[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2000年3月中旬〜5月中旬)

[中 国]

高速実験炉の建設、承認へ

中国核工業集団公司(CNNC)の李忠良・副総経理は4月26日、東京で開催された日本原子力産業会議の年次大会で、中国初の高速実験炉(CEFR、6万5000kW)の建設が5月にも承認されると表明した。同炉は早ければ承認の1ヵ月後の6月に着工され、2005年には初臨界に達する見通し。

CEFRの設計は、所有者である中国原子能科学研究院(CIAE)が担当、建設サイトも同研究院の敷地が決まっている。すでに同炉の概念設計は92年に完了しており、97年には旧国家科学技術委員会が予備設計を承認した。

このほか同副総経理は、中国初の高温ガス炉(HTR、1万kW)も年内に初臨界に達する見通しであると発表。すでに、同炉は95年6月から清華大学で設計・建設が始まっており、97年末に原子炉建屋のトップドーム据え付けが完了。その後、98年末までに原子炉圧力容器、蒸気発生器、熱除去系の設置が完了し、99年には炉心が設置されている。今後は、残りの機器の据え付けとサブ・システムの試運転が予定されており、年内には初臨界に達成する見通し。


[台 湾]

総統選後の原子力政策をめぐる動き

5月20日に就任を控えた陳水扁・次期総統は、龍門にある第4原子力発電所(ABWR、135万kW)の建設に関連した原子力発電の推進計画を見直す可能性が出てきた。行政院で原子力発電計画を担当する経済部が中心となって、第4発電所の建設続行の可否を問う委員会を設立して検討する。

台北市の北東約40kmに位置する同発電所は99年3月、行政院原子能委員会(AEC)より認可を受け、すでに建設工事の進捗率が30%ほどに達しており、建設中止になれば損失総額は1000億台湾ドル以上になる見通し。

このため、陳・次期総統は同発電所の建設の可否について言明を避け、同委員会の議論を見守るなど方向性を示さない方針である。


[パキスタン]

チャシュマ原子力発電所が初臨界

パキスタン2番目の原子力発電所であるチャシュマ発電所(PWR、32万5000kW)は5月3日、初臨界に達した。同発電所は99年11月25日に燃料装荷を開始していた。今後数週間以内に送電網に接続される予定である。

同発電所の建設は、92年2月のパキスタン原子力委員会(PAEC)と当時の中国核工業総公司(CNNC)との間で取り交わされた原子炉供給協定に基づき、93年8月に着工された。同原子炉はターンキー(完成品引き渡し)契約で供給された中国の秦山1号機(PWR、30万kW)の改良型。

なお、パキスタンで唯一運転中のカラチ原子力発電所(CANDU、13万7000kW)は、98年12月から99年11月前半まで、発電機の修理のため運転を停止していた。


[米 国]

FERC、ユニコム社とPECOエナジー社の合併を承認

連邦エネルギー規制委員会(FERC)は4月12日、ユニコム(UCM)社とPECOエナジー(PE)社の合併を全会一致で承認した。両社は合併後、新しくエクセロン社を設立する予定である。今回の合併は今後、原子力規制委員会(NRC)、証券取引委員会(SEC)、ペンシルベニア公益事業委員会(PUC)などの承認を必要としているが、すでに司法省による合併の調査を終了しており、独占禁止法上も問題ないとの承認を得ている。両社は99年9月23日、対等合併する意向を表明、同11月22日にはFERCに対し申請書を提出していた。

UCM社はコモンウェルス・エジソン(Com Ed)社の親会社であり、98年時点で総売上は70億米ドル、従業員数は1万5000人である。Com Ed社はイリノイ州北部一帯の約340万の顧客に電力を供給しており、約940万kWの原子力発電設備(5サイト10基)を所有している。

