MOX輸送混乱なく終了、沿岸国の理解促進も着実に

 日本への海外からのMOX燃料輸送は5月末、大きな混乱もなく終了した。搬入先のひとつ、九州電力の玄海発電所3号機では、8月からの定期検査でMOX燃料を装荷の予定。四国電力の伊方発電所3号機では来年1月予定の定期検査で、また中部電力の浜岡発電所4号機では平成21年度予定の定期検査でそれぞれMOX燃料を装荷する計画だ。日本の原子燃料サイクル政策の柱のひとつである軽水炉でのプルトニウム利用(プルサーマル)は国内での利用開始を間近としている。
(参考リンク:日欧間の放射性物質輸送の概要

1.相手の立場にたった活動を展開

 今回の輸送は、喜望峰まわりで南西太平洋ルートをとった。比較的天候にも恵まれ、安全に輸送作業が済んだことは無論のこと、沿岸国から目立った懸念の声があがらなかったことも、8年ぶりとなるMOX燃料に国内外の理解醸成を進めてきた関係者を安堵させた。
(参考リンク:欧州から日本への主な輸送ルート
 沿岸国に対しては、エネルギー・環境問題への理解活動を目的に海外再処理委員会事務局が中心になって進めており、16か国・地域が加盟する太平洋島嶼国フォーラム(PIF)も対象のひとつ。

 2006年には、海外の専門誌にディーゼル研修の記事とりあげられた。

 PIFは大洋州諸国首脳の対話の場として周辺諸国が政策的に連携・協力し、発展してきた組織。当時、同フォーラム加盟の首脳たちの関心は、主として地球温暖化による海面上昇の影響で壊滅的な被害を受けることへの心配だった。さまざまな外交の場を通じて同フォーラムメンバーの懸念を聞き及んでいた日本政府や産業界関係者が中心になって協力事業を立ち上げた。日本への原子燃料等輸送のルートにかかることもあり、海外再処理委員会事務局が、沿岸国側のニーズを踏まえディーゼル発電のメンテナンス研修や各国政府中堅指導者を日本に招聘するプログラムを2000年以降、毎年実施している。

2.人と人とのつながりを大切に理解の輪ひろげる

 同事務局によると、参加者は2つの事業あわせて300名を超えた。実際の太陽光発電や新エネルギー、原子力関係の施設などの視察を通じて、「イメージ的な感覚から、エネルギーや環境問題を具体的に考えるきっかけづくりになっているのでは」と9回を数える活動に、手ごたえを感じており、参加者にはその後もエネルギーや環境に関する情報を定期的に発信して、人と人とのつながりを大切に、理解の輪を広げている。

各国政府の中堅指導者には
施設見学など通じ理解醸成

 このほか、同事務局では南アフリカ等に対しても安全輸送への理解を求める活動を実施してきており、こうした地道な取り組みが、今回の円滑なMOX燃料輸送の環境整備に一役かっていることは間違いないだろう。
 日本も原子燃料サイクル事業の本格的な展開を間近に核燃料等の国際間輸送が今後頻度を増すことが見込まれ、沿岸国・地域への理解活動を継続して進めていくことは、日本の原子力利用の“血脈”を支えるうえで大切な取り組みのひとつといえる。

(社)日本原子力産業協会