[原子力産業新聞] 1999年11月18日 第2013号 <5面>

原研、成果報告会「低減速スペクトル炉」概念示す

将来型軽水炉、ウラン・プル転換比1以上に

日本原子力研究所(松浦祥次郎理事長)は11日、都内で、「21世紀を支える原子力エネルギーの研究」と題して、軽水炉高麗化研究についての研究成果報告会を開催した。報告会では、JCOの臨界事故についての特別発表と質疑応答を追加。会場からは、核物質を扱う事業所でなぜ基本的な臨界管理が行われていなかったのかなどの質問が相次ぎ、同事故に対する原子力関係者の関心の高さが伺われた。

早田邦久東海研副所長は、事故の通報を受けてからの対応などを紹介。同氏は、事故が怒った沈殿槽の臨界状態を収束するにあたって、同研究所の定常臨界実験装置であるSTACYでの実験が役立ったと述べた。それによると、臨界液位とウラン濃度の関係から、沈殿槽を取り囲んでいる冷却ジャケットの水が反射体の役割をしていると判断、臨界状態を脱するために水を抜き取ることになったと経緯を報告した。また、水披きを完了した時点で放射線モニターの数値が大きく低下、さらにホウ酸を注入した時点で放射線レベルが一定の低い値になったことをスライドの図を用いて説明した。

高燃焼度燃料の安全評価について報告した石島清見原子炉安全工学部次長は、現在の燃焼度程度では通常の軽水炉燃料もMOX燃料も違いはないが、燃焼度がさらに上がってくると挙動が違ってくると指摘、被覆材の劣化や核分裂性ガスの蓄積・放出、新被覆管の採用などに留意する必要があると語った。

ウランとプルトニウムを有効利用するための将来型軽水炉について報告した落合政昭エネルギーシステム研究部次長は、ウラン238からプルトニウム239への転換比を高くすることができる低減速スペクトル炉では、現在の軽水炉でのMOX利用(プルサーマル)と比べて、燃焼に伴うプルトニウムの品位の劣化がないため、多重リサイクルが可能になると説明した。同氏によると、低減速スペクトル炉では、"1"を超える転換比が可能になるという。また、長期サイクル運転が可能になるため、設備利用率の向上だけでなく、使用済み燃料の発生量低減にも役立つとの見解を示した。


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