原子力安全推進協会報告会で電力社長らが討論
原子力安全推進協会(JANSI)は4月23日、東京・千代田区のイイノホールで報告会を開催し、2014年度の活動成果を披露するとともに、電力会社社長、有識者らの登壇の下、原子力産業界の果たすべき役割や危機対応をテーマに討論が行われた。
報告会では、原子力規制委員会の田中俊一委員長が基調講演を行い、2013年7月の新規規制基準施行以来、電力会社からの申請を受け、これまで計200回以上の適合性審査会合を開き、規制側と事業者ともに相当なロードとなったが、双方の共通理解が進んできたなどと一定の評価を述べた。また、昨秋より進めている電気事業者との意見交換についても触れ、審査手続きとは別に、原子力安全の向上を追求する貴重な機会となったとした上で、各社一通り終えた後、より充実した議論がなされるよう、JANSIのイニシアチブに期待をかけるなどとした。
「原子力産業界が果たすべきこと」をテーマに行われたパネル討論(=写真)では、日本科学技術ジャーナリスト会議会長の小出重幸氏が、「社会と科学技術をどう結び付けるか」との視点から、福島第一原子力発電所事故がもたらした地域コミュニティの崩壊、風評被害などをあげた上で、科学技術に対する信頼失墜に至った最大の要因として、コミュニケーションの問題を指摘した。
これに対し、四国電力の千葉昭社長は、同社が地元に対し積極的に情報公開を行う「伊方方式」の活動実績について触れながら、伊方発電所運転開始以来、自身が「社会の目線に立って考える」ミッションを担ってきたことを披露した。また、中国電力の苅田知英社長は、2010年に発覚した島根原子力発電所の点検不備問題への対応などを振り返り、技術者たちと社会との間で安全に対する考え方に隔たりがあるとして、「自分の言葉でわかってもらう努力」の重要性を述べた。九州電力の瓜生道明社長は、先般の川内原子力発電所再稼働差止め仮処分に対する勝訴に関連し、「われわれは何も変わることはない」とのメッセージを社内に発信したことを述べ、引き続き「マイプラント意識」を持って地元との対話に努めていく考えを強調した。
この他、「危機対応能力の向上」をテーマとするパネル討論では、JR東海副社長の吉川直利氏が登壇し、東日本大震災を教訓とした東海道新幹線の地震・津波対策について紹介し、原子力産業界に示唆を与えるなどした。また、JANSI代表の松浦祥次郎氏は、自身の登山経験を踏まえ、山岳遭難時の対応と対比しながら、原子力の緊急事態発生時に備えた訓練の必要を訴えかけた。