよりも関心を持つようになった』との回答を多く頂きました。
原産協会では、今後も各地方関係組織との“協働”事業によって、都市部に住んでいる大学生に対して、原子力を含むエネルギー問題や環境問題全般に関する情報提供および理解促進のための活動を展開していこうと考えております。
以上
お問い合わせ先:地域交流部 TEL:03-6256-9314(直通)