[原子力産業新聞] 1999年11月18日 第2013号 <3面>

[欧州原子力学会] COP5終了後に声明

「CDMに原子力を」

ドイツのボンで10月25日から開かれていた国連気候変動枠組み条約第5回締約国会議(COP5)は主要な問題についての最終決定を来年11月の次回会合に持ち越して5日に閉幕。これにともない、欧州原子力学会の青年世代グルーブ(ENS/YG)は原子力産業界としての声明を発表し、温室効果対策の中で原子力が果たす潜在的な役割を訴えた。

ボン会議では温室効果現象を軽減するために原子力をクリーン開発メカニズム(CDM)に含めるか否かについて話し合われたが、結局踏み込んだ結論には達せず、温室効果ガス排出権を取り引きする柔軟性のあるメカニズムの範囲や明確な定義、途上国の参加などの重要案件についても、来年11月13日から24日にオランダのハーグで開くCOP6で最終的に決定することで参加各国が合意したに留まっている。

ENS/YGはまず、COP5のCDMに係わる大小多くの会合で原子力が選択の対象外として扱われたことに遺憾の意を表明。経済や環境保全についての議論が、しばしば事実や数値に関するオープンな討論を抜きにしたイデオロギーに流されがちであったと指摘した。

同グループはまた、世界が主要なエネルギーの8割以上を化石燃料に依存している現実に触れ、新たにクリーンで安全なエネルギー源の研究とともに、原子力も含めて既存のエネルギー源をほどよくバランスさせたエネルギー・ミックスが望まれると主張。原子力については特に、97年の京都議定書に明記されたCDMや共同実施(JI)など柔軟性のある排出権取り引きメカニズムの中に含めるべきだとの見解を示している。

さらにCDMプロジェクトを進めるにあたり、途上国に太陽光発電パネルを設置するのと原子力発電所を建設するのとでは大きな差が生じるとの認識を展開。ただし、こうした国々での原子力導入は、平和や安全意識についての文化が育っている国にのみ可能だとも考えていることを明らかにした。【5面に関連記事】


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