[原子力産業新聞] 1999年11月25日 第2014号 <4面>

[日本子孫基金] 「原発」テーマに討論会

森、槌田、中村氏ら議論

日本子孫基金の主催による「どうする?日本の原発」をテーマとした公開討論会が20日、東京都千代田区の食糧会館で開かれ、原発事故や経済性、代替エネルギーなどについて議論した。討論会には、森一久原産会議副会長、中村正雄原子力委員会専門委員、槌田敦名城大教授、小若順一日本子孫基金事務局長(兼・司会)がパネラーとして出席。テーマ毎に槌田、森、中村氏が問題提起を行い討論した。

まず、槌田氏がJCO事故について、今回の事故は特殊なものと論じ、原発の場合の参考にはならないとする一方、放射能影響は気象条件で様相が変化することから、原産が科技庁の委託で行った大型原子炉事故の影響調査の試算を参考として防災対策を講じるべきだとし、「これは公開されていないので誰も知らない」と述べた。

これに対して、森氏はJCO臨界事故に至った経緯等を説明。また原産が行った調査は、これから原子力にとりくむために色々な最悪の事態を考えて試算した机上の推定であり、原子力損害賠償制度など、しっかりした対策を講じて取り組むための一つの拠り所を得るために調査したもので、これは当時の国会でも議論されており、「秘密でもなんでもない」と反論した。

原子力の経済性のテーマでは森氏から発言。まず「コストが安いから原子力発電が良いとは思っていない」との考えを示し、原子力発電は燃料費がコストの2割程度で発電コストの変動は小さいこと、現在の日本の原発での発電量は石油に換算すると7,000〜8,000万キロリットルに相当するとし、石油価格の上昇を防いでいること、さらにCO削減にも貢献しており、「こうした原子力の役割を考えながら、安全確保を大前提にして、相応の電源構成を担いながら原子力発電をやっていくことが良い方法だ」と強調した。槌田氏は、原発のコストは12円/キロワット時であり、他より割高だと述べ、また原発事故は経済性の悪さが原因だと主張した。中村氏は無資源国である日本ではエネルギー源の多様性が重要だと指摘し、燃料を燃焼し続けなければならない火力発電や水力とともに原子力発電は日本にとって大切なエネルギーだと論じた。

代替エネルギーについては、槌田氏が化石燃料の可採年数が増えている状況から「もはやエネルギー問題は存在しない」と述べ、今後の日本の発電の主流は天然ガスや日本周辺に多く存在するといわれているメタンハイドロイドだと主張。例えばサハリンからパイプラインで敷設するなど供給を図っていくべきだとした。これに対して中村氏は、石油等は100年たっても在在しようが、価格は上昇するとの見通しを示し、天然ガスの供給には政治的な問題もあり、またメタンハイドロイドの採掘には技術的困難性も多いこと等を指摘した。


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