ロシアの原子力開発と国際展開に関する講演会の開催(2012.3.9)

 当協会は3月9日、ロシア国営原子力企業ロスアトムの国際ビジネス部長アレクセイ・カリーニン氏を招き、ロシアの原子力開発と国際展開、およびルスアトム・オーバーシーズ(Rusatom Overseas)の活動に関する講演会を開催しました。

rusatom0326 冒頭、カリーニン氏は、「福島事故を受けた日本はあらゆる英知を結集してその困難を克服し、日本の原子力業界の将来も建て直していけるだろう。ロスアトムはそのための支援を惜しまない」と述べ、日露原子力協定の発効も間近に控えていることから、一層の協力の実現にむけて具体的に討議する時期にある、と述べました。

 講演では、ロスアトムの事業展開について説明し、同社が原子力業界において、事業分野のすべて(ウラン採掘、濃縮、燃料加工、発電、建設、使用済燃料処理、基礎研究、研究開発、砕氷船、核医学等)を網羅、統合する唯一の企業であり、顧客のニーズに沿った柔軟なサービス展開が可能であると紹介されました。

 現在、ロシア国内で9基を建設中ですが、福島事故後においても国内の建設計画に変更はなく、2030年までにさらに24基を建設する予定です。海外については21基のプロジェクトが進行中であり、入札中や交渉中の案件、今後の展望を含めるとおよそ80基を建設するという大規模な計画が紹介されました。建設されるのは、最新型のVVER-1000やVVER-1200といった第3世代+炉であり、現在のあらゆるロシア国内外、IAEAの安全基準に合致したものであるとのことです。

 ロシア国内における大規模な原子力開発プロジェクト実施の実績により、自らに自信をつけ、原子力への理解を醸成するといった経験も活かしながら、安全性と信頼性のある原子力発電所の建設を積み重ね、海外顧客の信頼を得てグローバルなビジネス展開をはかっていきたい考えのようです。そして福島事故後、脱原発を決定または原子力開発から撤退した国もある中で、原子力発電の需要への影響は軽微との見方を示し、全体的に原子力の将来の見通しは明るく、特に、新興国、発展途上国における原子力開発の勢いは今後ますます強まる、と強調しました。

 こうした海外顧客の様々な要求に応えるために、ロスアトムは統合的なソリューションを用意しており、例えば、生産の現地化、地元の産業の技術能力開発、技術移転、人材開発、財政支援(融資)、法規制整備、パブリック・アクセプタンス等の分野であるとのことです。さらに、IAEAの新興国向け支援プログラムとの調整や、建設国において他国の企業との協力も実施しているとのことです。

 ロスアトムは、発電所建設だけでなく、すべての領域でグローバル化をめざしていくとしています。統合ソリューションを機能的、効率的に実施するために、カリーニン氏がその代表を務めるルスアトム・オーバーシーズ(Rusatom Overseas)が設立されています。今後、全世界にそのオフィスを展開してマーケティング活動を行い、海外顧客のニーズに的確に応えていく考えです。

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)