[原子力産業新聞] 1999年11月18日 第2013号 <3面>

米エネ省、国内のエネルギー見通し改定

「原子力設備は低下」米原子力協会、実績とクリーンさで反論

米国エネルギー省(DOE)のエネルギー情報局(EIA)は9日、毎年発行している国内エネルギー見通しの2000年版を発表し、「CO2の排出は2020年まで増え続ける一方、小売り電力価格の低下に伴い原子力による電力供給量も低下していく」と予測していることを明らかにした。

この報告書によると、米国の温室効果ガス排出量は2010年には90年の13億4500万トンから33%増加。2020年には47%増加し、数字は19億7900万トンに拡大するとしている。ただし、これらの予測は現行の法令や規制条項が据え置かれ、排出量を抑えることを目的とした新たな政策やプログラムが実施されないことを前提としたもの。同報告書はまた、2020年までを通じてエネルギー需要の増加は主に化石燃料で賄われ、再生可能エネルギーによる発電量がゆっくりと増加傾向を辿るのに対して、原子力は減少していくとの予測結果を示した。

電力の平均小売り価格については98年の6.7セント/キロワット時が2020年には5.8セント/キロワット時に低下すると予測。これは電力産業界における競争の激化と、炭鉱で生産効率が改善されたことによる石炭価格の下落、西部地方で採れる割安な石炭の生産量増加などが主な原因になると指摘している。

こうした背景からEIAは、リストラの進んだ電力産業界では効率性が高く資本集約度の低い天然ガスが好まれ、石炭の発電シェアは2020年にはやや減少すると予想されるものの、石炭火力が継続して主力電力源としての地位を確保するだろうと判断している。

原子力についてEIAは、競争力を失った既存炉のいくつかが閉鎖され、2020年までに設備容量が41%低下するとの判断を下している。しかし、火力発電所の更新に要する資本費を再評価した結果、廃止される原子炉の基数は過去に予想したよりも少なくなるとの見方を示した。

今回のEIA報告に対しては米原子力エネルギー協会(NEI)が直ちに反論の声明を発表している。M・ファーテル副理事長は、「この予測は原子力発電所の記録的な効率性と安全性、原子力発電とクリーンな大気の間にある分かちがたい関係を無視している」と主張。同氏はEIAが昨年発行した99年版予測のなかで、「原子力発電所は閉鎖ラッシュに見舞われる」などの誤った判断を下していたのを始め、その後20年間の予測についても同様に不備のあった点をEIA自らが認めていると指摘した。

ファーテル副理事長はまた、原子力発電所の運転効率の指標である設備利用率が今年上半期は前年同期の84%を上回る87%に達し、発電電力量も前年同期比9.5%増を記録。発電コストも90年以降低下傾向にあり、97年にはキロワット時あたり2.27セントにまで下がったことを強調している。

同氏はさらに、「原子力は米国で最大のクリーン電源」と断言。「電力会社も環境保全面での原子力の価値を認めて次々と運転認可の更新を検討している。すべての事実を見据えた時、今日だけでなく将来においても原子力はクリーンで競争力のある経済的な電源として存在し続けるだろう」と締めくくった。


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