[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年6月中旬〜7月中旬)
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[中 国]

原子力発電設備容量、2005年に870万kW

国家経済貿易委員会は6月28日、第10次国家経済発展5ヵ年計画期(2001〜2005年)に発電設備容量が3億9000万kWに達すると発表した。内訳は、火力発電が2億8600万kW、水力発電が9500万kW、原子力発電が870万kW、再生可能エネルギー(水力発電を除く)が120万kW。

2000年末現在、中国の総発電設備容量は3億1900万kW、発電量が1兆3700億kWhで、今後5年間、電力需要は年平均5%で増加、2005年の総発電電力量は1兆7500億kWh以上になる見通し。

中国は第9次5ヵ年計画(1996−2000)で進めている原子力発電所の建設プロジェクトの8基・683万kWを2005年までに完成させ、順次営業運転を開始する。(次頁表を参照)

中国の原子力発電所
2001年7月現在
名称出力
(万kW)
炉型式着 工
(年・月)
運転開始
(年・月)
所有者備考
広東・大亜湾-198.4PWR1987.81994.2広東核電投資公司/香港核電投資公司運転中
広東・大亜湾-298.4PWR1988.41994.5運転中
秦山I-130.0PWR1985.31994.4中国核工業集団公司運転中
広東・嶺澳-1100.0PWR1997.52002.7広東核電集団公司建設中
広東・嶺澳-2100.0PWR1997.122003.3建設中
秦山II-160.0PWR1996.62002.6中国核工業集団公司建設中
秦山II-260.0PWR1997.42003.6建設中
秦山III-170.0CANDU1998.62003.2建設中
秦山III-270.0CANDU1999.92003.11建設中
田湾-1100.0PWR (*)1999.102004.12建設中
田湾-2100.0PWR (*)2000.92005.12建設中
[広東・嶺澳-3][100]----建設中
[広東・嶺澳-4][100]----建設中
[三門-1][100]----建設中
[三門-2][100]----建設中
[海陽-1][100]-2003-国家電力公司/山東電力集団公司/中国核工業集団公司 他建設中
[海陽-2][100]---建設中
[陽江-1][100]-20022009広東核電集団公司建設中
[陽江-2][100]---建設中
[陽江-3][100]---建設中
[陽江-4][100]---建設中
[陽江-5][100]---建設中
[陽江-6][100]---建設中
(* :VVER-1000)
注:計画中のものは、発電設備容量は決まっているが、基数・炉型は不明。

[台 湾]

行政院、第四原発建設問題で国民投票の実施をめざす

行政院(内閣)は、第四(龍門)原子力発電所の建設継続の是非を問う国民投票の実施を可能にする法案を立法院(議会)に提出した。

与党民進党の議員から、台湾経済が不安定な状況の中で同発電所の建設問題がこじれることは経済をさらに悪化させるとの慎重論も出ているため、国民投票は拘束力のない世論調査として実施されるという見方もある。また、立法院の過半数を占める最大野党の国民党も、政治的なかけ引きをしている状況にはないと、政府の動きを強く抑制している。

なお、今年4月に建設継続が決定した第四原子力発電所は、補償や工事日程などの協議が進まず工事再開が大幅に遅れている。このため当初予定されていた2004年7月の初号機の営業運転開始は1年以上遅れる見通し。(7月上旬)

[米 国]

国際協力で次世代原子力技術開発へ

エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は7月23日、第4世代国際フォーラム(Generation IV International Forum: GIF)の設立趣意書に米国を含む8カ国が正式に署名したと発表した。GIFは、次世代の原子炉と核燃料サイクル技術を2030年までに国際協力によって開発することをめざした国際グループで、米国のほか、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、フランス、日本、韓国、英国が署名した。当初からGIFの活動に参加していた南アフリカは、署名に加わらなかった。

GIFは、次世代の原子炉技術を開発するというブッシュ政権が打ち出した国家エネルギー政策の中に盛り込まれた勧告を支援する。GIFの参加国は、専門知識や施設などを共有しながら、次世代原子力技術の開発を行う。許認可から建設、運転を通じて、高い経済性と信頼性でエネルギーの供給が行えるような第4世代原子力システムを1つ以上開発することが最大の目的。

