[JAIF] 原産創立50周年・原産協会発足を記念して −各界からのメッセージ− 1956-2006 |
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ソフトパワーとしての役割を
米国をはじめ海外の原子力開発が低迷しつつあったときに、「日本は原産会議がしっかりしているから違う」と羨ましがられた。半世紀に及ぶ我が国の原子力開発において、日本原子力産業協会の前身である原産会議が果たしてきた役割はまことに大きいものがある。 国連でのアイゼンハワー大統領の「Atoms for Peace」演説後50年に当たる2003年には、過去の総括とともに今後の50年に向けての展望が米国では盛んだった。筆者もその議論に招かれたことがある。そんな企画の裏には、これまでの進め方をそのまま踏襲するのではなく、これを機に何か新たな方向性を見いだしたいとの米国政府や関係者の意気込みがあったようで、常に新たな展開を志向するその姿勢が、私には心地よい刺激だった。 原産会議が協会として再出発するに至った背景には、同じような狙いがあるものと期待している。地球規模のエネルギー問題を展望すると、原子力抜きではその解決は覚束無いようである。そんな観点から、非核兵器国である日本の原子力計画の帰趨を世界中の国が注目している。安全で安心できる原子力利用を核兵器国以上にできることを実証してみせれば、その影響は計り知れないものがあり、協会には、その意味で、国内ばかりでなく海外に向けた情報発信をお願いできればと希う。 ハーバード大学のナイ教授は、米国は、軍事超大国としてではなく、もっとも進んだ民主主義や多様な文化、価値観を誇る国として振る舞うべきだとし、ハードパワーにかわるソフトパワーの効用を提唱している。同様に、原子力も、核エネルギーという物理的ハードパワーよりも、それを使いこなす上で求められる、民主的仕組みや安全文化などの人の知恵、すなわちソフトパワーをもとに、世界的にそれが普及していく途を追求すべきと、米国での会議で筆者は訴えた。そのような人の知恵を発揮する場として協会は打って付けである。ナイ教授は、また、NGOやNPOなどの台頭はまさに米国的社会の所産だとし、そのソフトパワーとしての役割の有用性を指摘している。日本原子力産業協会への社会の期待が大きいと私が考える理由は、その指摘とも大いに関連がある。 協会のこれからのご発展を祈念して已まない。 |