PE社は電力・ガス会社であり、99年時点で総売上は54億米ドル、従業員数は6500人である。同社はフィラデルフィア近郊の150万の顧客に電力を、40万以上の顧客にガスをそれぞれ供給している。なお、PE社は英国のブリティッシュ・エナジー(BE)社との間で、米国での原子力発電所の買収を目的に、折半出資で合弁企業のアメージェン社を97年9月に設立した。

米大統領、核廃棄物政策修正法案に対し拒否権を行使

クリントン大統領は4月25日、上下両院を通過した核廃棄物政策修正法案に対し拒否権を行使、同修正法案は上院に差し戻された。

大統領は2001年にユッカマウンテンを高レベル廃棄物(使用済み燃料)の処分場として勧告すべきかの判断を下すにあたって、同法案が国民の理解促進やプログラムの進展に貢献するとは思われないと理由を説明した。また大統領は、環境庁(EPA)が放射線基準を制定する権限に制約を加えていることも同法案に拒否権を行使した理由になっていると指摘した。

なお、5月2日には、大統領の拒否権を覆すか否かの票決が上院本会議で行われたが、拒否権を覆すのに必要な66票に2票届かなかった。

NRC、原子力発電所運転会社による7基の運転代行を承認

米原子力規制委員会(NRC)は5月15日、ニュークリア・マネージメント社(NMC)から申請があった7基の原子力発電所の代行運転を承認した。米中西部を供給基盤とする@アライアント・エネジー社の子会社であるIESユーティリティーズ(IES)社、Aノーザンステイツ・パワー(NSP)社、Bウィスコンシン・エレクトリック・パワー(WEP)社、Cウィスコンシン・パブリック・サービス(WPSC)社−−の4電力会社は99年2月、原子力発電所の運転管理を共同で行う目的でNMCを設立、NRCに対し7基の原子力発電所の運転認可移転を申請していた。

7基の原子力発電所は、WEP社が所有するポイントビーチ1、2号機(PWR2基、50万9000kW)、NSP社が所有するプレーリー・アイランド1、2号機(PWR2基、56万kW)とモンティセロ原子力発電所(BWR、56万9000kW)、WPSC社が所有するキウォーニ原子力発電所(PWR、56万3000kW)、IES社が所有するデュアン・アーノルド原子力発電所(BWR、56万5000kW)。

NIMO、ナインマイルポイント1、2号機の売却を入札へ

ナイアガラ・モホーク(NIMO)社は5月12日、ナインマイル1号機(BWR、61万4000kW、NIMO社100%所有)と2号機(BWR、114万kW、同41%所有)の売却契約を白紙撤回することでアメージェン社と合意した。一方、アメージェン社に18%の持分を売却することを同意していた同2号機の少数株主であるニューヨーク州電力・ガス公社(NYSEG)も、ニューヨーク州公益事業委員会(PSC)に対しこの売却撤回を申請、これをPSCが承認したことから、同1、2号機は再度競争入札にかけられることになった。

アメージェン社は99年6月24日、NIMO社との間で同1号機、NIMO社およびNYSEGとの間で同2号機の59%の買収で原則合意していた。同2号機は両社のほか、ロングアイランド電力公社が18%、ロチェスター・ガス&エレクトリック(RG&E)社が14%、セントラル・ハドソン・ガス&エレクトリック社が9%をそれぞれ所有しているが、これら3社は今回の交渉には参加していなかった。

エンタジー社と提携を結んでいるRG&E社は当初より、NIMO社とアメージェン社の昨年の合意に対し、同2号機の買収の優先権を主張しており、同機の売却手続きが行き詰まっていた。


[英 国]

BNFL、マグノックス炉の閉鎖計画を発表

BNFL社は5月23日、所有する8ヵ所の発電所の閉鎖計画を明らかにした。それによると、ブラッドウェル、コールダーホール、チャペルクロス、ダンジネス、ヒンクリーポイント、サイズウェルAの6ヵ所の発電所を2010年までに閉鎖。残るオールドベリー発電所とウィルファ発電所については、新燃料のマグロックス燃料の開発を前提に、それぞれ、2013年、2016/2021年まで運転を継続する。なお、BNFLは昨年12月、ブラッドウェル発電所を2002年に閉鎖する計画を発表している。