現在、GIF参加国は第4世代技術のロードマップを作成しており、2002年秋には完成の予定になっている。このロードマップは、GIFが行う研究活動の基礎となるもので、最も有望な技術を開発、導入する上で必要な研究内容が明らかにされる。GIFとしては、産業界や学会、政府、非政府機関などと、世界的な規模で幅広く協力していく意向を示している。

GIFの活動は、南アフリカを含む9カ国がワシントンで初めて会合をもった2000年1月にスタート。この場で、長期的なオプションとして第4世代原子力発電システムの調査を開始するという共同声明が発表された。2000年8月と今年3月に会合が開かれており、10月にもマイアミで会合が開催されることになっている。なお、GIFへの参加は、創立メンバー(国)の承認が得られれば可能。

グリーンスパン議長が原子力発電拡大に言及

連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン議長は、原子力発電利用の拡大を再考する時期に来ているかもしれないとの考えを表明した。シカゴの経済クラブで6月28日に行った講演の中で述べた。同議長は、原子力発電シェアが1973年の5%から昨年は約20%に上がってきたことに触れた上で、原子力発電所は安全性が向上し、温室効果ガスを排出しないという環境面での明らかな利点を持っていると指摘した。一方で、原子力発電を拡大するためには、使用済み燃料の処分問題の解決と経済性の一層の向上が必要との見解を示した。

グリーンスパン議長は、FRBとしてもエネルギー市場の動きと、それが家庭や事業に及ぼす影響を注意深く見守っていると述べた。カリフォルニア州の電力危機については、同州が国内総生産(GDP)の8分の1を占めているため、米国経済にとっても懸念材料であるとの見方を示した。

原子力技術者の所得が分野別で3位に

米専門技術者協会が行った給与・所得調査によると、原子力技術者が分野別の3位に入った。正社員として雇用されている技術者の昨年の給与・所得を調べたところ、原子力技術者の年収の中央値は10万2970ドルとなり、法医学技術者の14万3500ドル、石油技術者の11万4616ドルに次いで3位になった。今回の調査に回答した技術者8000名の年収の中央値は7万9000ドルだった。

[米国−フランス]

米仏、新型炉開発で合意

米国エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官とフランス原子力省(CEA)のコロンバニ長官は7月9日、革新的な原子炉と核燃料サイクルの共同開発に出資するための協力協定に調印した。今回の調印は、米国DOEが提唱する国際NERIプログラムの一環として結ばれたもので、両者はすでに昨年9月、新型原子炉の科学技術に関する二国間協定を締結し、協力枠組みを整えていた。

研究テーマは新型炉や改良型核燃料サイクルの開発のほか、放射性廃棄物を核変換するための加速器駆動システムや材料・燃料の照射技術など。予定では、今夏後半にも共同出資の研究チームが結成される。

エイブラハム長官は、今回の協定は両者が安全性、経済性、核拡散抵抗性に優れた原子力開発に対し積極的に投資する姿勢を示すものとして評価。この成果をもとに2030年をメドに第4世代の原子炉技術開発を加速させたいとの期待感を示した。

[カナダ]

休止中のブルースA3、4号機が運転再開へ

ブルース・パワー(BP)社は7月11日、現在休止中のブルースA発電所(1〜4号機:CANDU、各90.4万kW:96〜98年から休止中)の3、4号機の運転再開に向け、関係企業との間で契約を結んだと発表した。BP社では、社内のスタッフ約400名と契約を結んだ企業からのスタッフ約400名で「ブルースA運転再開チーム(Aチーム)」を組織して、作業を本格化する。

今回結成されたAチームは、アクレス・インターナショナル社、サージェント&ランディ社、E.S.フォックス社からなるカナダのエンジニアリング合弁企業が主契約者とプロジェクト・マネージャーを務める。また、RCMテクノロジー・カナダ社は運転再開に際して要求される環境保全面のエンジニアリング、調査、建設を担当。英国のナショナル・ニュークリア社はカナダ原子力公社(AECL)とキャンデスコ社と組んで運転再開計画の安全解析業務を行う。

BP社は英国のブリティッシュ・エナジー(BE)社のカナダ法人であるBEカナダ社(79.8%)、カナダのカメコ社(15%)、ブルース発電所の2労組(合わせて5.2%)がブルース発電所の運転のために設立した会社で、今年5月にカナダ原子力安全委員会(CNSC)から同発電所の運転認可の発給を受け、発電所を所有するオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社との間でリース契約締結を完了した。

