[諸外国における原子力発電開発の動向] 主なできごと (2000年3月中旬〜5月中旬) |
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BNFL、ABBの原子力部門の買収を完了−原子力産業界の再編、世界規模的に展開英国原子燃料会社(BNFL)は5月2日、4億8500万米ドルにのぼるABB社の原子力事業部門の買収手続きを完了したと発表した。今回買収された原子力事業部門の経営は、すでにBNFLの傘下にあるウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニー(W社)の一部として統合される。BNFLは99年12月29日、ABB社の原子力事業部門を買収することに合意、その後買収の手続きは順調に進み、このほど、全ての手続きが完了したもの。W社によると、両社の業務の実体的な統合までにはさらに18カ月程度を要する見込み。 W社に経営が統合されるABB社原子力事業部門は、米国のコネチカット州ウィンザーを拠点とするABBコンバッション・エンジニアリング(ABB-CE)社、スウェーデンのバステラスを拠点とするBWRメーカーであるABBアトム社の他、フランス、ドイツ、韓国、中国等の拠点を含む世界全体をカバーする原子力企業グループからなり、全体を総括する世界本部機能をABB-CE社が、欧州本部機能をABBアトム社が受け持っていた。部門全体での従業員は約3000名、99年の売上は約6億米ドル。 ABB社は99年春、フランスのアルストム社との合併(ABB社50%、アルストム社50%)により、原子力を除くABB社の発電部門とアルストム社のエネルギー部門を統合した電力サービス会社のABBアルストム・パワー社を設立したが、今年3月31日、ABBアルストム・パワー社の全株式を12億5000万ユーロでアルストム社に売却することに合意。BNFLへの原子力事業部門の売却とあわせ、ABB社は発電部門から完全に撤退した。同社は今後、情報技術(IT)、電子ビジネス等の新しい産業分野を事業の基軸とする。 一方W社は、PWRメーカーである旧ウェスチングハウス社の原子力事業部門をBNFLが99年3月に買収して発足、ペンシルベニア州モンロービルに拠点を置き、BNFLの100%子会社であるBNFLニュークリア・サービス社により運営されている。 組織統合により誕生した新組織は、W社、ABB社が世界各国で個別に展開してきた原子力事業を引き継ぎ、旧ABB社の製品ラインもそのまま維持される。また、韓国等でABB社が実施しているプロジェクトに対しても新組織が引き続き受け持つ。しかし、統合後の組織の合理化により、新組織の総従業員9300名のうち、5%以下の雇用が今後余剰となる見込みである。 W社の新組織は以下の通り(敬称略)。
なお、W社前原子力サービス事業本部長のS.Tritch氏と旧ABB社原子力事業部長のM. Barnoski氏が、ABB社原子力事業部門のW社への統合作業を統括する。 W社は5月5日、ABB社原子力事業部門統合後初の具体的合理化として、米国ミズリー州ヘマタイトにある旧ABB-CE社所有の軽水炉用燃料製造施設(PWR/BWR用:設備容量450tHM/年)を今後18カ月で閉鎖し、米国内の核燃料事業をサウスカロライナ州コロンビアにあるW社の既存の燃料製造施設(PWR用:設備容量1150tHM/年)に統合すると発表した。ヘマタイト施設は商業用核燃料市場の中で占める役割は比較的小さく、コロンビア施設との事業統合による余剰設備の整理のため、閉鎖が決まったもの。 新規プラントの建設が低迷するなかで、原子力産業界では世界的な再編が進展、フランスのフラマトム社とドイツのシーメンス社が99年末に合弁会社設立による原子力事業の統合を決定するなど、幾つかの世界規模の巨大グループへの集約の動きが顕著になっている。BNFLによるABB社の原子力事業部門の買収もそうした動きの中で出てきた。 |