第52回IAEA通常総会が開幕


エルバラダイ事務局長「2030年までに原子力は2倍に」

【ウィーン9月29日 石井敬之・原産協会職員】 国際原子力機関(IAEA)は9月29日から、オーストリアの首都ウィーンで、145加盟国の参加を得て、第52回通常総会を開催した。あわせて、「IAEAの将来の役割」をテーマとした2日間の科学フォーラムも開催した。総会は10月4日まで開催される。

 エルバラダイ事務局長は「岐路に立つIAEA」と題して総括演説を行い(=写真)、原子力発電、核不拡散、保障措置、核セキュリティ、原子力安全などあらゆる分野で、IAEAが厳しい決断を迫られていると指摘。IAEAに、より強い権限、最新の技術力、関連情報へのアクセス権、十分な資金と人材を供給するよう、加盟各国に協力を要請した。

 原子力発電について事務局長は、「2030年までに原子力発電設備容量は現状の2倍に拡大するが、総発電電力量に占める原子力の割合は14%に留まる」との見通しに言及。この上で、あらゆる国は平等に原子力発電を利用する権利があるとし、「今後は原子力の導入を検討する途上国に対する支援の機会がますます増える」との考えを示した。

 また、こうした原子力発電利用の拡大にともない、使用済み燃料管理や放射性廃棄物処分への対応が重要な課題になるとし、地層処分は技術面で完成されているが、実際に地層処分場の操業が開始しない限り、世論の理解を得ることは難しいと指摘。「地層処分分野の先進国から途上国への情報提供にあたっては、IAEAが重要な役割を担う」と、両者の橋渡しとしてのIAEAの役割を強調した。

 日本からは松田岩夫参院議員(元内閣府特命担当大臣)が政府代表として出席。講演の中で、「世界的な原子力ルネサンスの潮流にあるが、3Sに基づく環境整備が肝要だ」と強調した。また松田代表は、IAEA次期事務局長への天野大使擁立を改めて強調し、広く支持を求めた。

IAEA総会で原産協会と原子力機構がブースを出展

 総会会場となったオーストリア・センターのロビーでは、IAEAの活動を紹介する展示に加えて、加盟各国がブースを出展。日本からは日本原子力研究開発機構と原産協会が出展した。

 原子力機構は、核不拡散、「もんじゅ」、J-PARCなどについて、ポスターや映像素材を使って紹介するなど、趣向を凝らしたブースを運営し、人気を集めた。

 原産協会は、柏崎刈羽原子力発電所の耐震策や健全性評価に関するパネルを展示。また世界中の原子力発電所で活躍する日本製鋼所の部材や、伝統的な日本刀の製造工程など、「日本のものづくり」をパネルや映像でアピールし、来場者の話題をさらった。特に日本刀の製造工程を紹介したビデオには、人だかりが出来るほどの盛況ぶり。初日だけでブース来場者は300名を超え大人気であった。

 原子力導入計画のある国の代表団からは、日本製鋼所の部材が世界中の原子力発電所を支えているとの事実を知り感銘を受けた様子で、矢継ぎ早の質問に、原産協会スタッフは対応に追われた。

 また途上国向けの小型炉(20万〜40万kW)やABWRに関する詳細な情報を求める来場者もいた。

以上

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