BP社は当初から、ブルースA発電所のうち2基を運転再開する計画を持っていたが、調査の結果、技術的な実行可能性と経済性の面から3、4号機の運転再開を決定。2基の運転再開作業の経費は3億4,000万カナダドルで、2003年夏の運転開始を計画している。また、運転休止前の両機の設備利用率は87%であったが、BP社では運転再開後はこれを92%に引き上げたいとしている。

[フランス]

小児白血病と再処理工場の因果関係特定は困難

フランス核燃料公社(COGEMA)のラ・アーグ再処理工場と周辺住民の白血病の因果関係について調査していた政府任命の専門家チームは6月28日、同施設付近の狭い地域で小児白血病の発生率が平均より高いことについては統計学的に見て有意であると認めながらも、これを同施設から出る放射線と結びつけることはきわめて難しいとする調査結果を明らかにした。

今回の調査は、78年から98年にわたり同施設から半径35キロ以内に居住した25才未満の住民を対象に行われた。それによると、施設から半径35キロ以内の白血病の発生率は予想値の36.9件に対して38件とほぼ一致したが、半径10キロ以内では予想値の2.3件に対して5件という結果が出た。特に、5才から9才の小児では予想値の0.5件を大きく上回る3件が確認されたという。同チームを率いる疫学者のスピーラ氏は、考えられる原因として短期間に外部からの労働者がこの地域に入り、住民が混ざりあったためとする仮説を立てている。このため、今後は住民の出身地などを調べ、分析にあたる。同氏によると、英国のセラフィールド再処理工場や他の工業施設でも人口の混入と小児白血病の発生リスクとの相関関係を指摘する見方が出ているという。

コタンタン半島北部には、ラ・アーグ再処理工場をはじめ、ラマンシェ低レベル放射性廃棄物処分場、フラマンビル原子力発電所、シェルブール港の海軍原子力造船所があり、これら施設と白血病の因果関係をめぐる議論が97年に英国医学誌に掲載されたのをきっかけに起こった。このため、フランス政府は疫学調査をフランス国立衛生研究所のスピーラ氏、放射線生態学調査を原子力安全防護研究所(ISPN)のスジエ氏に依頼した。両調査チームはいずれも、ラ・アーグ再処理施設から出る放射線と地元でわずかに増加した小児白血病との間に有意な関係は見出せないとの結論を下したが、ボアネ環境相とジロー保健相は昨年8月、両チームに再調査を指示した。

ボワネ環境大臣、辞任

ボワネ環境大臣が7月10日、辞任した。今後は、緑の党の全国書記として来年の大統領選と総選挙を指揮する。同氏は、97年6月に発足したジョスパン内閣に緑の党から初入閣を果たし、スーパーフェニックス(FBR、124万kW)の閉鎖やルカルネ原子力発電所の計画中止など、同党の反原子力政策を国政に反映させた。同氏の後任は、同じく緑の党のコシュ氏。

[ドイツ]

原子力法改正案、ヒアリングへ

ドイツ連邦政府と大手電力4社が今年6月、原子力に関する取決めに正式署名したことを受けて、連邦環境原子炉安全省(BMU)のトリッティン大臣(緑の党)は合意事項を盛り込んだ原子力法改正案を連邦政府、産業界、環境団体などに配布した。この案をもとにBMUは8月6日、産業界からヒアリングを行う予定。

改正案は、原子力推進をうたった現行の原子力法を全面的に書き換え、運転中の原子力発電所を順次、閉鎖することを明記している。主な内容は、@原子力発電所の発電電力量の制限、A新規原子力発電所の建設および運転の禁止、B原子力発電所への定期的な安全点検の義務付け、C原子力事故時の損害賠償積立金を現在の10倍にあたる25億ユーロ(約2600億円)に増額、D放射性廃棄物処分を2005年7月以降、直接処分に限定(使用済み燃料の再処理の禁止)、E発電所サイト内の中間貯蔵施設確保の義務付け――など。

トリッティン環境相は、ヒアリングで異論が出ない場合、今秋にも閣議と連邦議会(下院)での審議を経て、早急に新原子力法を成立させたい意向。連邦政府は、今回の法改正には下院にあたる連邦参議院の承認は必要ないと主張しているが、上院で多数を占め脱原子力に反対する最大野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は上院での審議に持ち込む意向を強めている。