マグノックス炉は旧型のガス冷却炉で、50年代から60年代にかけて運転を開始した初期の原子力発電所。1998年の1月にマグノックス・エレクトリック社がBNFLに吸収合併された際、BNFLに引き継がれた。残る同国の8発電所(改良型ガス冷却炉等)は、すべてBE社(ブリティッシュ・エナジー社、1996年に民営化された)の所有である。

閉鎖計画が決定したことにより、スプリングスフィールドのマグノックス燃料製造施設は2010年までに閉鎖される。同様にセラフィールドのマグノックス再処理施設(B205)は、マグノックス燃料の再処理が終了した時点で閉鎖される。2012年以降となる見通し。B205はマグノックス炉からの燃料再処理を目的として1964年に建設された。それ以外の燃料再処理はすべて、セラフィールドのTHORPで再処理されている。

なお開発が進められているマグロックス燃料は、短期間の再処理が必要なマグネシウム被覆のマグノックス金属燃料と異なり、改良型ガス冷却炉(AGR)で使用されている燃料と同様のセラミック酸化ウラン燃料であり、被覆にもステンレスが採用されている。マグロックス燃料が導入されれば、BNFLは他のAGR燃料と同様に使用済みマグロックス燃料をTHORPで再処理できるだけでなく、長期貯蔵も可能となる。マグロックス燃料の導入に関する決定は2003年頃に下されるが、正式に採用が決まれば、オールドベリー、ウィルファの2ヵ所の発電所は2010年以降も運転を継続することになる。


[フランス]

HLW地下研究所、花崗岩サイト選定について

放射性廃棄物管理庁(ANDRA)は、昨夏に着工した粘土層のビュールに続き、花崗岩層の地下研究所開設にむけてサイト選定作業を行っている。国立地質庁の協力を得て、ANDRAはこれまでに全国15カ所の候補地を仮選定しており、今後は地元の同意を得た上で現地の事前調査を行う予定である。

その第一歩として、3人の賢人で構成される視察団(ミッション)が今春、数カ所の候補地を訪問した。しかし、住民の合意形成が比較的、スムーズに進んだ東部のビュールと異なり、各地で地下研究所建設反対を唱えるデモや抗議行動が繰り広げられた。一行が最初に訪問した西部マイエンヌ県では3月7日、反対住民に外部の環境団体も加わり、一行を県境まで押し戻す一幕もあった。また、西部の観光地ブルターニュでは、伝統的に中央政府への反発気質もあり、1万人に上る大規模な抗議活動が行われた。

こうした結果を受けて、ANDRAは仮候補地への訪問を一時中止し、近く予定される地方議会選挙までは事態を静観する方針を固めた。地下研究所は、高レベル放射性廃棄物(HLW)処理処分の研究開発を行うための施設で、将来は最終処分場となる可能性もある。1991年に策定された廃棄物法では、国内の最低2カ所に地下研究所を建設し、2006年までに研究成果をまとめることがANDRAに課せられている。(5月上旬)

ルブレイエ2号機が運転再開

原子力施設安全局(DSIN)は5月2日、昨年12月27日に冠水して以来、運転を停止していたルブレイエ2号機(PWR、95万1000kW)の運転再開を認可した。同発電所では昨年末、暴風雨で氾濫したジロンド川の水がサイトの堤防を越え、1、2号機の内部が冠水し、主要な安全系が損害を受けた。このため、DSINはフランス電力公社(EDF)に対して洪水対策の見直しと安全措置が完了するまで、同発電所の運転を許可しない方針だったが、EDFが同機の修復作業を完了したことを受けて、許可されたもの。なお、同1号機は4月上旬、燃料集合体の配置に問題が見つかり、運転再開は延期となった。

