【トルコ】服部理事長がトルコの北アナトリア地方代表に「日本の原子力発電」を紹介(2014.5.26)

5月26日午後、当協会の服部拓也理事長が、在日トルコ大使館からの依頼を受け、この日来日したトルコの「北アナトリア開発庁(KUZKA)」代表団に、「日本の原子力発電」を紹介しました。

トルコでは、ロシアとの協力で開始したアックユでの第一原発計画(120万kW×4基)に続き、シノップで日仏土協力で第二原発計画(110万kW×4基)の準備を進めています。
KUZKAはこのシノップを含む「北アナトリア地方」の経済振興促進のための組織で、今回の代表団はシノップ県のキョシュガー知事を団長に、隣接2県の知事、またシノップ市長、域内商工会議所幹部等26名で構成され、「投資促進」や「電力確保と環境保全の両立」等について日本の関連機関・施設を訪問し、理解を深めることが目的でした。
とくに団員の多くの関心は「原子力発電と地元の共生、また環境保全」とのことでした。

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 冒頭、キョシュガー団長は、「シノップ原発プロジェクトは、北アナトリア経済全体に大きな影響を与える。経済効果以外にも日本から得られることも多い。一方福島原発事故からトルコの世論は原発の安全性に懐疑的になっている。今回の日本訪問で、原発で地域がどのように変わり、なにがもたらされるのかを学びたい」と挨拶をしました。

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中央は団長のY.キョシュガー・シノップ県知事。KUZKAの理事会議長でもある

 服部理事長は、日本にとってのエネルギー確保の重要性、原子力発電開発の歴史、福島原発事故の概要・影響また今後の取り組み、国際社会への日本の責務を紹介しました。とくに福島での自戒も込めて、1)安全文化での人材育成、2)住民の理解獲得での「決定プロセスへの関係者の透明性の高い参加」、の重要性を訴えました。

キョシュガー団長からは、津波対策、福島第一原発での汚染水の現状と対策、住民の帰還状況、また原発新規導入国にとっての放射性廃棄物や使用済核燃料の処理・処分の選択肢等関連の質問がありました。

他の団員から、「福島原発事故で、これまで日本が原子力発電から享受した利益を上回る損害を受けてはいないか?」との質問があり、服部理事長は、「原子力はリスクがあっても利用する価値のある人類共通の財産。リスクを最小限にするために世界の英知を結集して使いこなすことがわれわれの使命だと思う」と答えました。

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講演中の服部理事長(左端)

 「シノップの原発プロジェクトの可否は住民投票で決めるべきではないか?」との問いかけもありました。服部理事長は、「住民投票が住民の声を一番正当に代表するかどうかは、その国や社会の制度や文化の成熟度で異なるから、当事者間で決めるべきで外部の人間が自分達の価値感で干渉すべきではない。投票で重要事項を決定するのは、個人的嫌悪と国・経済の長期的リスク・メリットの比較ができる程度の知識や判断力がないとポピュリズムに陥る危険もある。争点単純化の際に抜け落ちた条件が、将来の深刻な問題になることもあるので要注意」と答えました。

団長から「自治体は原発プロジェクトにどう備えるべきか?」との質問があり、理事長は、「自治体の運営では、万一の事故や将来の廃炉等を仮定すれば、原発全面依存は避けることが望ましく、持続的発展ができる産業の育成が必要。計画から運転までを15年、運転期間を60年、低レベル廃棄物の減衰期間を300年とすれば、原子力発電では100年オーダーの取り組みの覚悟が必要」と回答しました。

代表団は約1週間日本に滞在し、発電所、化学工場、エコロジー施設、重電機工場の視察の後、関西新空港から韓国に向かうとのことでした。

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