原子力に関する自他の態度・ 取組みを変えることを目指して

原子力委員会委員長
近 藤 駿 介
社団法人は、社員の集合体であって、社員総会を意思決定機関とし、その決定する目的・組織・意思をもつ法人であり、社員総会の委任を受けて理事がこれに係る業務を執行するものです。これを踏まえると、本協会の特色は、我が国において原子力に直接関係している法人のほとんどに加えて、原子力に関係の深い地方公共団体及びこれらの地域に関係の深いマスメディアも社員になっていることにあります。そのことは、わが国のエネルギー問題における原子力利用の重要性に鑑み、国民的立場に立った原子力利用を旨とする産業界の総意に基づき、原子力に関して総合的な調査研究、知識の交流、意見の調整統一をはかるとともに、政府に協力して原子力の平和利用を促進するという、この組織の目的によく現れていると思います。而して、経営学の泰斗P. F. ドラッカーは、非営利・非政府組織には具体的な行動に翻訳できる明確で単純な目的がなければならないこと、既存のこうした組織の目的の共通項は「人間を変える」ことであることを指摘しています。小生はこのことを念頭に、新組織は「原子力に関する自他の態度・取組みを変える」ことを目指すものと理解し、おつきあいさせていただくことを楽しみにしています。
ところで、再び、P. F. ドラッカーに頼れば、この組織において理事はいわばオーケストラの指揮者であり、そこに集う各種の専門家をして社員から実現を委託された目的を達成することに効果的に貢献できるよう演奏させる責任を有しています。言い換えれば、指揮者が演奏家つまり、専門家の知識と技術をいかに活かすべきかを決める、あるいは個々の専門家のあげるべき成果に対する期待を明確に表現した目標を中心にこの組織を組織し、期待と成果についての体系的なフィードバック機構を整備する必要があります。一方、組織の構成員には、全員、自分が組織に貢献するために必要な情報がなんであるか、この観点から自分の情報を必要としているのは誰か、それはどのような情報か、逆に自分は誰の情報を必要としているかを自問すること、つまり、専門家として草の根から世界に至るまでデータとしての情報を集めるのは当然ですが、組織の全体像を把握し、全体に焦点を当て、他の人間に対する情報責任の重要性を深く認識していることが、組織の使命達成の観点から必須のこととして求められます。
原子力委員会は、原子力基本法に規定された国民の負託を遂行する観点から、この国の構成員の一員として毎日この自問自答を繰り返しています。新法人の事務局の皆様が理事の皆様の指揮のもと「原子力に関する自他の態度・取組みを変える」力強い演奏を奏でられ、時々は私どもの活動にもご提言やご批判をいただけることを期待しております。
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