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 新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原子力発電所への影響に関して、国際原子力機関(IAEA)調査団が8月5日に来日、主に耐震分野を視点に、現場視察、ヒアリングを実施した。調査活動は10日まで行われ、事実関係を把握、知見を抽出し、近くIAEAとしての報告書をまとめ、発表する予定。以下に、同報告書の発表予定に関するIAEAプレスリリースの仮訳を掲載する。

IAEAプレスリリース(2007年8月14日)
IAEA専門家チームは近く柏崎刈羽原子力発電所に関する調査報告を発表する予定(概要)

(日本原子力産業協会政策本部による仮訳)

 7月16日に強い地震に見舞われた柏崎刈羽原子力発電所は、安全に停止し被害は予想より少ないと、日本政府の要請によりIAEAが派遣した6名の国際的な原子力安全専門家チームが結論づけた。調査チームの報告書は数日以内に発表される。

 IAEAのエルバラダイ事務局長は本日、今回の日本政府からの同調査チームに対する協力や透明性ある対応を歓迎するとともに、同チームの調査結果と日本側の地震の影響等の分析結果は、ポジティブおよびネガティブなものとも重要な教訓であり、世界の原子力発電所に関係するものだ、と語った。

 同チームは、3日間にわたり発電所7基について物理的状況を調査するとともに、地震発生時からの計測機器の記録等を調べ、その結果、発電所の安全特性は地震の間も要求通りに機能したと結論付けた。同チームが発電所運転記録を調査・分析した結果、非常に微量の放射性物質が放出されたが公衆の健康や環境安全に対する制限値より十分に低い値であるとする日本政府の見解を裏付けることとなった。地震による被害は、原子炉にも原子炉の安全性に関係するシステムにも影響しない箇所にとどまっている。

 東京電力と日本政府による詳細な調査が実施中であり、原子炉容器、炉心、燃料の状況の詳細な調査等、重要な作業が今後行われるという。

 同チームは、地震による物理的な応力が今後長期的にはあるプラント機器の安全運転に影響を与える可能性もあるとしている。さらにプラント機器の工学的な解析を行うことが、今後、予定より早期に機器の取替えを行うかどうかの判断に重要な要素となるであろう。

 地震は発電所の耐震設計基準レベルをかなり超えていたが、他のほとんどの発電所同様、構造やシステム、機器の設計上で堅牢性を追加的に取り入れている(「設計安全裕度」)。同チームは、これらの余裕を持った耐震対策の結果、予想されたより被害が少なかったことにつながったのだろうとの見解を示した。しかし、詳細な設計要素について理解し今回の同発電所の地震時の挙動を把握するためには、さらに技術的な解析が不可欠であるとしている。

 同チームは、地震発生時にはすでに、2006年9月に原子力安全委員会から出された新しい耐震設計審査指針に基づいて、東京電力が地震危険性の再評価を実施していたことに留意した上で、今回の地震発生を受け、柏崎刈羽発電所サイトの地下にある活断層の存在の可能性を把握するために再評価作業が拡大されるであろうとしている。

 原子力発電所での安全関連事象の分析結果は、他の原子力発電所運転者や原子力安全規制機関に恒常的に連絡され、その教訓が他発電所の関連箇所に反映されている。今回の地震に関するフィードバックの機会として、9月のIAEA総会時の上級規制者会合において、日本側から今回の地震に関する報告が行われる。


 調査報告の発表予定に関するIAEAプレスリリースのオリジナル(英文)は、以下をご参照ください。(リンク)

IAEA Team to Report on Kashiwazaki-Kariwa Nuclear Power Plant Examination (英文)

以上

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