「第22回日台原子力安全セミナー・第20回日華原子力連絡会議」
開催概要報告

平成19年12月10日
(社)日本原子力産業協会


関西原子力懇談会と共催して11月14−16日、福井県で開催

 日本原子力産業協会(今井敬会長、服部拓也理事長)は、当協会の地方組織である関西原子力懇談会(森本浩志会長)との共催により、「第22回日台原子力安全セミナー・第20回日華原子力連絡会議」を、11月14日(水)から16日(金)までの3日間、福井県の嶺南地区で開催しました。合同開催は初めてです。14日は関西電力(株)を訪問し、15日と16日は敦賀市の(財)若狭湾エネルギー研究センターにおいてセミナー(同センターの施設見学を含む)を行いました。なお、当協会は、協会内に日台セミナー準備委員会(委員長:森本浩志・関西電力(株)副社長)を設置して準備を進めました。


(財)若狭湾エネルギー研究センター

開会挨拶を行う森本日台セミナー準備委員長


台湾から原子能委員会、台湾電力、核能研究所等の専門家20名が来日

 台湾からは、台湾原子能委員会の黄慶東副委員長を団長に、同委員会、台湾電力、核能研究所、核能科学技術協進会、清華大学から20名の代表団が来日し、日本側は、電力会社、メーカー、研究開発機関、大学等から約60名がセミナーに参加しました。
 セミナーの冒頭では、来賓として福井県安全環境部の筑後康雄部長から「住民の目に見える形で日台双方の専門家が安全対策等に関して議論することは非常に有益である」とのご挨拶を賜りました。
 この後、特別講演、代表者報告に続いて、原子力発電所の耐震問題、建設経験、安全文化、高経年化対策、情報の共有化、放射性廃棄物問題を巡る理解獲得活動など、昨今の原子力を巡る問題を取上げ、日台双方からの発表と活発な意見交換が行われ、大変有意義なセミナーとなりました。以下に、セミナーの概要を、台湾側の発表を中心に紹介します。


台湾代表団一行、関西電力大飯発電所PR館前にて


原子力発電所の設備利用率は80〜90%台維持、運転認可期間の延長が課題

 台湾の2006年の全発電電力量は2,351億kWh、そのうち原子力発電が17.0%を占めています。原子力発電所は、金山、国聖、馬鞍山の3ヶ所で合計6基、514万4,000kWが運転中で、龍門サイトで2基(ABWR)が建設中です。この龍門プロジェクトは、2007年9月時点で70%の工事進捗率です(1号機は2009年7月、2号機は翌2010年7月の運転開始を予定)。
 原子力発電所のユニット当たりの年間スクラム回数は1990年代の1〜2回から、2000年以降は1回未満(最近は0.5回以下)に減少し、また原子力発電所の設備利用率は2000年以降は大体80〜90%台を続けています。炉内流水の圧力、温度、流量などの測定精度の向上により1.5%程度の出力アップも計画しています。運転認可期間を現行の40年から60年に延長することも今後の課題です。

台湾の原子力発電所の運転実績

BWRとPWRの平均設備利用率

 重点活動として、低レベル廃棄物と使用済み燃料対策があり、低レベル廃棄物は蘭嶼(ランユ)島に97,960本、3ケ所の原子力発電所サイトに90,135本が貯蔵されており、最終処分場のサイト選定が進められていること、使用済み燃料は2,785トンが3ヶ所の原子力発電所サイトに貯蔵され、金山と国聖の両原子力発電所では、オンサイト貯蔵施設の計画が進んでいることなども報告されました。

2006年12月の恒春地震(M7)で教訓

 耐震問題のセッションでは、日本側から、今年7月16日に起きた柏崎刈羽原子力発電所における新潟県中越沖地震の影響と耐震設計について、台湾側から、2006年12月に起きた恒春地震(マグニチュード7)と馬鞍山原子力発電所への影響について発表がありました。台湾側からは、地震対応の再検討と標準化、振動台を含めた地震対応訓練の検討、地震後の接近不可能エリアの状態モニタリング方法の検討、天井や構造物等の定期的な清掃等が、教訓として紹介されました。

龍門プロジェクト完成へ本格的取組み、原子力廃止政策は取り下げ

 建設経験のセッションでは、龍門の建設状況が紹介されました。龍門は、日本以外で改良型BWR(ABWR)が建設されている最初の発電所です。1999年に着工しましたが、2000年に原子力反対の陳水扁総統(民進党)が誕生し、工事が一時中断しました。その後、工事は再開されましたが、1号機の運転開始時期は当初の2003年から2006年、さらに2009年へと変更されました。現在、台湾政府は従来の原子力廃止政策を放棄し、龍門プロジェクトの完成を目指しています。エネルギーの安定供給や地球環境問題への対応から、温室効果ガスを排出しない原子力発電を無視できなくなったことが背景にあるようです。また、龍門プロジェクトは、ターンキー方式(受注者が設計、施工、装備、試運転まで全てを一括して行い、直ちに使用することができる状態にして発注者に引き渡す方式)ではなく、台湾電力主導で設備毎に個別契約する方式を採用したために、設計、資材のスペック、機器供給等の面で苦労しているとのことでした。現在、建設予算を12億米ドル増額するとともに、総合的な調整・管理能力の強化にも取り組んでいます。

低レベル廃棄物処分場立地へ複数候補サイトでの住民投票実施へ

 放射性廃棄物のセッションでは台湾の低レベル廃棄物処分対策が紹介されました。蘭嶼島の低レベル廃棄物貯蔵所は、島民の反対で撤去しなければならないため、別の場所に最終処分場が必要となっています。2006年5月、「低レベル放射性廃棄物処分施設設置条例」が施行され、2007年3月に立地計画の発表、同12月までに潜在的なサイトの発表、2008年8月までに推奨候補サイトの発表、2008年10月頃の地域住民投票の実施、の計画でしたが、2008年1月の立法院(国会)議員選挙、同3月の総統選挙の影響を避けるため、日程を変更しています。推奨候補サイトは少なくとも2ヶ所を選定し、住民投票ではできるだけ多くの賛成票を得るようにしたいとのことでした。

安全文化醸成は1990年代初めから実施、良好事例も情報共有

 台湾電力からは、1990年代初めから、安全文化強化プログラムを実施していることが紹介されました。安全文化の尺度としてパフォーマンス指標とプロセス指標が導入され、高リスク作業分野については事前にリスク分析を実施して安全に配慮しているようです。情報共有については、本社及び4原子力発電所(運転中3、建設中1)の間で共有される仕組みが備わっており、事故・トラブル情報等だけでなく、良好事例についても共有しているとのことです。

 また、今回のセミナーでは、初めての試みとして、東京大学、名古屋大学、福井大学の学生6名によるポスター発表が行われました。短時間ですが、学生とセミナー参加者との討論も行われました。

学生とセミナー参加者との討論
 

総括質疑の議長を務める服部理事長(左)と台湾の黄団長


 セミナー最後の総括質疑では、若者の理科離れ・原子力離れと人材育成対策、原子炉主要機器の取替えなどについて意見交換が行われ、台湾側からは、原子力の建設・運転等で豊富な経験を有する日本との協力関係継続へ強い希望が表明されました。

 次回の日台セミナーは、来年度、台湾で開催する予定です。


(参考)台湾の原子力関連施設地図
拡大地図はこちら (pdf, 129KB)

以上

お問い合わせは、国際部(03-6812-7109)まで