岸田外相「広島・長崎で自ら被爆の実相見て」NPT会議で演説
5年ごとに開催される「核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議」が4月27日、米国ニューヨークの国連本部で開幕した。
ヒロシマ・ナガサキの惨禍から70年の節目となる年に開かれる今回のNPT運用検討会議には、広島県出身の岸田文雄外相が初日の一般討論演説に登壇し、前回NPT運用検討会議で最終文書に盛り込まれた「核兵器のない世界」に向けた取組への前進を訴えかけた。世界で唯一の原爆投下を受けた国として、5月22日までの会期では、主要委員会での討論の他、サイドイベントなどを通じわが国の手腕が期待される。
岸田外相は一般討論演説で、70年前に故郷の広島で13万人以上の命が一発の原子爆弾によって奪われたことに触れ、被爆地の思いを胸に「核兵器のない世界」に向けた取組をこの会議で前進させる決意を示した。日本は唯一の核兵器被爆国として、NPT体制の更なる強化を重視しており、核兵器国と非核兵器国の双方に対し、共同行動をとること、特にすべての核兵器国がNPT第6条に基づく特別な責任を誠実に果たすことを求めた。
今回の会議で重視することとして、(1)核兵器国が数値情報を伴う具体的かつ定期的な報告を行うなど、核戦力の透明性の確保、(2)あらゆる種類の核兵器の更なる削減や、核兵器削減交渉などの将来的な多国間化、(3)核兵器の非人道的影響の認識共有と「核兵器のない世界」に向けた結束、(4)世界の政治指導者および若者の広島・長崎訪問、(5)北朝鮮やイランなど地域の核拡散問題の解決――を挙げた。特に2015年には、約2万4千人の世界の若者を7月末から約1週間被爆地に迎える広島・長崎ピースプログラム、8月末に広島で開催される国連軍縮会議や包括的核実験禁止条約(CTBT)賢人会合、11月に長崎で開催されるパグウォッシュ会議世界大会など、被爆地訪問の機会について挙げたほか、日本が2016年に主要先進国首脳会議の議長国としてサミットおよび関係閣僚会合を開催することにも触れ、各国政治指導者が被爆地に足を延ばすことを望むとした。
また、より多くの人が医療、農業、水資源を含むより幅広い分野で安全に原子力技術の恩恵が受けられるよう、日本は平和利用イニシアティブ(PUI)に対して5年間で総額2500万ドルの拠出を行うほか、福島第一原発事故を踏まえて国際的な原子力安全の強化に貢献していくことを述べた。
岸田外相は同日、天野之弥国際原子力機関(IAEA)事務局長とも会談を行い、イラン核問題などでの日本とIAEAの連携強化を確認するとともに、日本のPUI拠出について、天野事務局長から謝意を受けた。
さらに、岸田外相は、同日開催された「ヒロシマ・ナガサキアピール集会」でも挨拶し、被爆地出身の外務大臣として、NPT運用検討会議で充実した成果をあげ、「核兵器のない世界」に向けた取組を一歩でも二歩でも前進させたいとの決意を示した。そして、唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」に向けて国際社会の取組を主導することと核兵器使用の惨禍を世代と国境を越えて伝えていくことが日本の責務だと語った。
年々被爆者の高齢化が進むところ、被爆の実相を若い世代へ継承していくことの重要性についても触れ、今回のNPT運用検討会議に当たり、自身が大臣就任直後に創設した「ユース非核特使」制度により24名の若者たちが訪米し、核兵器廃絶に向けた思いを発信していくことに期待をかけた。