長期エネ需給見通し小委 S+3Eぎりぎりのバランスで
総合資源エネルギー調査会の小委員会が5月26日開催され、2030年度の長期エネルギー需給見通しのたたき台について意見交換を行った。同たたき台は、前回示された骨子についての議論を踏まえ、坂根正弘委員長(小松製作所相談役)預かりで取りまとめたもの。2030年度の電源別比率については骨子に示されていたとおり、再生可能エネルギー(地熱、バイオマス、風力、太陽光、水力)22~24%、原子力20~22%、LNG27%程度、石炭26%程度、石油3%程度で、ベースロード電源(水力、石炭火力、原子力など)比率は56%程度とした。計算に使用したエクセルシートは公開される。原子力についての項目では、「『円滑な廃炉や核燃料サイクル事業の安定的・効率的な実施のための』原子力発電の事業環境整備を図る」と説明が加えられた。
橘川武郎・東京理科大学イノベーション研究科教授、河野康子・全国消費者団体連絡会事務局長、高村ゆかり・名古屋大学大学院環境学研究科教授の3委員は連名で、原子力発電率を下げ再生エネルギー比率を上げることなどを求める意見書を提出した。
坂根委員長は、原子力発電所が1基も稼働していない中でエネルギーミックスを決めていかなければならない空しさに触れた上で、今回の電源別比率が「S(安全)+3E(供給安定性、経済性、環境保全)」を成り立たせつつ、可能な限り原子力発電依存度を下げるという政策課題に応えるぎりぎりの範囲でバランスを取りながら、これまで委員会で徹底的に議論してきた結果であることを再確認した。また、少なくとも3年ごとに行われるエネルギー基本計画の検討に合わせて、必要に応じて見直すことも明記していることも強調した。
また、「再生エネルギー内でのベストミックス制度を考えるべき」(山名元・原子力損害賠償・廃炉等支援機構副理事長/京都大学名誉教授)、「事業者がCCS(二酸化炭素の回収・貯留)に取り組むには政策として進める必要がある」(山地憲治・地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)などの意見も出され、もう一度議論の場が必要として、次回会合で取りまとめた後に、パブリックコメントを募集するとした。