【第48回原産年次大会】今井会長、ベースロード電源として一定規模の原子力利用を
第48回原産年次大会が4月13日、東京国際フォーラム(東京・有楽町)で開幕した。今回大会は、「なぜ原子力か?」を基調テーマに、14日まで、31か国・地域、4国際機関から約900名が参集し、国内外における原子力の果たす役割や、福島の復興に向けた課題について話し合われる。
開会セッションでは、まず、原産協会の今井敬会長が挨拶に立ち、国内の原子力発電所が約2年間にわたり全基停止したことによる国富の流出、CO2排出量の増大が日本の経済に与えている影響を懸念した上で、安全が確認された原子力発電所の早急な再稼働により、火力依存度を下げる必要を強調したほか、日本の輸入する石油の8割が政情不安なホルムズ海峡を航路としていることにも触れ、「脆弱性を持つ化石燃料に依存していることに危機感がある」とも述べた。さらに、現在進められている将来のエネルギー需給見通しや、COP21に向けたCO2削減目標の議論に関連し、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入は重要としながらも、脱原子力のリスクも考慮した上で大局的視点から検討を行う必要を指摘し、「ベースロード電源として一定規模の原子力利用を明確に位置付けて欲しい」と述べた。また、「世界に目を向けると原子力は拡大基調にある」として、福島第一原子力発電所事故の経験も踏まえ、世界の原子力導入への貢献のため、日本の原子力技術・人材を維持・向上していく必要を訴えかけた。
続いて挨拶に立った山際大志郎・経済産業副大臣は、福島第一の廃炉・汚染水問題に関して、2014年の4号機使用済み燃料プールから燃料取り出し完了、多核種除去設備の新増設など、着実に進展しているとしながらも、未だ不自由な生活を余儀なくされている被災者の現状に鑑み、「目下最大の課題」と認識し、政府として全力で取り組んでいく姿勢を示した。また、電力システム改革については、原子力発電がキチンとした役割を果たしていくよう必要な政策措置を図っていくこと、現在進められているエネルギーミックスの議論に関しては、「3E+S」(安定供給、コスト低減、環境負荷低減、安全性)を基本的視点に、バランスのとれたエネルギー需給を実現していく考えを述べるなどした。
特別講演では、天野之弥・国際原子力機関(IAEA)事務局長が登壇し、世界における原子力発電開発の動向について、「過去の見通しよりは鈍化しているものの、今後数十年間は増加する見込み」と述べ、さらに、近年経済成長の著しいアジア諸国での原子力発電建設ラッシュや、他の途上国でも原子力導入の動きがあることに触れながら、多くの国々でエネルギー需要が増大しつつある中で、原子力の信頼できるベース電源としての役割を強調した。また、天野氏は、「安全は将来の原子力のカギを握っている」とも述べ、先般の福島第一原子力発電所事故について、「原発事故は先進工業国でも起こりうることが示された」と警鐘を鳴らし、現在IAEAで、200人近い専門家を投入し、今後の世界の原子力安全強化に貢献するものとして、福島第一原子力発電所事故に関する報告書を取りまとめつつあることを披露した。この他、発電以外でも、原子力科学技術がエボラ出血熱対策など、特に途上国の生活改善などに貢献している事例を紹介し、「平和と開発のための原子力」がIAEAの使命となっていることを強調した。
続いて登壇したウィリアム・マグウッド・OECD/NEA事務局長は、同機関が取りまとめた「福島事故後の教訓」について紹介し、福島第一原子力発電所事故が、単なる工学的な問題に留まらず、過酷事故への備えや組織のあり方など、人間的側面も無視できないことを指摘した。福島第一の廃炉については、今後も数十年にわたり様々な課題が生じる可能性を懸念し、処理水を貯留するタンクが増え続ける現状などに対し、現実的な方策を考えていく必要を訴えた。また、福島の高校生との交流経験についても触れ、「今の苦境から立ち直ろうとする意志を感じた」などとして、被災地の早期復旧への期待を述べた。
この他、デニス・ブレア氏(笹川平和財団米国会長)が国際原子力市場における日米の将来について、山地憲治氏(地球環境産業技術研究機構理事)が現在政府審議会で進められている温室効果ガス排出量削減目標について講演を行った。