同事故の評価については、ビロー議員が4月6日、科学技術選択肢評価室に事故評価報告書を提出した。その中で、同議員は事故を重大としながらも、深刻な事象に発展するおそれは全くなかったと断言すると同時に、今後の対応としていくつかの勧告を示した。特に、事故直後のEDFの情報公表が遅れたことが一因となり、EDFと安全当局に対して反原子力団体が非難を強めている点をふまえて、各発電所が事実情報を迅速に公表することと、EDF本社が事実の分析のため関係者間で相互連絡を行うことを明確に区別するよう求めた。このほか、@フランス国内の全原子力発電所において洪水災害におけるリスクの再評価を行い、その結果を公表することA原子力発電所内部の区画や扉、ポンプなどの防水性能を高めることB外部と所内をつなぐ道が洪水で遮断され、運転員の交代ができなかったことから、今後は緊急時の勤務管理体制を強化することC発電所が立地する県知事は、緊急計画を発令する必要条件について再検討するとともに、地方情報委員会がより積極的な役割を担うこと――を勧告している。


[ドイツ]

ABBアルストム・パワー社、再編へ

ABB社とアルストム社は3月31日、折半出資の合弁会社であるABBアルストム・パワー社の株式のうち、ABB社の持分をアルストム社が12億5000万ユーロ(約1280億円)で買取ることで合意した。これにより、アルストム社が同社の100%株主となり、買収手続きが終わり次第、アルストム・パワー社に社名変更する。新会社のトップには、ABBアルストム・パワー社の社長兼CEOのC.ダーモン氏が就任する。これにより、ABB社は原子力事業部門のBNFLへの売却に続き、発電事業から完全に撤退することになり、今後は情報技術(IT)や建設技術、エネルギー供給、金融サービス事業を拡大する方針を示している。

ABBアルストム・パワー社は昨年6月、アルストム社とABB社が発電事業部門を統合して設立した合弁会社。発電事業部門では、同社のガス火力機器供給は米ゼネラル・エレクトリック、独シーメンスに次ぐ、世界第3位のシェアを占めていた。同社は今年3月、従業員の約2割に相当する1万人を解雇する合理化計画を発表したばかりだった。

2大企業の合併承認が難航

昨年の秋に相次いで発表されたVEBA社とVIAG社、RWE社とVEW(ウェストファーレン合同電力)社の2大合併計画を審査している欧州委員会(EC)独占禁止局とベルリンのカルテル庁は、今年6月に予定されている最終決定に先立ち、否定的な見解を明らかにしたことから、4社は早急な改善策を迫られる形となった。

合併によって誕生する電力会社は、2社でドイツの電力市場の発電と送電の80%を占めるとともに、2つの新会社はそれぞれ欧州第3位と4位の電力会社となる。こうしたことから当局は、合併が電力市場の自由化に逆行する動きとして承認に難色を示している。さらに、これら大手電力が地元のエネルギー供給会社や電力会社の株を所有していることも合併に否定的な姿勢を示す理由となっている。とくに、大手3電力が東西ドイツ統一後、旧東ドイツに設立された合同エネルギー(VEAG)社の株式のうち75%を独占していることを問題視している。(4月中旬)

コンセンサス協議、難航

脱原子力政策をめぐる連邦政府と産業界とのコンセンサス協議は、今年2月に再開したものの、まだ合意に達していない。シュレーダー首相は4月9日、新聞社の取材に答えて、議会の夏季休暇までに合意に至らない場合は、脱原子力法の制定により電力会社に原子力発電所の段階的廃止を迫る方針であることを明らかにした。これに対して、産業界はスウェーデンのバーセベック1号機の早期閉鎖を引き合いに出し、満額補償なしの立法措置は憲法違反であるとの姿勢を崩していない。

コンセンサス協議の中で、原子力発電所の運転寿命を一律の年数ではなく、全発電所による総発電電力量の累積として定め、枠内で調整する考え方も具体化している。VEBA社のCEOであるハルトマン氏は4月17日、話合いは建設的としながらも、いかなる計算方法であっても、30年間の運転寿命を前提とする政府の主張は受け入れられないとの考え方を表明している。また、88年以来、休止中のミュルハイムケールリッヒ原子力発電所を抱えるRWEエネルギー社は、総発電電力量換算による運転寿命を設定する場合は、同機を計算に加えるよう主張しており、話し合いはますます混迷の度合いを増している。

ノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙、SPDが第1党に

ドイツ西部のノルトライン・ウェストファーレン州で5月14日、州議会選挙が行われ、シュレーダー首相率いる連邦政府与党の社会民主党(SPD)が第1党を維持した。得票率はSPDが約43%(前回46%)、キリスト教民主同盟(CDU)が37%(同37.7%)、自由民主党(FDP)が約9%(同4%)、緑の党が約7%(同10%)で、投票率は57%だった。FDPは前回の選挙では得票率が5%に満たず、議席を逃したが、今回はSPDと連立政権を組む緑の党を上回る支持を得て、第3党に返り咲いた。CDUはコール前政権の政治献金疑惑を受けて、メルケル前環境大臣を初の女性党首として擁立、イメージ一新をはかったが、昨秋の州議会選挙で連勝したころの勢いは取り戻せなかった。献金疑惑を理由に従来のCDU支持者がFDP支持にまわったとも見られている。今回のFDPの躍進により、SPDは緑の党との連立を解消し、FDPと連立政権を組む可能性もでてきた。

同州はドイツの最大人口を抱え、商業都市、デュッセルドルフがある。運転中の原子力発電所はないが、アーハウス使用済み燃料中間貯蔵施設、ウラン濃縮工場など、操業中の原子力施設を抱えている。


[スイス]

使用済み燃料の集中中間貯蔵施設が開所

スイス北部のビュレンリンゲンにある中間貯蔵施設(ZWILAG)で4月27日、約120名の来賓出席のもと、開所式が行われた。同施設では、あらゆる種類の放射性廃棄物の中間貯蔵と低ベレル放射性廃棄物の焼却と前処理が行われる。原子力発電所を持つ電力会社によって運転・管理される同施設は、90年に計画が始まり、96年に着工、完成までに約4億5000万スイスフラン(約290億円)がかかった。6月には、ライプシュタット原子力発電所からの使用済み燃料が初めて搬入される予定。


[オランダ]

オランダ政府、ボルセラ発電所の早期閉鎖をなお検討

オランダ政府は4月上旬に発表した声明で、ボルセラ原子力発電所(PWR、48万1000kW)の早期閉鎖について、なるべく早期に結論を出し議会に報告する意向を明らかにした。国内で唯一運転中の原子力発電所である同機は、94年の議会決定により運転30年目となる2003年に閉鎖することが決まっている。しかし、同機を所有・運転するEPZ社は、電力市場の自由化の中で同機の競争力を高く評価しており、政府に対して早期閉鎖の撤回を求めている。こうしたEPZ職員らの訴えを受けて、最高裁判所も今年2月、運転継続を支持する判決を下している。


[スロバキア]

政府、モホフチェ3、4号機の建設費を手当てしない方針

スロバキア政府はこのほど、建設中のモホフチェ3、4号機の建設資金を供給しない方針であることを明らかにした。L.ハラッハ経済相は、両機の建設継続は経済的に見て非効率との経済省の報告書に従ったものと説明している。両機の密閉管理は今後5年間で1700万米ドルにも達する見込み。

政府としては外部資本を利用して完成させる方法もあるとしているが、これまでそうした動きは浮上していない。

一方スロバキア電力は、「両機の建設継続は雇用(同国の失業率は20%にも達している)を生むだけでなく、地球環境に影響を与えずに30億米ドル分の輸入電力を削減できる」と、政府の意向に難色を示している。(4月下旬)


[チェコ−イラン]