ハンブルク電力、会長とCEOが交代

ハンブルク電力(HEW)は6月28日の監査役会で、会長と最高経営責任者(CEO)の交代を発表した。それによると、ルンデ会長の後任には、HEWの筆頭株主であるスウェーデンのバッテンフォール社CEOのヨセフソン氏、CEOであるティム氏の後任には、HEWの取締役であるリュービッツ氏が、それぞれ就任する。現在、63才のティム氏は86年から同社の取締役を務め、95年から現職。

ドイツ北部のハンブルク市に本社を置くHEWは、4基の原子力発電所を所有している。HEWは当初、ハンブルク市営の電力会社としてスタートしたが、昨年10月にはバッテンフォール社がE.ONエネルギー社とシドクラフト社から37.2%の株式を買い取り、71.3%を所有する筆頭株主となった。

HEWとバッテンフォール社は昨年、E.ON社とRWE社が手放した旧東独の2大電力会社であるBEWAGとVEAGの株式を取得。両社は今後、より提携を強化し、米国ミラント社とともに新しい旧東独市場で事業を拡大する方針を表明している。

[スイス]

中間貯蔵施設に使用済み燃料が初搬入

スイス北部のビュレンリンゲンにある中間貯蔵施設(ZWILAG)に7月3日、使用済み燃料が初めて搬入された。使用済み燃料は、ライプシュタット原子力発電所からの97体で、135トンのキャスクを積んだトレーラーによって約2時間半をかけて同発電所から14キロ離れたZWILAGに運び込まれた。

原子力発電所を持つ電力会社によって運転・管理される同施設は、90年に計画が始まり、96年に着工、2000年4月には開所式が行われた。当初は同年6月にも初搬入の予定だったが、連邦政府の最終許可が得られず、実施が約1年遅れた。

同施設は、全種類の放射性廃棄物の中間貯蔵のほか、低・中レベル放射性廃棄物の焼却と前処理を行う。今後は、2年間に5回の使用済み燃料の受け入れと、今年末にフランス核燃料公社(COGEMA)で再処理されたガラス固化体の受け入れが予定されている。低・中レベル放射性廃棄物の焼却と前処理は、年内にも操業許可が出る見通し。

[スウェーデン]

世論調査で8割が原子力支持

スウェーデンで実施された最新の世論調査によると、8割が原子力発電を支持しているとの結果が出た。この調査はスウェーデンの世論調査機関TEMOが6月、スウェーデン原子力安全訓練センター(KSU)の委託で1000人を対象に実施したもの。運転中の11基の原子力発電所については、55%が「安全上の問題がない限り運転を継続すべき」と回答。24%が「古い炉を閉鎖して新規炉を建設すべき」と回答、約8割の人が原子力発電を支持している現状が浮き彫りになった。なお、昨年末の世論調査(市場調査機関Demoskop社が実施)では、77%が原子力発電所の運転継続を支持していた。

スウェーデン政府の脱原発政策を支持する人の割合は、わずか18%にとどまった。また前回の調査では女性の30%が脱原発政策を支持していたが、今回の調査では23%に下がった。

環境対策での最重要課題についての問いでは、71%が「CO2排出量の削減」、15%が「水力発電所建設の防止」と回答。「原子力発電所の全廃」と回答した人の割合はわずか10%だった。(7月4日)

[スウェーデン−フィンランド]

SKBとPOSIVA、HLW処分で協力協定

スウェーデン核燃料廃棄物管理会社(SKB)とフィンランドのPOSIVA社は6月29日、使用済み燃料処分分野で協力協定を締結した。両社は1980年代から協力関係にあるが、今回の協力協定は、共同プロジェクトの分野を深地層処分やキャニスタ等閉じ込め技術の研究開発にまで拡大したもの。協定期間は5年。

スウェーデンとフィンランドの使用済み燃料処分方法は、結晶岩層への深地層処分という点で一致している。今回の協力協定を締結したことでSKBとPOSIVA社は、共同プロジェクトや情報交換を通じて効率よく作業を進めることが可能になる。

フィンランド議会は5月18日、政府が2000年末に下した最終処分場建設に関する原則決定を圧倒的多数で承認。これによりPOSIVA社は最終処分場建設の前段階と位置付けられる地下研究施設(ONKALO)の建設が可能となった。岩盤の特性などを調査するONKALOは、2003〜2004年の間に建設を開始。実際の調査作業は2006年頃にスタートする予定で、最終処分場の建設・操業の認可申請はそれ以降になるとみられている。

