[原子力産業新聞] 1999年11月11日 第2012号 <1面>

周辺環境線量評価
基礎資料を作成 臨界事故で科技庁 健康影響懸念なし

科学技術庁の事故調査対策本部は4日、JCO臨界事故現場からの放射性物質試料の分析を踏まえた周辺環境への放射線線量評価をまとめた。

それによると、原研による沈殿槽内の試料分析から、臨界反応によリ生じた核分裂生成物(モリブデン99、ルテニウム103、ジルコニウム95、ネオジウム147)について、ウラン1グラム当たりの核分裂数は1.44×1014〜1.55×1014個/グラム・U、沈殿槽に実際に投入されたウラン量は16.6キログラムとし、これらから臨界反応による総核分裂数は2.5×1018個と推定。また事故の初期の臨界反応の変化が大きい部分(バースト部、今回は約25分間)の核分裂数は1.2×1018個、その後なだらかに長時間にわたって臨界反応が続いた部分(プラトー部)のそれは1.3×1018個と見積もった。

一方(周辺環境への影響評価では、中性子線とガンマ線の線量評価を時間・場所ごとに「理論的に十分安全側にみた」線量の基礎資料を作成し、各人の事故時の行動に応じて個人の線量を「安全側に評価」した。それによると、仮にある人がある距離に事故発生時から示された時刻まで屋外に滞在した場合の積算線量(実効線量当量)は、10月1日午前6時15分までに80メートルの距離で160ミリシーベルト、200メートルで13ミリシーベルト、350メートルで2.1ミリシーベルト、1キロでは0.011ミリシーベルトとなった。【5面に基礎資料掲載】

また中性子線の放射化作用により体内に生成されたナトリウム24をホールボディ・カウンタで計測した結果に基づき60名の線量評価を行い、現場から約80メートル離れた所で作業(事故発生時から当日午後4時頃まで)をしていた7人の測定結果は中性子線とガンマ線の合計で約6〜15ミリシーベルト/人の範囲だった。この7人の線量は、理論的な基礎資料から見積もると30〜100ミリシーベルト程度となり、実際の測定値より数倍多くなっている。

同本部では、これらの理論的評価は実際に受けた線量よリ高めに評価されているとしている。また一般的には実効線量で約200ミリシーベルト以上の線量でのみガンの確率的影響が現れるとされていることから、「今回は直ちにガンの増加などの健康影響を懸念する必要はない」としている。しかし、50ミリシーベルト以上の線量でも40年以上の後には、ごくわずかながらガンの増加が認められたという報告もあることから、念のため長期的な健康影響について「技術的かつ詳細な検討を行うことが必要」と述べている。


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