WANO隔年総会で服部理事長が講演(2013.5.20~21)

当協会の服部理事長は5月下旬、モスクワで開催された世界原子力発電事業者協会(WANO)の隔年総会に参加し、福島での事故の原因・教訓そして原子力の将来に向けた課題について講演しました。

総会は5月20日、21日の2日間、世界各国から約800名の方が参加し、天野 IAEA事務局長、ラコスト前仏国原子力規制庁(ASN)長官、ロマノフ・ ロスエネルゴアトムCEO、八木電気事業連合会会長、服部理事長他が講演を行いました。

[服部理事長の講演概要]

  • 人類に「生きることの意味」を問いかけていると言われた、印象派画家の巨匠ポール・ゴーギャンの晩年の大作「我々は何処から来たのか、我々は何者だ、我々は何処へ行くのか」を引き合いにした。
  • 福島第一原子力発電所事故を経験した今、我々がなすべきことは何か?何よりもまず、事故の根本原因を明らかにし、事故の教訓を引き出す必要がある。我々が今後も原子力を利用していくのであれば、原子力技術を本当に管理できるのか、安全に管理するために何が必要かを、改めて我々自身に問いかける必要があるのではないか。
  • 同発電所事故の要因は、組織の構成員に想像力の欠如、原子力発電所を運転する事業者として常に「問いかける姿勢」が十分でなかった。さらには、初期トラブルを克服し、安定的な運転が可能となった頃から、知らず知らずのうちに、「規制の要求事項を守ることが安全を確保すること」と考えるようになり、結果として、安全性向上のために不断の努力を続けることを怠ってしまった。
  • 過去の事故の教訓は、1979年3月のTMI事故:安全確保の「ヒューマンファクター」、1986年4月のチェルノブイル事故:運転管理に責任を持つ組織の「安全文化」の重要性であった。そこで、福島第一発電所事故の教訓は、「緊急時対応」であると考える。
  • 「緊急時対応」とは、以下の4つであり、いずれも管理(マネジメント)システムの問題である。①設計基準を超えるような事態に至った際の「設計の頑健性」、②設計基準を超えるような事態に至った際のアクシデントマネジメントを含めた「緊急時対応」、③緊急時に至った際の内部への情報連絡と外部への情報発信を含めた「情報伝達」、④設計基準内に留まらずそれを超えた事態まで想いを巡らせる「安全文化」
  • 安全確保の第一義的責任は事業者にある。原子力発電という技術を取り扱う以上、単に規制上の要求を満たすに止まらず、「想像力を巡らせて、必要な準備を整えておく責任があり、その責任を果たすことの出来る事業者は、原子力を取り扱う資格がある」ことを強調したい。
  • 緊急時に備えて準備すべきこととしては、以下3点を挙げる。①頑健なハードウエア(即ち頑健に設計された設備)、②柔軟なソフトウエア(即ち状況の変化に柔軟に対応することができるように準備された管理システム、即ち、組織・体制や手順書など)、③このように準備されたハードウエアとソフトウエアを、高い安全文化を持って使いこなす、優れた能力を有する人(私はこれをヒューマンウェアと呼ぶ)。

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講演の様子

0625wano41地元メディアからインタビューを受ける服部理事長

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)