これに対しスウェーデンでは、SKBが2000年11月16日、使用済み燃料の最終処分場建設候補地6地点の中からオスカーシャム、エスタマル、ティエルプの3地点を選定した。スウェーデン政府は今秋に、また候補地の地元自治体も年内に結論を出すとみられている。各地点での詳細な地質調査は2002年から開始される見込み。

[ハンガリー]

世論調査で原子力支持が過去最高

最新の世論調査によると、原子力発電を支持するハンガリー国民の割合が過去最高となった。これはハンガリーのTNS Modus社が実施したもので、同国唯一の原子力発電所であるパクシュ発電所(ロシア型PWRであるVVER-440型炉×4基)の運転継続に関し73%が運転継続を支持した。7割を超えたのは初めて。

「パクシュ発電所は安価な電力を供給している」とする回答は47.6%。今後20年間の原子力発電開発計画に関して、16.1%が原子力発電所の新規立地を支持した。29.5%が、パクシュ発電所の方針通りに少なくとも2025年まで運転期間を延長すべきと回答した。なお、「パクシュ発電所を早期に閉鎖し輸入電力に依存する」と回答した人の割合は9.4%にとどまった。(7月4日)

[欧 州]

欧州委が各電源の外部コスト試算−原子力が優位に

欧州委員会は7月20日、各電源の外部コストを比較した調査結果をまとめた。それによると、同じ電源でも国によってかなりバラツキがあるものの、平均でみると原子力発電は石炭や石油火力と比べると10分の1以下、天然ガス火力と比べても3分の1から6分の1の低い水準にあることが分かった。

現在、欧州連合(EU)の平均発電コストはkWhあたり4セント程度であるため、発電にともなう環境や人の健康に対する損害などの外部コスト(地球温暖化による外部コストは除外)を発電コストに含めると、石炭と石油火力の発電コストはほぼ倍に、またガス火力の発電コストも30%程度上昇する。

各電源別の外部コストを低い方と高い方の平均でみると、石炭と石油火力が高く、それぞれ4.1〜7.3セント、4.4〜7セントとなっている。原子力発電については5カ国平均で0.4セントとなっており、水力発電(0.4〜0.5セント)とほぼ同等。これより低いのは、風力発電だけで、0.1〜0.2セント。太陽光発電はドイツだけについて試算されており0.6セント。これは、ドイツの原子力発電の外部コスト(0.2セント)の3倍になっている。

 
各電源の外部コスト
(ユーロ・セント/kWh)
国名石炭/褐炭ピート石油ガス原子力バイオマス水力太陽光風力
オーストリア1−32−30.1
ベルギー4−151−20.5
デンマーク4−72−310.1
ドイツ3−65−81−20.230.60.05
フィンランド2−42−51
フランス7−108−112−40.311
ギリシャ5−83−510−0.810.25
アイルランド6−83−4
イタリア3−62−30.3
オランダ3−41−20.70.5
ノルウェー1−20.20.20−0.25
ポルトガル4−71−21−20.03
スペイン5−81−23−50.2
スウェーデン2−40.30−0.7
英国4−73−51−20.2510.15


欧州委・副委員長が原子力廃止政策を非難

欧州委員会のデパラシオ副委員長は7月はじめ、フランス国際関係研究所で行った講演の中で、原子力発電の段階的廃止政策を強い口調で非難した。エネルギー担当委員も務める同氏は、欧州での原子力廃止の動きについて、現実を無視した政治的なご都合主義だとの見解を示した上で、EU加盟国が統一したエネルギー政策を受け入れることが求められると主張した。

ドイツの連邦政府と電力会社4社が先ごろ、原子力発電の段階的廃止について正式に署名したことに触れたデパラシオ副委員長は、原子力発電によってEUの電力の35%が供給されており、年間3億トンの二酸化炭素の排出が抑制されていると指摘、代替電源はどうするのか、二酸化炭素の排出量が増加してもかまわないのかなどと語った。

[ロシア]

