<コーディネータからのコメント>
システムの開発では、技術的には、新しい機能の開発と性能の向上が主眼となる。しかし、システムの事故は、必ずしも機能的に重要な役割を果たす要素によって引き起こされるわけではない。機能がマイナーであるから事故の影響もマイナーとなるというわけでもない。危機管理においてはシステムの機能・性能ではなく、その弱点に焦点をあてなければならない。
原子力発電事業は多くの組織が相互に緊密に関連した一つの巨大システムとして運営されている。このような状況においては特定の組織だけが高度の品質管理を行っても、品質管理の弱い組織があればそこが足を引っ張ることになる。安全・品質を確保するためには、何が弱いかという観点からシステムを分析することが必要である。
事故の原因は業種・業態を超えて共通するものが大半である。このワークショップでは、原子力産業に限定せず、広く「危機管理」の問題を取上げ、より安全な社会を築くための安全学に取組んでいきたい。
研究項目
◎原子力分野の総合的安全システムの構築
- ソフト型の安全確保、安全学の構築、体系化、安全教育
- リスク認知心理学、リスク・コミュニケーション
- 情報管理・提供、マスメディア対応
- 危機発生のメカニズム分析
- 事故・失敗情報の知識化、共有化
- モラルハザード、組織要因、内部告発
- 安全基準、法規制、自主規制
- 品質管理、保証、認定・認証制度、標準化、規格化(ISO、JIS)
- IT・ブロードバンド化に対するコンピュータシステム管理
- 防災対策、社会との接点
- 機械、化学、交通、自然災害、医療、食品、環境、国家安全保障、
テロ対策等の他分野の事例、原子力および上記他分野の海外事例
平成14年度「危機管理ワークショップ」活動概要報告
- 平成14年7月29日(月) 13:30〜17:00
- 1) 講 演 「原子力発電所の危機管理」
- 木村 逸郎氏(日本原子力学会副会長)
- 2) 講 演 「原子力産業の安全管理について」
- 久米 均 氏(中央大学教授)
- 平成14年8月30日(月) 13:30〜17:00
- 1) 講 演「総合リスクマネジメントシステムの構築」
- 野口 和彦氏(三菱総研)
- 2) 講 演「科学衛星計画からの教訓」
- 松尾 弘毅 氏(文科省宇宙科学研究所長)
- 平成14年9月25日(水) 13:00〜16:30
- 1) 講 演「危機管理広報とマスメディア対応」
- 田中 正博氏(田中危機管理所長)
- 2) 講 演「組織体を動かすもの」
- 天野 牧男氏(IHI・元副社長)
- 平成14年10月24日(木)〜25日(金) 見学会(1泊2日)
- 財務省 造幣局 <大阪市>
- 雪印乳業葛椏s工場 <京都府>
- 平成14年12月13日(金) 13:30〜17:00
- 1) 講 演「日本の原子力安全体制における危機管理への疑問」
- 住田 健二 氏(大阪大学名誉教授、元原子力安 全委員会委員長代理)
- 2) フリーディスカッション 15:20〜17:00
- :事故・不祥事の背景にある内部事情
- 平成15年1月24日(金) 13:30〜17:00
- 1) 講 演「新しい脅威と危機管理」
- 志方 俊之氏(帝京大学法学部教授)
- 2) 講 演「企業倫理と内部告発」
- 宮本 一子氏((社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会消費 生活研究所長)
- 平成15年2月21日(金)13:30〜17:00
- 1) 講 演「ブロードバンド時代のリスクマネジメント」
- 林 志行氏(轄総ロ戦略デザイン研究所代表)
- 2) 講 演「原子力技術者倫理と原子力学会の取り組み」
- 西原 英晃氏(京都大学名誉教授)
- 平成15年3月11日(火) 見学会(日帰り・東京)