外務省有識者懇談会、「科学技術顧問」設置を提言
科学技術外交のあり方を検討する外務省の有識者懇談会は5月8日、報告書を取りまとめ岸田文雄外相に提出した。科学技術を貴重な外交資源ととらえ、今後の国際協力の進め方について昨夏から意見交換を行ってきたもので、外交政策の立案・実施に関する科学的知見の活用強化に向け、「外務大臣科学技術顧問」の試行的設置などを提言している。
報告書ではまず、科学技術外交を「日本外交における重要な柱の一つ」に据えることを期待した上で、その戦略的アプローチとして、積極的平和外交を掲げ「最先端の原子力技術を活用しつつ、世界で唯一の戦争被爆国として、これまで以上に『核兵器のない世界』の実現に向けて努力をしていく」ほか、経済外交の強化として、新興国との協力によりイノベーションを進め、双方の経済成長にもつなげることなどをうたっている。
また、科学技術外交の効果的推進に向け、「外務大臣科学技術顧問」を試行的に設置し、国内外の科学者ネットワークに精通した各分野の専門家によるアドバイザリーグループや、関係府省の事務レベルの定期的会合を設けるなど、支援体制を整備することや、人材育成の観点から、中堅・若手研究者が外交政策立案へ参画する仕組みの構築も提言している。
日本学術会議が昨秋、原子力災害発生後の信頼喪失を踏まえて公表した提言では、政府に専門的な情報・知見を提供する科学的助言制度の検討について言及している。