基本的考え方ヒア 中西産総研名誉フェロー「一定のリスク受容必要と述べるべき」
中西準子産業技術総合研究所名誉フェローは4月21日の原子力委員会で、原子力利用の「基本的考え方」について、福島での放射線リスク評価と管理を中心に説明した。
福島第一原子力発電所事故後、健康リスク軽減対策として、避難、食品・飲料水規制、除染、環境計測と県民健康管理調査、リスク管理・リスクコミュニケーションなどが行われたことについて説明し、避難や食料規制によって被ばくは大幅に軽減されたといえるが、未解決の避難者帰還や厳しすぎる規制による不経済性などの問題も残していることを指摘した。また、除染については、目標値が二転三転した上に数値の根拠について説明がなく、空間線量率から外部被ばく量を求める計算式で2~3倍高い値になってしまったという問題があったとし、さらに帰還後の計画や除染で生じる廃棄物についての配慮がなかったことで費用が膨大になってしまうなど、「誰が見ても失敗であることは明白」と憂慮した。
リスク評価に関しては、直線しきい値なし(LNT)モデルの仮定の捉え方で政策が変わってくることに留意し、一定のリスクを受容しなければならないことを正々堂々と述べることが大事だとした。また、放射線被ばく線量とリスクとの関係について、特に線量率効果に重点をおき、目的を明確にして研究を進めるべきだとした。また事故後のリスクコミュニケーションにおいては通常のリスクコミュニケーションと大きく異なるため、対応を考える部署や研究体制を設けて、補償などとの関係も考慮し、どのリスクレベルで管理することが妥当かを考えていくことが課題だとした。
除染目標値に正解はないが、解を見つけるべきだとして、15年間の集落の平均的被ばく量が50mSvを超えないことなどを条件に、目標値を5mSv/年とする私案を提示した。