海外からの使用済み燃料受け入れ関連法案が成立

外国の使用済み燃料の中間貯蔵、再処理受託を目的とした関連3法案が7月11日、プーチン大統領の署名を経て成立した。

成立した法案は、使用済み燃料の国内への持込みを禁止している自然環境保護法第50条に例外措置を設ける改正、リースを含めた使用済み燃料の輸出入を民法上合法的な契約に限定する原子力法の改正、使用済み燃料の国際貿易によって得られる収入の使途を国内の環境保護対策や燃料サイクル関連インフラの整備などに充当することを定めた特別生態環境計画法の制定の3件。ロシアでは中間貯蔵および処分を目的とした外国(旧ソ連製原子炉が使われている国を除く)からの放射性廃棄物や放射性物質の国内への持ち込みが禁じられていたため、外国の使用済み燃料の商業再処理ができなかった。

同法案は下院で6月6日に採択された後、上院に送られたが、このうち自然環境保護法と原子力法の改正は予算措置を伴わないため、上院では議長の裁定により審議をせずに自動承認となり、特別生態環境計画法のみ審議が行われ、6月29日に賛成92、反対17、保留10で承認された。

ロシア原子力省(MINATOM)は、今後10〜20年間に、海外から使用済み燃料を最大2万トン程度受け入れることにより、少なくとも200億米ドルの収入が得られると試算している。

使用済み燃料輸入を審議する特別委設置へ

プーチン大統領は海外からの使用済み燃料受け入れ関連3法案への署名と同時に、使用済み燃料のロシアへの持込みについて具体的に審議する特別委員会の設置を指示。これに関連する原子力法の修正案を下院に提出した。修正案は同法64条に「海外製照射済み燃料要素のロシア連邦領内への輸入に関する特別委員会」設置に関する条文を追加するもの。海外からの使用済み燃料のロシアへの持込みに際しては、この特別委員会の許可が必要になる。同委員会は委員長と20名の委員からなり、委員の構成は、大統領が指名する5名、連邦議会下院議員5名、同上院議員5名、内閣メンバー5名。上下両院の委員候補者の選出手続きはそれぞれ個別に両院が決める。

特別委員会は大統領令によって規定された業務・権限のもとで、使用済み燃料のロシアへの輸入の可否を審議するほか、輸入量についての報告書を毎年、大統領に提出する。

MINATOMのルミャンツェフ大臣は特別委員会の委員長として、ロアシ科学アカデミー副会長でノーベル賞受賞者のZ.アルフェロフ下院議員が指名されたことを明らかにした。また大臣は、現在のところロシアに使用済み燃料の再処理を依頼することを検討している国はいないが、これは長期的な事業であり、数年後には受注があるとの見通しを示すとともに、顧客が現れるまでの期間を利用して受け入れ施設の安全性向上の作業に集中的に取り組むことを表明した。

[南アフリカ]

PBMR実証炉のサイト候補地にペリンダバが追加

南アフリカ環境問題・観光省は6月末、国営電力会社Eskom社が開発を進めているペブルベッド・モジュール高温ガス炉(PBMR)の実証炉建設に伴う環境影響評価(EIA)のサイト候補の対象として、ケープ州クバーグの他にノースウェスト州ペリンダバを加えるように同社に通告した。

Eskom社の子会社でPBMR計画の事業主体となっているPBMR社は、実証炉の建設場所として、土地の確保や高圧送電網等のインフラの整備状況を考慮して、ケープ州にある同社のクバーグ発電所(PWR、96.5万kW 2基)サイトに絞ってEIAを実施している。また、実証炉向けの燃料の製造については、南アフリカ原子力会社(NECSA)のペリンダバ研究所にあるBEVA施設(クバーグ発電所向け燃料形成加工施設で、1995年に閉鎖)の建物を利用して、新しいラインを設置する計画で、すでに設計契約を、ドイツのニューケム・ニュークリア社と英国原子燃料会社(BNFL)、そして南アフリカのエンジニアリング・マネージメント・サービス社(EMS)の3社からなる国際コンソーシアムに発注している。

PBMR社は、ペリンダバで製造した燃料をクバーグの発電所まで陸上輸送することにしているが、これに対して、EIAを審査する環境問題・観光省は、燃料の長距離輸送を不要にする観点から、実証炉をペリンダバに建設することも検討する必要があるとして、クバーグと並行して同様の調査を行うよう求めたもの。PBMR社は通告を受け、両候補地の環境影響を比較できるように、クバーグと同じ基準を用いてペリンダバのEIA作業を開始したが、PBMR計画全体に若干の遅れが生じる可能性があるとしている。

PBMR社は、2003年までにクバーグ・サイトでの実証炉建設に着手し、3年間で完成、1年間の試運転を経て商業運転を開始したいとしている。


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