チェコ、ブシェール原子力発電所への機器供給を禁止

チェコ下院はこのほど、イランのブシェール原子力発電所への機器供給を禁止する特別措置法案を、国内企業への賠償条項を盛り込まないまま再可決した。

同法案はZVVS Milevsko社によるチェコ製の換気システムのブシェール発電所への供給を禁止するもので、3月に1度下院で可決したものを、同社に対する一部補償を要求して上院が下院に差し戻したもの。同機器供給に係るZVVS社の契約総額は2,850万米ドルと言われているが、下院は補償問題を検討せずに再可決した。(4月上旬)


[フィンランド]

ロビーサ原子力発電所サイト内の貯蔵所を拡張

Fortum社は4月18日、ロビーサ発電所サイト内の湿式貯蔵施設の第二次拡張作業を終了した。建設費用は4000万フィンランド・マルカ(約6億6,000万円)。

同国では1981年以来、国内の発電所で発生した使用済み燃料をロシアのチェリャビンスク再処理工場へ輸送していた。しかし1994年のフィンランド原子力法改正により、使用済み燃料の国外への輸送が禁止されたため、1996年12月を最後にロシアへの輸送は中止された。このため原子炉から取り出された燃料は、2020年頃とされる最終処分場の操業開始まで15年から20年の間、中間貯蔵施設で貯蔵される。

今回完成した湿式貯蔵施設は、Fortumエンジニアリング社の設計によるもので、使用済み燃料の搬入は今春から開始される。


[リトアニア]

国会がイグナリナ1号機の閉鎖法案を最終承認

リトアニア国会は5月2日、同国唯一の原子力発電所であるイグナリナ原子力発電所(150万kW2基、旧ソ連製軽水冷却黒鉛型炉:RBMK-1500)のうち、1号機を2005年に閉鎖する法案を正式に承認した。

同発電所の閉鎖については、欧州復興開発銀行(EBRD)と欧州委員会(EC)が閉鎖費用の拠出に合意しており、6月21・22日にビリニュスで開催が予定されている廃炉資金提供国会議で具体的な審議が行われる予定である。

旧ソ連型炉であるイグナリナ発電所については、欧州連合(EU)が安全性に対する強い懸念を示しており、閉鎖への支援並びにリトアニアのEU加盟交渉の開始と引き替えに、同国に対して閉鎖時期の決定を求めていた。これに対して、リトアニア政府は99年9月8日、1号機を2005年に閉鎖すること(2号機については閉鎖時期に関する議論を2004年以降に開始する)を決定、議会での審議が続けられていた。

リトアニアでは1999年、イグナリナ発電所で98.6億kWhを発電、全発電電力量に占める原子力のシェアは、フランスに次ぐ世界第2位の73.11%であった。


[南アフリカ]

PBMRの導入調査継続を内閣が承認

南アフリカ電力庁(ESKOM)によると、同国の内閣は4月12日、ESKOMに対してペブルベッド・モジュール炉(PBMR)の詳細なフィージビリティスタディを、4億3200万ランド(=約7000万米ドル)を投じて実施することを承認した。

ESKOMは、次世代の発電炉として小型の高温ガス炉の導入を検討しており、予備的なフィージビリティスタディの後、1998年にはドイツのHTR社(ABB社とシーメンス/KWU社の合弁)の開発したペブルベッド高温ガス炉(HTGR)技術と高効率密閉サイクル・ガスタービンとを組み合わせたPBMR発電所の建設計画を正式にスタート、環境影響評価(EIA)を進めてきた。

現在、PBMR計画はESKOMが資金を100%拠出して進めているが、ESKOMは最終的には出資比率を30%程度まで落とし、残りを外部出資者の参加により賄う予定としている。すでに、99年中に最初の外部出資者となる南アフリカのインダストリアル・ディベロップメント社が同計画に対して20%の出資を決めており、他にも内外のいくつかの企業が、ESKOMに対して参加を打診している。

当初の予定では、99年末にも政府により正式承認される見込みであったが、手続きが大幅に遅れており、ESKOMでは政府の承認に必要な詳細フィージビリティスタディとEIAの完了は2001年中頃になる見通しであるとしている。


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