[原子力産業新聞] 1999年11月18日 第2013号 <2面>

[核融合会議分科会] 作成中の報告書案提示

核融合炉の経済性、総合コストで競合できる可能性

原子力委・核融合会議(座長・井上信幸京都大学エネルギー理工学研究所長)は4日、同会議開発戦略検討分科会から、昨年6月からの審議経緯についての報告を受けた。

同分科会は、核融合エネ実現に向けての現状を把握し、今後の研究開発の戦略シナリオを明瞭に示すことを目的に、1年程度かけて検討するため設置されたもので、審議内容についての報告書を今月中にもまとめることにしている。

同日示された作成途中の報告書案によると、核融合発電が実用化される将来像を提示するため、電気出力約180万キロワットのトカマク型炉を基に、重水素、リチウム、ベリリウム、ニオブ、バナジウムといった燃・材料について、可採年数、価格などの評価の実施のほか、CO排出と大気保安性、放射性毒素・廃棄物と安全・環境適合性、プラント特性、経済性についても他のエネ源と比した利点・課題について定量的な分析を行っている。

その中の経済性に関しては、核融合炉の実用化が期待される21世紀後半のエネ事情や世界情勢は、現在での十分な予測は不可能とみているものの、資源量とコスト競合性の観点から、超長期的には核分裂炉、炭酸ガス回収付き天然ガスまたは石炭火力が競争相手に考えられるとの見通しを立てている。その上で、核融合炉は安全性等に優れ、廃炉費用、近郊立地による送電費用の低減の可能性から、軽水炉や高速増殖炉とも総合的コストで競合できる可能性があることを示している。

報告書案はまた、将来の核融合エネ実現へ向けた工学技術や商用段階での運転・保守などに関する課題、ITER計画で拡がる効果にも触れており、今後内容が肉付けされ核融合会議に報告される運びとなっている。

研究の発展目指し分科会設置

同会議ではまた、学術審議会の特定研究領域推進分科会原子力部会が4月にまとめた報告書に基づき、今後の核融合研究の一層の発展のため「大学等と研究開発機関がそれぞれの役割を十分踏まえつつ、より密接かつ効菓的な連携・協力体制を構築する必要がある」との認識から、「核融合研究関係機関間の連携・協力に関する協議会」を設置することが報告された。

学術審議会・部会の報告書は、今後の原子力分野の研究に際しては大学等と研究関発機関が大型施設の共同利用、共同研究、研究成果の相互利用、研究者の流動性向上により連携・協力を強め、より有機的かつ有効な研究体制を作るよう求めている。

協議会の設置はこれを受け、これまでのプラズマ物理や炉工学での進展を踏まえ、炉材料の研究や安全研究の進め方を含めた連携・協力の在り方について協議するため、大学、核融合科学研究所、日本原子力研究所等の研究者を中心とした、直接的な協議の場を設けることとしたもの。

この協議会は、藤原正巳核融合研所長を座長とする13名からなり、必要に応じてメンバーの追加、文部省、科学技術庁などオブザーバーの参加、作業部会の設置がなされる。協議事項は、1.ブランケットなどの炉工学分野の共同研究の在り方、2.炉心プラズマ物理分野の共同研究の在り方、3.研究ネットワークの構築と推進、4.国際協力を推進するための体制、5.連携・協力を進めるための制度等の整備、など。核融合研が原研の協力を得て会運営の庶務にあたり、問題点の洗い出しから始め、具体的事項についての意見交換等を行い、今年度中を目処として検討をとりまとめ、核融合会議と学術審議会に、それぞれ報告する予定。


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